「マーケティング脳 vs マネジメント脳」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

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ブランドの拡張をしてはいけないとか、より良い商品を作るのではなく新しいカテゴリーを創るべきだとか、これまでのライズの著書の焼き直しの感は否めない。ただ、マネジメント脳(左脳)とマーケティング脳(右脳)という対立軸でライズの主張を読むと、これがまた面白くてわかりやすい。グーグルなど、最近の事例などもあるので、その点も良いです。



なぜ左脳タイプはブランドを拡張したがるのか? 強いブランドを持っているならほかの商品にもそのブランドを付けたいと考えるのは無理もない。また、既知のブランドと聞いたこともないブランドとどちらが消費者の支持を得るか事前のアンケート調査をすれば既知のブランドになるに決まっている。

しかし、新しいブランドの勝利がマーケティングの歴史である。ゼロックスvs.IBMコピー機、デルvs.IBMパソコン、アマゾン・ドット・コムvs.バーンズアンドノーブル・ドット・コム、など枚挙に暇がない。

グーグルはどうか。検索では圧倒的なブランドを確立した。その昔、コピーすることを「ゼロックスする」と人々はいっていたが、いまは検索することを「ググる」という。固有名詞が一般名詞を代替する。こういうブランドは非常に強い。しかし、検索以外にグーグル○○とグーグルの名称を冠したサービスが増え、検索=グーグルという強いブランド力が希薄化している。しかも検索以外のサービスは成功していない。ただ、ヤフーやMSNはグーグル以上にブランドの的を絞っていないのでグーグルの脅威にはならない。グーグルの脅威になるのは、検索だけに絞った全く新しいブランドが台頭することだ。MSNを冠していないBingは可能性があると思う。本書ではCuil.comに注目している。

短期的に収益を上げたい。四半期ごとの成長を達成したい。だから強いブランドを活用して早期に売上を伸ばしたい。と左脳タイプは考える。しかし、レッドブルもマイクロソフトもiPodもスタートはスロースタートだった。
自然界には、成長の遅いものが速いものに勝つ例が少なくない。成長の遅い木は、成長の速い木より長く生きのびられる。P.215




よりよい商品を開発しよう、フルラインナップを揃えよう、いっきに大ヒットを狙おう、市場の中央をターゲットにしよう、ひとつのブランドに全資源を集中させよう、才気をアピールしよう、永続的な成長を目指そう、生涯の顧客を持とう、割引券やセールスで客を集めよう、常にイノベーションを図ろう、マルチメディアを活用しよう、そして何より、わかりやすい古い常識を判断の拠りどころにしよう・・・
これらの考えはどれも理にかなっている。ただ、マーケティングの理にはかなっていないというだけだ。マネジメントの人間はマーケティングを理解しようとしない。当然だろう。ほかに心配しなくてはならないこと――製造やら、財務やら、法律やら、人材やら、行政機関との関係やら――が山ほどあるのだから。P.322-323



(目次)

第1章
マネジメントは「現実」に取り組む
マーケティングは「認識」に取り組む

第2章
マネジメントは商品に力を注ぐ
マーケティングはブランドに力を注ぐ

第3章
マネジメントはブランドを持とうとする
マーケティングはカテゴリーを持とうとする

第4章
マネジメントはよりよい商品を求める
マーケティングはほかとはちがう商品を求める

第5章
マネジメントはフルラインナップを好む
マーケティングはラインナップを絞る

第6章
マネジメントはブランドの拡大を図る
マーケティングはブランドの縮小を図る

第7章
マネジメントは“ファースト・ムーバー”を目指す
マーケティングは“ファースト・マインダー”を目指す

第8章
マネジメントは“ビッグバン”を期待する
マーケティングはスロースタートを予想する

第9章
マネジメントは市場の中央を狙う
マーケティングは両極のどちらかを狙う

第10章
マネジメントはすべてを詰め込もうとする
マーケティングは一語で表現しようとする

第11章
マネジメントは抽象的な言葉を使う
マーケティングは視覚的な表現を使う

第12章
マネジメントはブランドをひとつにしようとする
マーケティングはブランドの数を増やそうとする

第13章
マネジメントは才気を重視
マーケティングは実績を重視

第14章
マネジメントはダブルブランド派
マーケティングはシングルブランド派

第15章
マネジメントは永遠の成長を目指す
マーケティングは市場の成熟に備える

第16章
マネジメントは新しいカテゴリーをつぶす
マーケティングは新しいカテゴリーを生み出す

第17章
マネジメントは情報を伝えようとする
マーケティングはポジションを獲得しようとする

第18章
マネジメントは顧客を一生、手放すまいとする
マーケティングは顧客を短期間で手放すことをいとわない

第19章
マネジメントは割引券とセールが大好き
マーケティングはそれらが大嫌い

第20章
マネジメントはライバルのまねをする
マーケティングはライバルの反対を狙う

第21章
マネジメントは名称の変更を嫌う
マーケティングは名称の変更をいとわない

第22章
マネジメントは絶えざるイノベーションに必死
マーケティングはひとつのイノベーションで満足

第23章
マネジメントはマルチメディアを礼賛
マーケティングはマルチメディアに懐疑的

第24章
マネジメントは短期的にものごとを見る
マーケティングは長期的にものごとを見る

第25章
マネジメントは常識を拠りどころにする
マーケティングはマーケティングの感覚を拠りどころにする



マーケティング脳 vs マネジメント脳 なぜ現場と経営層では話がかみ合わないのか?/アル・ライズ

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