「アイデアのちから」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「アイデアのちから」(チップ・ハース、ダン・ハース)
 
 
原題は『Made to Stick』。Google翻訳では“くっつくように作られた”と訳された。
なお副題は『Why Some Ideas Survive and Others Die』(なぜ一部のアイデアは生き残り、他のアイデアは消滅するのか)。

「アイデアのちから」の邦題は、まったくと言っていいほど内容を反映していない(無理くり解釈すればあっていなくもないが・・・)。本書中に頻出する“記憶に焼きつく”というワードがしっくりくるので、「記憶に焼きつくアイデア」とか、「記憶に焼きつくメッセージの伝え方」とかのほうがよいのではないか。


さて、記憶に焼きつかせる6つの原則は「単純明快さ」「意外性」「具体性」「信頼性」「感情」「物語」とのこと。

重要度の内訳を%で示すと、「単純明快さ」が50%で、残り5つが10%づつくらいか、というのが読後の感想。もっとも、何を伝えるのか、伝える内容によってこの数字は変わるだろう。




以下、備忘




■単純明快である

もっとも重要なものを見きわめる

「司令官の意図」
“われわれが行わなければならない唯一にして最も重要なミッションは    である”(北極星が5つあったら困るように、最重要目標が5つもあっては困る)

「設計士が完璧さを達成したと確信するのは、それ以上付け加えるものがなくなったときではなく、それ以上取り去るものがなくなったときだ」(アントワーヌ・ド・サンテグジュペリ)
 
最も大切な見識を際立たせるために、多くの素晴らしい見識を切り捨てる。

サウスウエスト航空の核となる部分は「当社は格安航空会社である」
調査の結果、チキンシーザーサラダを出せば乗客が喜ぶということがわかった。しかし「無敵の格安航空会社となるのに役に立たないなら、チキンサラダなんて出さない」

新聞記者は記事の冒頭に最重要情報をもってくる。
「記事を書く時間が2時間あれば、最初の1時間45分をかけてよいリードを書くのが最適な時間配分」(ドン・ワイクリフ)
「長い時間、記事に取り組むほど方向性を見失うおそれが高まる。どんな細部も捨て難くなり、何の記事かわからなくなってしまう」(エド・クレイ)

「経済なんだよ、馬鹿(It's the economy,stupid)」
1992年大統領選でクリントン陣営の参謀が選挙スタッフ(およびクリントン)に向けた言葉。大事なことを見失うなという戒め。
「メッセージには優先順位が必要。三つ言うのは、何も言わないのに等しい」



■意外性がある

関心をつかむ:驚き

予想を裏切る、相手の裏をかく
 
「ポップコーン1袋が1日の脂っこい食事と同じくらい身体に悪い!」

関心をつなぎとめる:興味

ハリウッドの脚本
「好奇心とは、疑問を解消し、曖昧な状況をはっきりさせようとする知的欲求。ストーリーは、この普遍的欲求を逆手にとり、疑問を提示して状況を曖昧なままにする」
「次はいったい何が起こるんだろう」「この先、どうなるんだろう」。私たちは、この疑問への答えを求める。その欲求が関心を持続させる。おかげで、つまらない映画を見続けてしまう。

好奇心の「隙間理論」
自分の知識に隙間を感じたとき、好奇心が生じる。
何かを知りたいのに知らない。その苦痛を取り除くためには、知識の隙間を埋めなければならない。
ポケモン・カードを集める子どもを引きつけるのも隙間理論。「足りないのはどのキャラクターかな?」。

「製氷機に細菌が入っていた地元のレストランはどこ?」(TV番組のCM)

「ポケットに入るラジオ」(ソニー)



■具体的である

理解と記憶を促す

ことわざの多くは抽象的な真実を具体的な言葉に置き換えたもの
ex:「二兎を追う者は一兎をも得ず」

「白い物を挙げて」vs「冷蔵庫の中の白い物を挙げて」。後者の方が限定的なのに実験では同じくらいの個数が挙がる。



■信頼性がある

信じてもらう

権威者の言葉

検証可能な信頼性



■感情に訴える

心にかけてもらう

自己利益に訴える

アイデンティティに訴える

「テキサスを怒らせるな」キャンペーン
「本当のテキサス人はポイ捨てをしない」と訴え、路肩のゴミは72%、空き缶は81%減少。



■物語性がある

行動させる

シミュレーション(行動のしかたを教える)
消防士は消火活動を終えるたびに体験談を交わす。

行動を起すエネルギーを与える
障害を乗り越えて勝利をつかむ話、など。



 
 
「単純明快で、意外性があり、具体的で、信頼性があって、感情に訴える物語」
 
SUCCES(Simple Unexpected Concrete Credentialed Emotional Story)