「情報の文明学」 | Jiro's memorandum

Jiro's memorandum

泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

★★★★☆

1963年に論文「情報産業論」を発表し、日本が工業化に邁進する時期に早くも脱工業化・情報産業への変革の重要性を主張していた先見性は驚きである。トフラー「第三の波」より17年も先行している。一読の価値あり。


■「情報産業論」の三胚葉分化

受精卵の細胞分裂は、内肺葉(消化器官がつくられる)、中胚葉(筋肉がつくられる)、外肺葉(脳神経系、感覚諸器官がつくられる)、という過程をたどる。

同様に産業も、消化器系を充足させる食料生産(農業)、筋肉系の機能を充足させる物質・エネルギーの生産(工業)、脳神経系・感覚諸器官を充足させる情報の生産(情報産業)、の順で発展する。


■情報産業における価格決定理論「お布施の原理」

お布施の額を決定するのは①坊さんの格②壇家の格、の二つ。格の高い坊さんにたくさん出すのは普通。また、格式の高い金持ちの家はけちな額を支払っていては格好がつかない。

※物質的なモノとは異なり情報のコピーコストはタダであり無限に供給できる。したがって需給で価格は決まらない。

※ネット上の情報のほとんどはタダだが「お布施の原理」で情報に価値が生まれていく可能性を感じる。Q&Aサイトにその兆候がある。

※音楽業界では、RADIOHEADがまさに「お布施の原理」でアルバムを配信した。



情報の文明学 (中公文庫)/梅棹 忠夫

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