★★★★☆
マッキンゼーが、世界のオピニオンリーダーに日本が直面する問題について、それぞれの視点での提言を求め、まとめた1冊。
グローバル化の遅れとか、終身雇用制度の崩壊とか、日本の問題はもう散々言われていることで、やるべきことも明確だと思うのですが、なぜ日本がこれらの問題に対処できないのか。
本書で頻繁に指摘されるのが、まず「政治のリーダーシップの欠如」。これが大きいですね。
あとは、産業界においても強いリーダーシップを発揮できる経営者が少ない、企業の慎重な実行力、安定志向でリスクを取らない若者、等でしょうか。
バラエティに富んだ寄稿者が日本について語っていますが、面白かった読み物は作家ロバート・ホワイティング氏の「野茂効果」。
野茂のメジャーでの活躍後、多くのアスリートが海外に挑戦した。また、転職や訴訟が増えたのも野茂効果である(中村修二氏の日亜に対する訴訟など)。しかし、日本の球団経営は旧態依然で変わっていないことも事実である、と。
(以下、抜粋)
日本人は野茂たちアスリートから、あらゆることを集団でする必要もないし、成功するためには大きな会社に入る必要もないと教わった。また、自分を信じる気持ちと根性で、人と違う道を選んだときにメリットがあることも知った。才能を抑え込み、気力を萎えさせる島国の擬似封建主義体制に立ち向かうことを、野茂たちは恐れなかったのだ。
「野茂効果」は本物である。ただ、日本の」伝統を終焉させることは大変難しい。何世紀にも及ぶ慣習は簡単に崩壊するものではない。また、伝統にはよいものも多く、そうした伝統の継続が日本の魅力のひとつでもある。しかし、衰退の方向に向かう現実をそのままにして、伝統を守るばかりでは、いずれ深刻な結果を招くことになるだろう。
最近のイチローや松井の不振は「逆野茂効果」か・・・
小説家・マーサ・シェリル氏の視点も面白かった。
(以下、抜粋)
米国では、成功した幸せな人間を演じなければならないという社会的プレッシャーがあるので、自分の生活について語るときも徹底してバラ色に脚色することが多い。そのため話は、現実を見据えたものというよりも、どちらかというと現実から目をそらしたものになりがちだ。日本では事情が全く違うようだった。そこでは冷静な自己評価と打ち明け話が定番らしい。心にもないことを聞かされることもなければ、仕事にどんなに満足しているか、新しい娘婿がどんなに素晴らしい人か、といった話も出ない。日本の友人によると、仕事はつまらないし、娘婿ときては・・・・・・「何て言うか、ちょっと変わってるのよね」という本音の話が出てくるのだ。
なるほど、と思いました。SNS利用の日米の違いなどに参考になる。
日本の未来について話そう/著者不明
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