「ローマ人の物語 17 18 19 20 悪名高き皇帝たち[一][ニ][三][四]」★★★☆☆ | Jiro's memorandum

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「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち[一][ニ][三][四]」(塩野七生)

 
 
ローマ帝国は、カエサルが青写真を引き、アウグストゥスが構築し、ティベリウスが盤石にし、クラウディウスが手直しをした。
 
恐怖政治の「テリブル」なティベリウス、お祭り好きな浪費家のカリグラ、歴史家で恐妻家のクラウディウス、勘違いアーティストのネロ。能天気で愉快な若者から、堅物の弱々しいおじさんまで、少々(あるいは大いに?)難ありの皇帝が何代か後を継ぐも、パクスロマーナは維持された。
 
 
正直なところ、この「ローマ人の物語」はだんだん退屈になってきた。しかしながら、ローマ帝国がこの先どうなるか、興味は尽きない。
 

 
以下、備忘
 
 
ティベリウス
14-37年(55ー77歳) 在位23年
地味な努力も市民からは評価されず、恐怖政治と緊縮財政で不人気を甘受。死んだ時、ローマ市民は「ティベリウスをテヴェレ川に投げ込め!」と歓喜に沸いた。
 
カリグラ
37-41年(24ー28歳) 在位4年
剣闘士試合、戦車競走、演劇など復活、毎日がお祭りに。しかし、人気取り政策ばかりの浪費家政治は続かない。最後は近衛軍団に暗殺され、その頃には市民の熱狂もすっかり冷め冷め。
 
クラウディウス
41-54年(50ー63歳) 在位13年
前半生は歴史家、50歳にして政治デビュー。知識や律儀さは備えるも、リーダーの資質に欠ける。側近に解放奴隷登用、悪妻の暴走放置、などで不評を買う。
 
ネロ
54-68年(16-30歳) 在位14年
母親への反抗。元奴隷女との恋愛。そして母親殺しに妻殺し。音楽祭では大真面目に優勝を目指す。奇抜なことをやってくれる愉快な若者。最後は自害に追い込まれるも、死んだネロに庶民は優しかった。
 
 
 
 
ローマ帝国とは、ユリウス・カエサルが設計図を書き、アウグストゥスがそれに基づいて構築した大建造物のようなものである。(中略)後から手を加えようにも絶対に基本型は変えること不可能というくらいの堅固な建造物にして後に残さねばならない。ティベリウスに課されたのは、地味でありながら苦労なら劣らないこの任務であった。
 
ティベリウスは何一つ新しい政治をやらなかったとして批判する研究者はいるが、新しい政治をやらなかったことが重要なのである。アウグストゥスが見事なまでに構築した帝政も、後を継いだ者のやり方しだいでは、一時期の改革で終わったに違いないからだ。アウグストゥスの後を継いだティベリウスが、それを堅固にすることのみに専念したからこそ、帝政ローマは、次に誰が継ごうと盤石たりえたのである。
 
 
問題は、誰を「一人の統治」の当事者にするか、であったのだ。だがそれゆえに、アウグストゥスの苦労の結果であった帝政におけるチェック機能の問題は、未解決で残されたことになった。いや、チェック機能としての皇帝暗殺が、正当化されるようになったとするべきかもしれない。