「人を選ぶ技術」★★★☆☆ | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「人を選ぶ技術」(小野壮彦)

 

この本は、予想以上に奥の深い、いい本だった。

 

人材採用に参考になるのはもちろん、人を「選ぶ」、というより「見る」、さらには「分析する」「よく理解する」「深層まで見抜く」、というレベルで深い解説がされている。仕事観や人生観についても、考えさせられるものがあった。

 

がむしゃらに頑張る人に出合うと「この人はなぜこんなに頑張れるのだろう?」「何がこの人を突き動かしているのだろう?」と不思議に思うことがたまにあったが、そのエネルギー源は「使命感」そして同じくらいに「劣等感」にあるという話など、結構納得した。


採用などでこれから新しく付き合うことになる人だけでなく、仕事関係の人や知人・友人など既に付き合っている人についても、できるだけ深層まで、冷静に客観的に、愛情も込めつつ、分析してみたいな、と思っている。

 

最終的には“感じとる”という感覚的な判断に依存することもあるだろうが、自分なりに相手の特性やポテンシャルの仮説を立てることで、いい関係を作っていけるのではないかと思う。

 

 

 

以下、備忘

 

 

 

■人の4タイプ

 

①優秀×人として善

②平凡×人として善

③平凡×人として悪

④優秀×人として悪

 

①優秀×人として善

一番欲しい人材、見逃さないことが肝要(実際には見逃し頻発)

・認知バイアス(学歴など)により優秀だと気づかない

・時に「平凡」の仮面をつけて現れる

体格を理由にイチロー選手の獲得を見送った多くのメジャー球団が見送ったことを後悔した。

小野さんは笠原健司さんを、朴訥としてリーダーの華があるとは到底思えない、という印象を持ったが、その後ミクシィは大ブレイクした(笠原さんは生粋のプロダクト・ガイ、時代を代表する経営者に)。

 

④優秀×人として悪

もっとも厄介なタイプ

・表面的には評判がよかったりする(巧妙に隠したり、印象操作をしたりすることも)

・なまじパフォーマンスが良いため、ポジションから外す、辞めさせるなどの抜本的判断が遅れ、その間に毒が会社に回り組織崩壊を引き起こすことも。

 

 

 

■人物の構造(4つの階層)

 

1F 経験・知識・スキル

B1 コンピテンシー

B2 ポテンシャル

B3 ソース・オブ・エナジー

 

1F 経験・知識・スキル

履歴書に「あの大ヒット商品の販売戦略を立てた」と書いてあっても、チーム一員として上から落ちてきた戦略を実行しただけかもしれない。

その気になれば捏造も可能な情報で大事な人選びをしてしまっている。

 

B1 コンピテンシー =「好業績者の行動特性」

“どんなシチュエーションで、どういうアクションを取りがちか”

「成果志向」「戦略志向」「変革志向」「協調性」「人を育成する能力」など

成果志向

低レベル「難しいとやめてしまう」

中レベル「絶対にやり遂げ、目標は何とか達成しようとする」

高レベル「目標は超えることが当たり前、そのための動きが早期から逆算できる」

戦略志向

低レベル「自部門の戦略を立てることはできる」

中レベル「自社全体の戦略を策定できる」

高レベル「業界全体の戦略を立てられる」

 

B2 ポテンシャル =器

コップの大きさ=その人の「器」

注がれる水=「経験・知識・スキル」「コンピテンシー」

さらに注ぐことができる水の量=「伸びしろ」

ポテンシャル(器)の決定因子

「好奇心」新しい経験、知識、率直なフィードバックを求める

「洞察力」新しい可能性を示唆する情報を収集し理解する

「共鳴力」想いやビジョンを伝え人々とつながろうとする

「胆力」困難な目標に立ち向かい逆境からも素早く立ち直る

見るべき(感じとるべき)は能力ではなく「エネルギー」

 

B3 ソース・オブ・エナジー =精神性

ヒリヒリするような頑張りを生む力。それは「使命感」であり「劣等感」。

例えば、想像するに孫正義さんは「使命感」と同じく「劣等感」も大きかったのではないか。

 「使命感」「劣等感」が弱いからといって、悪いことがあるわけではない。世の中を動かすような突き抜けた人生になることはないというだけ。それは全く恥じることではなく、むしろ幸せに近いと言える。(たまに、すごくポテンシャルが高いのに、なぜか自分で物事を成し遂げようとせず、ナンバーツー的な立場に甘んじたり、厭世的な暮らしを送っていたりする人がいるが、こういう人は使命感や劣等感が低め)

 

 

■実践メソッド

 

面接では相手をリラックスさせる(そうすると相手の“素”が見える)

 

そのために、まず自分がリラックスする。

 

アイスブレイクは必須。

 

エピソードを聞く(企画力はありますか?などストレートな質問はNG)

 

志望動機=モチベーションを聞くのはナンセンス(あって当たり前)。もしどうしても聞きたいなら「あなたはどんな人生を送りたいと考えていますか?」

 

どれだけバイアスをなくすことができるか、は重要なテーマ(親近感バイアス、ビューティバイアス、など)

 

 

■「人を選ばない」という大胆な挑戦をしたZOZO

 

採用基準はたった一つ、「いい人」だけ。

 

結果的に、学歴や社歴を気にせず、人物の深層部、人のポテンシャルを見抜こうとする、本質的な人の選び方をしていた。

 

 

 

■育てることより、選ぶことはもっと大事

 

「ちゃんとした素材を選べば、あとは放っておいても伸びる」(某社長)

 

何も言われなくても自ら学んで育つような人材を、よくよく選別して採用する方が効率的。

 

技術進化やトレンド変化が速すぎて、採用後研修して引き上げるという悠長なやり方では生き抜けない。

 

 

 

■人を見る達人になって得られる果実

 

「魂に触れられること。それは究極の喜び」

 

忘れられない「サンキュー・レター」

 

 

 

■人を見るということ

 

それは、相手の能力とポテンシャルを冷静に見抜き、それに合った期待値を描き、委ねるべき仕事をデザインすることが本意。

 

人間はひとりひとり素晴らしさがあり、リスペクトすべき。ポテンシャルも、伸びしろも、ひとりひとり違う。

 

①それぞれの部下のポテンシャルを見極める

②どの能力を伸ばすかについて設計する

③ちょうど良い具合の仕事をお願いする(少し背伸びくらいが良い)