「ソーシャルブレインズ入門」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

★★★★☆


医学や神経科学の視点での脳研究は前から進んでいますが、社会の中での関係性という視点での脳機能=ソーシャルブレインズについての研究はまだ始まったばかりとか。

社会的な脳機能とは、社会的な要素を含んだ認知機能、もしくは外部とのコミュニケーションとそれに対する適応機能です。

ソーシャルブレインズを理解することは、コミュニケーションのメカニズムを理解し、他者との関係性を最適化するメカニズムを明らかにすることにつながります。



人はコミュニケーションなくしては生きていけない生物です。人の喜びや幸せは、リスペクトを前提とした他人との関係性に大きく依存します。リスペクトとは母子関係に源をもつ「無条件の存在肯定」です。
実験によれば、①普通の家庭の子供、②事情により母親と離れて乳児院で育った子供、③罪を犯した母親と母子厚生施設で育った子供、のうち、乳児院の子供の死亡率だけが異様に高いそうです。栄養面・衛生面の環境は良好だったにも関わらず。

人は生きていくために、様々な人と関係をつくります。しかし、関係を持つ機会が増えるに従い、人の振る舞いや言動に注意を払う必要が出てきます。空気を読んだり、騙されていないかと疑ったり。これらを認知コストといいます。認知コストは脳にとって非常にストレスがかかります。脳に大量の血流が必要となります。しかし、短期的な経済的利益のために認知コストをかけざるを得ない場面は現代社会では当然あります。

しかし、リスペクトを承認しあった他人とのコミュニケーションは認知コストがかからず非常に心地良い(ソーシャルエモーションというやつですね)。その最たるものが上記のとおり母親であり、親族、親友、同級生、気兼ねなく付き合える友人・知人、です。



このように考えると、ソーシャルネットワーキングというサービス(SNS)は、人の健康状態(特に脳)を良好にし、喜びや幸せを最大化させる、非常に有意義なサービスではないでしょうか。

ストレス社会の成長産業ともいえます。




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