「50を過ぎても速く!」★★★☆☆ | Jiro's memorandum

Jiro's memorandum

泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「50を過ぎても速く!」(ジョー・フリール)
 

昨日、九十九里トライアスロンのゼッケンが届いた。いつもこの瞬間はテンションが上がる。遠足の前の小学生のような気持ちだ。
 
しかしながら、1週間前の土曜日の早朝、バイク練習に出かけた直後に落車し肋骨を骨折した。レース当日にはほぼ完治しているだろうが(希望的観測含みで)、それまで練習が思うようにできないのがもどかしい。当面は回復期と割り切って、骨折に影響がなさそうなフィットネスバイクでのインターバルトレーニングと筋トレ(スクワットなど)を適度に行い、直前の週にバイクのロングライドとLSDとスイム練習を各3−4時間程度やれば大丈夫だろう。
 


すべてのアスリートのパフォーマンスが年齢とともにピークアウトしていくのは紛れもない事実。誰でも「もう年だから」という言い訳を口にする時期が来る。

本書は加齢の影響を認めつつも、そんなに悲観する必要はない、多くの人が思っているよりも可能性はある、と勇気を与えてくれる。
 
ポイントは、単に健康でいたいという理由だけであれば適度な運動を続けるのでまったく問題ないが、アスリートとして充実したいのであれば高強度のトレーニングを続けなさい、そしてそれは50を過ぎても可能だし効果がある、と言うこと。
 
まさに、自分自身、若くないのだからと激しいトレーニングを控え、スピードが落ちることについてもそれが普通とあきらめる一方、練習時間だけは維持し完走できる体力だけは確保しようという、いま思えば弱気なトレーニング姿勢だった。
 
本書を読んで、全盛期のパフォーマンスを取り戻すことは現実的ではないにしろ、単に完走するだけではなく、もう一度速さに挑戦してみようという気持ちになった。
 
また、若い頃は精神論や根性論にやや偏ったトレーニングをしていたが、最近は、科学的で効率的で効果的なトレーニングに関心を持つようになった(「自転車の教科書」を読んだこともきっかけのひとつ)。食事や睡眠についても研究心が高まっている。
 
なので、年はとってもどこまで記録を維持できるのか、あわよくば向上させられるのか、いまは楽しみでしかない。
 
 
以下、備忘
 
 
第1のポイントは、運動することで健康を維持し、世間一般よりもはるかに若いままでいることができるということ。運動強度は特に高いものである必要はない。LSD中心のトレーニングを行った人は、そうでない人よりもはるかに体力があり健康。
第2のポイントは、高強度の運動には健康以上の目的があるということ。それは持久系のパフォーマンスの向上。トレーニングの強度を上げれば、より速くゴールできる。これはアスリートにとって第1のポイントと同じくらい重要。
 
 
ただし、体を休ませ回復させることが必要不可欠。肝心なのはほどほど、ということ。きつい練習やレースの頻度について、慎重かつ現実的に考える。
 
スポーツのパフォーマンスは運動習慣(育ち)と遺伝的体質(生まれ)で決まるが(その比は60対40、あるいは70対30)、年をとるごとに、運動習慣の影響が高まる。
 
 
エコノミーが改善し、1分あたりの酸素消費量が減るいちばんの共通要素は技術。
ただし、ランニング技術を変えてもパフォーマンスに何の改善も見られないことは多々ある。
ほぼすべての持久系競技に共通してエコノミーにプラスとなる要素は、過剰体重を減らす、機材の軽量化、自転車ではエアロダイナミック形状の機材、水泳では肩・膝・足首の柔軟性。
 
時間、強度、頻度、のうち最もエコノミーの向上につながらないのは時間で、頻度と強度のほうがはるかに効果があると考えられている。また、高強度トレーニングのほうが低強度トレーニングよりも効果がある。1回の練習時間は短くても高強度の練習を入れながら頻繁に練習することが、技術ひいてはエコノミーを向上させる。

筋力トレーニング(この場合、専門とする競技の動きを忠実に真似たもの)はエコノミーの向上につながる。
 
 
加齢によるパフォーマンス劣化の犯人として最も疑わしいのはVO2maxの低下。若いときほど効率的に酸素を活動筋に運搬して使うことができないということで、年齢とともに加速度的に低下する。
VO2maxを維持する鍵は、昔からつきあいのある、あの高強度トレーニング。しかし、つらいからという理由でアスリートのほとんどは50歳を前にしてこのような高強度トレーニングを減らし始める。
 
