やっぱり、あのまま?・・・出てこない?」
特大サイズのグラスに オレンジが、これまた
はみ出すくらいたっぷりと沈んでいるジュースを
一気に3分の一ほど吸い上げて・・・・
妹が聞いた。
「うん、そうなのよ!」
と言って、同じジュースを自分も飲む。
タマにくる、この居酒屋さんでの飲み物は
いつもこれ、
頼むメニューも、いつも通りで、
あまり冒険をしないので、失望することもない。
入った時は、まばらだった店内が
最初の一品がやってくる頃から、混み始め、
注文した皿が、全部並んだ頃には、ほぼ
満席になっていた。
「ほら、またね!」と言うと
妹も 「うん、・・・だから、今そう思ってたとこ」と言う
「おもしろいねぇ~、どこ行っても そうで・・・」
「福の神なんだって、こういうの、」
「うん、うん、私も聞いたことある、ほんとにお客さん
呼びこんでるみたいに、入ってくるもんねぇ・・・どこでも」
「ほんと、ほんと」
「福神かどうかは わからないけど、あのさ、イヤな感じの人には
近づかないじゃない、だれでも」
「そうだね、」
「だから、いい感じなんじゃない、私たち・・・ほら、いいエネルギー
出してるのよ、意識してないけど、」
「ふん、ふん、なるほどね!」
と、簡単に盛り上がる、
目出度いふたりには、めでたい答えしかない。
並んだお皿を次々に空にしながら
夕方の空に出た彩雲の話しになった。
「あれは、空中に浮かんだ虹みたいだったね!、
あんなに、はっきりしたの、初めてみた、見た?」
「うん、見た見た!
おねぇちゃんちに向かってる時、クルマから、」
「左の・・・ここんとこだったから・・・右の足の方
探したんだけど、なかったね、」
「あったよぉ~、見たもん、」
「え、あったの!見たかったなぁ、・・・きっと明日から
天気悪いよ」
「そうなの?」
「うん、虹が出る時はね、
『アケノさん、明日からしばらく宇宙船みえませんから、悪しからず』
って、ことなのよ、」
「ふぅ~ん」
「それかね、『今日は雨で見えませんでしたね、これは替わりです。』
って時もあってね、その時は、そりゃもうデッカイ虹が、ど~んと
真ん前にでるよ、」
「え~っ、そんな風に思ったことない、」
「そうだって、じゃさ考えてごらんよ、虹なんて、あっという間に
消えてしまうのに、真正面に出てても、ダレも気づかないで
自分だけ見てることもあるよ、」
「あるある、そんな時は、何か特別な感じがして、ワァ~!って
思うよね、」
「でしょお~!・・・だから、見れた人にとっては何かのメッセージ
なわけよ」
「そうかぁ・・・・じゃさ、前、話したあれ、
虹の中に入ってった!って、」
「うんうん、あの虹ね!」
「そぉ!、あれなんかスゴいメッセージ、だったのかな?」
「そうだね」
「ほんとにスゴかったもんね、そこにクルマごと入ってって
出るまで、どれくらいだったか?・・もう周り全部
セピア色になっちゃって、
クルマの中も、道路も、周りの景色まで全部!」
「よく運転できたよね、」
「ううん、もうあゆみと二人で 大興奮よ、ナニ、ナニ、って言ってる間に
出ちゃったけど、不思議だったねぇ・・・
でも特に、なんか思ったってことはなかったよ、あの時、
うん・・・別になかったよね、びっくりしただけで」
「う~ん、でもいつか、ああ、あれがって思う時があるんだと思う、」
「そうかもね」
「楽しみだね!」
「うん、まぁね」
と、一時間ほど 虹の話で盛り上がりながら完食。
ごちそう様と、満員の店を出た。
出たとたん、寒さに思わず 身を縮める、
以前より、クルマの通りも人も少なくなってるように見える
メイン通りを、
大胆に、斜めに横切ってゆきながら
「やっぱり、寒いね、外は」
「寒いでしょ、タマに出ると」
「どうする?何もないんだったら、行きたいとこあるんだけど」
「うん、いいけど、何処?」
「○○」
「いいよ、」
と、そのまま、良くいく大型スーパーへ向かった。
広い、駐車場に着いたら、やっぱり空を見る、
無意識に、
歩きながら上を向いて、雲の間に見える
星の中に、星でないモノを探す・・・・
店に入ってしまった妹を、追いかけ
少し 早足になりながら、もう一度上を見た時、
小さなふたつの、点滅する光が見えた。
旅客機?・・・・・
にしては、二機、くっつきすぎてる?
そんな近さで、前後して進んでいく二つの光!
前の方が、だんだん遅くなってきて・・・・
後ろの光が 追いついた、
そして、なんと横に並んだ!
そのまま、何秒か進み、
今度は追いついた一機の方が
前になると、また二機前後して飛んで行く、
スゴい!
やっぱり、飛行機じゃない!
あんなこと、できるのは、
そう思ったのが わかったのか、二つの光は
また、何事もないように、ピカリ、ピカリと澄まして飛んで行った。
きっと、笑いながら
「わかったかい、」と言っている。
私は、二つの光に向かって手を振り
小声で、「わかってますよぉ~!、見てます、感謝してます!」
と言った。