(29) 暗やみの中に、展望台の灯りだけが点り、 | すずめがチュン

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アケノさんを取りまく風景をおとどけしてます。











2014/7/10 撮影

中で、日の出を待っているらしい人達の


  小さな影が見えた。


 じっとしてると寒いのか、絶えず動いては


  時々ガラス戸に近寄り


 空を見上げているようだった。



  午前6時半、まだ真っ暗だ


  星も見えない・・・


    という事は、曇り?



2013年、元旦の


   日の出は拝めるだろうか?


    もしかして、雨になったりして・・・・


 「 えぇ~っ、・・・・だいじょうぶかなぁ」


  どうやら同じ事を考えていたらしい妹が、


 ぼそっと呟くと・・・・


 「だいじょうぶよね!」


   と、慌てて言い直した。


  「 うん、大丈夫よ、まだ時間あるし・・・・」


   と言ってみて、


   やはり 星ひとつ見えない空を、二人で


    見上げたまま、いつもの場所にむかう。



 このまま、雪の中を歩いても、大丈夫だろう


  というくらい、着ぶくれした上に


   更に、念のため持ってきた、大判のひざ掛けも抱えてゆく。



展望台の下までくると、赤々とかがり火が焚かれ


   その前で、揃いの赤い法被を着た人達が


 太鼓を威勢よく打ち鳴らしていた。


     20名ばかりのメンバーで、


   燃えるような赤い法被には


    やまびこ会、と言う字が染め抜いてある。


  前列には、10歳くらいの少年少女たちがいて、皆


   鉢巻の下の目を一点に据えたまま、


    腕を高々と、頭の上まで振り上げては


   打ち下ろす、


 一糸乱れず、一心に 太鼓を打つ仕草は


   とても美しかった。



  太鼓の音は、強く大きく、小さく軽く


2013年の元日の朝の、到来を告げるようで



 一打ちごとに、生み出される真新しい音は


  そのまま、真新しい元日の


   澄んだ空気を震わせると、


  中空で大きな波紋となり、その中のものを


   浄めてゆくように、私たちを くるみながら


    ゆっくりと、地面に下りてきた。



  太鼓が最高潮に達した時、


   ドーン!という音に呼応するように、かがり火が高く


    燃え上がり、


  火の粉がパチパチと音を立てて舞い上がった、


  「おお~っ!」という歓声が上がり、


    大きな拍手が起きた。



 いつの間にか 辺りが少し、明るくなっている。



  シルエットにしか見えなかった


   人たちの姿が、見分けられるようになり、


  中には、知り合いを見つけて


    さっそく、新年のあいさつを


       している人もいる。



 太鼓が終わると、皆 申し合わせたように、


   うっすら、姿を現し始めた桜島を


    見下ろす場所に、急いで移動し始めた。



 もう7時半を過ぎているのに、


   日の出らしきものは見えない?



 薄く、もやって雲の様に見える海の上に


  桜島はきれいな薄紫の姿を見せているが


 頭は、低くたれこめた雲に覆われている、


   その雲は、ふわふわと


そのまま、見渡す限りの空を覆いつくし、


  私たちの頭上のどこにも


   空は見当たらなかった。



 そのまま


辺りは、だんだん明るくなっていき、


  白いふわふわの雲は


 まるで、面白がっているように、


   懲りずに 空をみつめる私たちの頭上で


    いつまでも、じっと動かず


  元日の太陽を隠して見せてくれない。



  やがて、みんな諦めて帰り始めた、


 してやったり、という感じの雲に


   「はいはい、あなたの勝ちね!」


    と言うと、


    「ダレが勝ちだって?」と、そんなにがっかりしても


    ないような様子で、妹が言う。


  「でも・・・・やっぱり来てよかったよね」


    「そうだよ、来てみないとわからないもの」と、


   (せっかく頑張って・・・・なのに) などと


    後ろ向きの言葉なんぞ、思っていても言わない、


     顔には書いてあるが


  だって、2013年の元旦だもの!


   だから、ナニ?などとも考えない、


    「ねぇ・・・このまま鹿児島神宮に初詣しようか」


 「そうだね、そうしよう、うん」


そろそろ、ドリンクが切れて疲れてきたし


  寒くなってきたおばさん二人は、


頑張って、


 そのまま、鹿児島神宮をめざし、初詣をすませた。



  満足して家に帰り、さっそく雑煮の支度をし、長女親子と


 元日の朝を お節で祝う、


  午後には、二女親子がやってきて、またお祝いし



次の日から、長い風邪ひき冬眠にはいる・・・・


  


 つづく