「白い巨塔」(山崎豊子)
山崎豊子さんの本は、「華麗なる一族」、「沈まぬ太陽」、「大地の子」など、今まで読んだ。「華麗なる一族」と「大地の子」は、のめり込むように読んだ。
「白い巨塔」は何度も映像化されており(しかも韓国でも)、山崎豊子さんの代表作中の代表作だと思うので、間違いなく面白いのだろうとは思っていたが、病院の世界に興味がわかなかった。今回読むに当たっても、自分はどこまでのめり込めるのかな、とやや斜に構えながら読み始めた。
しかしながら。かなり、のめり込んだ。
癌治療や医事裁判といった、難解そうな専門的な内容なのに(専門用語も頻出)、ストレスなく、テンポよく、退屈な時間帯もほぼなく、一気に読んだ。
強烈な野心を持った財前五郎。基本的には共感すべき人物ではないのだろうが、なんとしてでもやり抜こうとする突き抜けた野心に、(決して尊敬できる言動ではなかったりするのに)、どこか共感を持った。悲劇的な終わり方だから、ということもあるとは思うが、それだけではない、人間くささというか、人間的魅力(のようなもの)を、感じた。
山崎豊子さんが、この作品を書いた理由は、「そこに重厚な人間ドラマがあるから」とのこと。
欲望に突き動かされる者、良心に突き動かされる者、葛藤、悩み、、、「大地の子」や「華麗なる一族」と比べると舞台のスケール感は小さいようにも思えるが、大学病院という狭い世界ながら、そこに渦巻く人間ドラマは、どの世界の、どのような人にも、どこかしら共感をもたらすのではないか。そういう意味で、スケール感、世界感の大きな作品だ。
映像化されると、結構印象が変わるものだ。財前五郎がどのように描かれ、演出され、演じられているのか、とても気になる。