「新しい道徳」 | Jiro's memorandum

Jiro's memorandum

泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「新しい道徳」(北野武)

 

北野武さんの本を初めて読んだ。ニヤニヤしたり、ウンウンと頷いたり、しながら読んだ。本でも「たけし」節健在、かつ真面目にタメになった。特に、子育て面で参考になったかな。


テレビを見ていてコメントなど聞いていて、いっけん人と違うことを言っているようで、実は本質をついているな、とよく感じていたが、この本でも、独特の視点のようで、実は普遍的な真理をついているな、とたびたび感じた。



どの世界の方でも、一流を極めた方、信念に基づいて挑戦した方の言葉は、含蓄に富むというか、心に響くものがあるな、と改めて思う。

 

 

 

以下、備忘

 



「自分を見つめなさい」「いちばんうれしかったことを書きなさい」
小学1年生に、いちばんうれしかったこともないだろう。そういうのは歳をとって、昔を振り返って思い出すものだ。


子どもに喧嘩をしちゃいけないと教えるなら、大人だっていかなる理由があろうと戦争をしちゃいけない。


今の世の中じゃ、ウサギは途中で昼寝なんかしない。他のウサギと競争中で、カメにかまってる暇はない。
ノロマでもコツコツと努力すれば勝負に勝てるなんて幻想を、子どもに植えつけちゃいけない。そんなことしたら、真面目なカメは、頭のいいウサギの食い物になってしまう。


インターネットで手軽に知識を得ることはできても、手軽に得られるのは手軽な知識でしかない。その証拠に、インターネットの世界にはバカがあふれている。
ひとつの知識を本物の知識にするためには、何冊も本を読まなくてはいけない。それは今も昔も変わらない。


「ほんとうの意味で、傷つきたいと思っている人は1人もいない。だから、自分が傷つきたくないなら、他の人を傷つけるのはやめよう」
教室の子どもたち全員に教えていい道徳は、これくらいしかないんじゃないか。


本田宗一郎やガンジーやスティーブ・ジョブズの子ども時代の研究をいっぺん真面目にやってみたらいい。世の中のためになるすごい発明や発見をした人とか、社会に大きな貢献をした人とか、誰からも尊敬される人格者とか、とにかく立派な人のサンプルを集めて、そういう人がどんな子ども時代を送ったか、なぜ偉大になれたのかを研究して、その成果を道徳教育に反映させたらどうだろう。
もっとも、結果はなんとなく見える気がする。大きなことを成し遂げた人間が、真面目で親や先生のいうことをよく聞いて子ども時代を過ごしたなんて話はひとつも聞いたことがない。


道徳は他人に押しつけたり、押しつけられたりするものではない。
親として、自分の子どもに最低限の道徳は身につけさせたいと思うが、それはあくまで最低限のことだけ。
最低限のことしか教えないのは、どんなに厳しく道徳を躾けたところで、子どもが自分からそう思わなきゃ意味はないから。結局のところ、道徳は自分で身につけるもの。
弟子にも最低限のことしかいわない。それは、あいさつと礼儀。芸能の世界は縦社会、仕事をする以上最低限の礼儀がある。
必要最低限のことを教えたら、あとは放っておく。それ以上は本人が努力するしかない。不思議なもので、成功する芸人は例外なく、あいさつをきちんとするし、それなりの礼儀もわきまえている。
上に行こうとする奴は、放っておいても道徳的になる。そうでないと、上には行けない。


誰かに押しつけられた道徳じゃなくて、自分なりの道徳で生きたほうがよほど格好いい。
高倉健さんは格好良かったけれど、それはあの人が高倉健という人間を演じたから。それが彼の、いうなれば道徳だった。
自分なりの道徳とはつまり、自分がどう生きるかという原則。
道徳を人まかせにするのは、自分の人生を人まかせにすること。


どんな道徳であっても、自分の決めた道徳はきっちり守る。自分なりの決め事を作って、それを守る。
守ることができるかどうかわからない道徳を抱えて生きるよりも、自分なりに筋の通った道徳を作って、それをきっちり守った方がいい。