「銃・病原菌・鉄」上 ★★★★☆ | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

ヨーロッパ人が他の民族を征服した直接の要因は銃・病原菌・鉄である。では、なぜヨーロッパ人は銃・病原菌・鉄を持つようになったのか。なぜ、アフリカ人やアメリカ人が持つようにならなかったのか。

 

その究極の要因は、ユーラシアが、アメリカ、アフリカ、オセアニアなどよりも環境的にめぐまれていたから、という結論。民族的に、優秀だったとか、能力があったということではない。

 

 

1532年、スペインのピサロがインカ皇帝アタワルパを出会って数分で捕虜にした。これが、ヨーロッパ人による新世界の植民地化の始まり。

 

インカ帝国8万人の兵士に対し、ピサロには168人の兵士しかいなかった。にもかかわらず、ピサロを成功に導いた直接の要因は、銃器・鉄製の武器、騎馬などによる軍事技術、ユーラシアの風土病・伝染病に対する免疫、航海技術、集権的な政治機構、文字を持っていたこと、など。(スペイン側は、事前に膨大な知識・情報・経験を有していた)。

 

 

ユーラシアの優位性

・植物栽培可能な品種が豊富に存在した

・家畜飼育可能な動物も豊富に生息していた

・東西に非常に広い(つまり気候が同じ)大陸であるため、食糧生産(植物栽培や家畜飼育)の伝播スピードが速かった

・食糧生産の効率化が早く進み、定住社会が早く形成され、人口が増えた

・食糧生産と貯蔵によって農耕に携わらない人びと(知識人、技術者、政治家など)も養うことができるようになり、文化、技術、政治機構が発達した

・動物の飼育は、食糧面、物流面、軍事面に効果をもたらした

・天然痘など様々な病原菌が家畜から人間にうつったが、病原菌に対する抵抗力(免疫)を長い時間とともに身につけていった

 

 

 

以下、備忘

 

本書の要約 「歴史は、異なる人びとによって異なる経路をたどったが、それは、人びとのおかれた環境の差異によるものであって、人びとの生物学的な差異によるものではない」

 

家畜化の候補となる陸生の大型草食動物は148種。このうち実際に家畜化されたのは14種のみ。餌、成長速度、気性、などの条件がそろわなければ家畜化できない。

 

第二次世界大戦までは、負傷して死亡する兵士よりも、戦場でかかった病気で死亡する兵士の方が多かった。・・・過去の戦争で勝利したのは、必ずしも優れた将軍や武器を持った側ではなく、たちの悪い病原菌に対して免疫を持っていて、免疫のない相手側に病気をうつすことができた側である。

 

数千年前に都市生活が始まるとともに、集団感染症が加速度的に増えた。天然痘が最初に登場したのは紀元前1600年頃、おたふく風邪は紀元前400年頃、ハンセン病は紀元前200年頃、ポリオは1840年、エイズは1959年。

 

コロンブスのアメリカ大陸発見以降、200年もたたないうちに先住民の人口は95%も減少。先住民はユーラシア大陸の病原菌にさらされたことがなかったので免疫を持っていなかった。

 

ヨーロッパ人は家畜との長い親交から免疫を持つようになった病原菌を、とんでもない贈り物として、進出地域の先住民に渡した。