シニア・アスリートに共通する鍵は、高強度トレーニングに、その他のタイプの効果的なトレーニングを組み合わせて行い、回復を十分にとること。
 
 
ハイパフォーマンスが目標ならば、楽な練習に明け暮れてもその目標は達成できない。スポーツにおいて、高いレベルに到達するには、質の高いトレーニングに本気で取り組まなければならないのです。
 
 
ほとんどのアスリートにとって、パフォーマンス向上の最大の鍵となるのは、体ではなく、心。脳が「イエス」といわなければならない。ほとんどの人は、すべきことをするモチベーションに欠けている。50代60代70代になれば、もっと楽をしてもいい、という免罪符は手に入るが、まだハイパフォーマンスを発揮することもある。いくつか低い目標をクリアしただけで、よくやったと自分の背中をなでても、ただ肩がつるだけ。速くはならない。ハイパフォーマンスはハードワークのうえに成り立つもの。それはいつも変わらない。
誰でも、年齢を言い訳にするまでは、老いるということはない。常に年齢を持ちだして自己弁護していると、その数がいくつであっても、高い目標には手が届かないと思うようになる。
 
 
トライスロンにおいて、自転車は年齢にともなうパフォーマンス低下がランや水泳より小さい。

シニアのトライアスリートでは、長い種目より短い種目のほうがパフォーマンス低下が小さい。
短いレースのパフォーマンスの決定要因は強度であり、速いインターバルトレーニングなどを行なうと考えられる。一方、長いレースのパフォーマンスの決定要因は継続時間であり、長時間、低強度の運動を継続するトレーニングを行なうと考えられる。この前提が正しければ、加齢に伴うパフォーマンス低下の犯人は、量ではなく強度ということになる。長時間トレーニングを行ったとしても、その速度が遅ければ、速いトレーニングを短時間行うよりも、これから先10年で失われるパフォーマンスは大きい。

 
 
体力を向上させたければ、疲労にも注意を払うこと。これをぜひ覚えておいてほしい。50歳を過ぎても結果を出すには、一貫性のある、適度なトレーニングを行い、適切な休養をとって、回復に努めることを目指す。
 
 
睡眠は競技で成功を収めるためには不可欠。トレーニングのストレスから体を回復させる方法のうちで最も重要。鍵は、睡眠時間よりも深さ。決まった時間に就寝することが重要。
 
目覚ましで起きることが長寿の秘訣とはいえない。自然と決まる睡眠時間が、おそらく長寿と健康にはよい。アラームを鳴らすのではなく、自然に起きるほうが、体にはよい。
 
レースが終了したら、2、3日〜1週間(あるいはそれ以上)、休養・回復期間を入れるべき。シーズン最後のレースが終わった後なら4週間程度とってもいい。
 
練習を休んでしまったとき、できなかった練習の分を、ほかの練習に追加しない。
 
 
練習後は、体の要求を満たすため、タンパク質を摂取する必要がある。筋肉の修復速度が高まることも実際にある。特に運動後「ただちに」タンパク質をとった場合はそう。練習後のあいだが空くほど効果は落ちる。練習後30分〜1時間以内にタンパク質をとる。
 
シニア・アスリートは若い人よりも大量のタンパク質が必要。ゆで卵なら6個分に相当。これは大変な量なので、エッグプロテイン、ホエイプロテインをおすすめ。
比較的ロイシンが多く含まれている食品は、乳製品全般、動物性食品、乾燥いちじく、パスタ、ほうれん草、バターミルク、ナッツ類、種子類、ココナッツミルク、アボカド、豆類、エンドウ豆、など。
 
 
 

 

エピローグより抜粋


持久系競技のパフォーマンスが加齢とともに低下すること自体は、確かです。しかし、スポーツ科学の研究者のなかでは、パフォーマンス低下は、(ほとんどではないにしても)多くの場合、生活習慣とトレーニングが変化した結果である、という見解が増えています。
本書を通して私が推奨してきたのは、VO2max強度程度で高強度トレーニングを行うこと、高負荷の筋力トレーニングを行うこと、必要に応じてトレーニング期の単位を変えること、そして頻繁にトレーニングの進捗度を測ることでした。このほかにも、パフォーマンスに影響を与える生活習慣のファクターとして、食事、睡眠、回復方法、体組成についても触れました。