「故郷忘れじがたく候」★★★☆☆ | Jiro's memorandum

Jiro's memorandum

泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「故郷忘れじがたく候」(司馬遼太郎)


歴史の大局の中では、取るに足らないエピソードだが、ドラマティックな物語。

今回も司馬遼太郎さんの短編を堪能した。


1番目の話は、秀吉の朝鮮出兵からの撤退の際、どさくさに紛れて陶磁職人の獲得を目的に70人ほどの韓国人が薩摩藩によって連れ去られ、実際その後薩摩で高品質の陶器が作製され、薩摩藩に多額の経済的利益をもたらし、現代までその技術が継承されているという話。本書では14代目沈寿官氏が登場するが、現在は15代目に引き継がれているようだ。
400年以上も、故郷から遠く離れた異国で、小さなコミュニティを形成し、一途に、たくましく、そして明るく生きてきた「韓国系薩摩人」。
どう表現するのがいいのかわからないが、すごい人たちだと思う。不思議な世界観を味わった。


2番目の話は、奥州遠征の官軍参謀に任命された世良修蔵という長州藩士の話。かなり乱暴に要約すると、奥州の雄藩を動かすには、格が違った、器が小さかった、ということだろう(長州藩は人材不足だった)。一番の部下は桂太郎だったそうだが、よい反面教師になったのではないか。


3番目は細川ガラシャの話。細川忠興の強烈な独占欲と、ガラシャの忍耐強く芯のある生き方に、かなり脚色が強いのでは?と思いつつも、面白く読んだ。
ふやけた独裁者となった秀吉は大名の女房狩をするようになり、大名屋敷を留守にさせるために朝鮮出兵を始めたという噂さえたった。ということで、1番目の話にもつながる。