(30) 布団の中で、咳と悪寒を | すずめがチュン

すずめがチュン

アケノさんを取りまく風景をおとどけしてます。











2014/7/10 撮影

交互にくり返しながら、


 それが少し治まると、ただただ眠る。


匂いが全くしないので、お茶は苦いだけだ、


 唯一おいしいと感じる、小みかんの汁だけすすって


また眠る・・・・



眠りながら、ふと思った。


 そういえ・・ば、コンコン、いつ、も・・コンコンコン、


  冬眠したい・・・なんてコン、思ってたな、コンコン


 しまった・・・


そう!、


 現実化してしまったのだ、



毎年、年末から年始にかけて必ず疲れから、体調を崩す。


 正月は、女だけが忙しい・・・・とは言っても、


避けられない仕事だから


 やらないわけにもいかず・・・・



いつの頃からか、「この時期冬眠できたらいいな」


 などと思っていた。



 それを、ものの見事に実現してしまった。


  肝心なところで、今の地球の状態を忘れて


   しまっている。

 

「ああ、ちゃんと叶えてしまったのだ・・・・


  しかも、自分の意識で・・・



 ・・・て、事は・・だ


「なんて、凄いんだ!自分!」


  と、一瞬、本気で感心する。


   そして すぐに、もう一人の自分が


「馬っ鹿だねぇ・・・・」


  と、言った。


 寅さんと、おいちゃんの会話みたいに、



それにしても


 咳、悪寒、節々の痛み、


  鉛の様に重い、頭と身体


 完璧に現実化された見事な風邪!



はぁ~・・・と今更後悔しても


  もう遅い、
 

  ままよと「冬眠」するしかない。



 昏々と、薬の効果で、ねむって、ねむって、眠る・・・


  そして、ひっきりなしに夢をみた。


   重い身体が見せる、重い夢だ、


   

 何時間かすると薬が切れ、咳き込んで目が覚める、


  フラフラする身体で、トイレに行き


   薬を飲んで、また眠る・・・・



 絶え間なく見続ける夢、


  珍しく色のない、モノトーンの夢ばかり


その中で、ひとつだけ


    おもしろい夢があった。



 三木のり平さんが現れたのだ、


  そう、あの のり平さん!



昼なのか、夜なのか、いやに薄暗い部屋に


  のり平さんは ポツンと、ひとり坐っていた



 白っぽい服、夏の下着の様な・・・・  


  なで肩の背中を丸めて


  机の隅をぼんやり眺めている


   お酒飲んでる?


 近づいていった私に 気づかないようだ、



 「三木のり平さんですか!」と、私は声をかけた。


   とつぜん、頭の上で声がして


  仰天した のり平さんは、


   「びっくりした!」という顔で私を見上げた。


     怖い顔だ!


 もう一度、「のり平さんですね!」と


  言うと、やっぱり返事はなく、今度は


   「それが、どうした」という顔で、


  突っ立ってる私を、上から下までジロリと見ると


   また下を向いてしまった。


   取りつく島もない・・・普通ならここで退散するが


何故か、夢の中での私は、いつも大胆!


  怖いもの知らずで、ハジけている、


 更に、もう一度


 「『雲の上団五郎一座』、見てました、昔!


   面白かったですよね、とっても!」と、言ったのだ。



  どうして、団五郎一座のことが口から出たのか・・・


   わからないが、



すると、のり平さんの様子が変わった。


  「へぇ~っ・・・・!」と言いながら私の方を見た!


    怖い顔ではない、


   あの、のっぺりした顔の、なんとも言えない


    表情の、のり平さん!



  少し、笑いかけてる?、そう気づいて私は勢いづくと、


 「毎年、楽しみでした、年末にやってましたよね!


  雲の上団五郎一座、テレビで観てました!


  いつか、忠臣蔵の演目だったのかなぁ~、のり平さんが


  吉良家のお屋敷の前に、大きな貼紙があって、それに


  『 吉良家、用心棒募集』と書いてあるのを、


   『 よしよし、やぁよ~、じんぼうぼしゅう』と身体、クネクネ


  させながら読んじゃうのが、可笑しくて、おかしくて


   もうみんなで、お腹かかえて笑ったんですよ」


 と、一気に言ってしまった。



  言い終わって、のり平さんの顔を見ると、


   なんとまぁ~、そこには見たこともないようなニコニコ顔の


    のり平さんがいる。


 とっても嬉しそうな顔で、


   「そぉ~、あれ見てた!あれね」と言うと、のり平さんは


  手招きして、自分の横に坐れという仕草をした。


   すぐに私は、横に坐り


    今度は、聞き役になって、


  夢中で話し始める のり平さんの、面白話を聞いてる


   という夢だった。



 途中で一度、「そう言えば他の方達は?」と私が何故か聞き


   すると、のり平さんは、顔を後ろに向け


    「ほら、あそこ」と言った。



 見ると、一間だけだと思った部屋は、奥にまだあって、


  そこで、何人かのお仲間がくつろいでいた。


   楽しそうに話している。



  ・・・・でも、のり平さんは一人でいるんだ・・・


   と思ったところで、夢も終わった。



 何日かたって、またびっくりする。


  まだ、すっかり元に戻ったわけではないが、


   ボチボチ家事をこなして、一段落し


 夕方まで、また少し休もうと自室に戻り、何気に


  テレビを点けた。



チャンネルを選んだわけでもない、時間がぴったしだったのも


 不思議!



 山田洋次監督が選ぶ、日本の名作100選、とある


  そして、その日の映画は、映画版、


  「雲の上団五郎一座」!



 声もない!、驚きと嬉しさで一杯になる


  白塗りの、とぼけた顔の田舎役者ののり平さん!



  掠れた声で、時々、ハハハと大笑いしながら楽しんだ、


   久しぶりに、お腹の底から笑う


 今年、初めての初笑い!



  きっと、


  のり平さんからのプレゼント?ですね、


    ありがたいこと。




    




つづく