「世に棲む日日」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

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「竜馬がゆく」を読んだとき、坂本竜馬以外で最も印象に残ったのが高杉晋作だった(露出度では西郷隆盛や木戸孝允のほうが圧倒的に多いが)。なので、この本は前から読もうと思っていて、ずっと積読状態だった。

全4巻の1.5巻分くらいが吉田松陰、残りが高杉晋作について書かれている。が、吉田松陰は高杉晋作の松下村塾の師として、高杉晋作を語る上で触れざるを得なかったというのが実際ではないだろうか。この本では吉田松陰は高杉晋作物語の前座という印象だ。

この本を読んでいると「狂」という字がよく出てくるが、まさに高杉晋作も吉田松陰も狂人、変人、奇人だった。その純度という点では、ひょっとしたら吉田松陰のほうが上かもしれない。が、かっこよさとか生き様という点で、高杉晋作には非常に魅かれる。自分のなかでは、坂本竜馬と双璧をなす。

「どの人間の生にも春夏秋冬はある」(吉田松陰)。高杉晋作は1867年に27歳で病死したが、その数ヵ月後の大政奉還につながる重要な役割を果たした。短い人生だったが遊びにも革命にも完全燃焼したんだな、と感慨深く読み終えた。

辞世の句
「おもしろき こともなき世を おもしろく」(高杉晋作)
「すみなすものは 心なりけり」(野村望東尼)



革命は三代で成立するのかもしれない、という司馬遼太郎の歴史観を長くなるが引用しておく。

分類すれば、革命は三代で成立するのかもしれない。初代は松蔭のように思想家として登場し、自分の思想を結晶化しようとし、それに忠実であろうとするあまり、自分の人生そのものを喪ってしまう。初代は、多くは刑死する。二代は晋作のような乱世の雄であろう。刑死することはないにしても、多くは乱刃のなかで闘争し、結局は非業に斃れねばならない。三代目は、伊藤博文、山県有朋が、もっともよくその型を代表しているだろう。かれら理想よりも現実を重んずる三代目たちは、いつの時代でも有能な処理家、能吏、もしくは実業家として通用する才能と性格をもっており、たまたま時世時節の事情から革命グループに属しているだけであり、革命を実務と心得て、結局は初代と二代目がやりちらかした仕事のかたちをつけ、あたらしい権力社会をつくりあげ、その社会をまもるため、多くの保守的な権力政治家になる。 第4巻P.97-98


企業にも当てはまる。
夢をみる発明家・研究者がいて(初代)、それを実現化する起業家・事業家がいて(二代目)、ゴーイングコンサーンさせる実務家がいる(三代目)。



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