「こんばんは、」
「 早かったね、おばちゃん!」
カウンターの中から、姪のアミちゃんが
迎えてくれた、
つられて 振りかえる、お客さんに、
「 あのね、お母さんのお姉さん、」
と言うと、
「 あ、どうも!」と
丁寧に頭を下げられた、
あわてて 同じく、アタマを下げる
「 いえいえ、こちらこそ、いつも妹の店をご贔屓
下さって、ありがとうございます、」
ちょっと、親みたいな言い方をして、
・・・・おかしかったかな?と思い、
「 他に、お店もいっぱい ございましょうに・・・」
と言ったら
厨房の中で、ハハハと笑い声がして、
「 他に、お店もございましょうが・・・ウチのが一番ですよ~」と
できたての、チヂミの皿を抱えて、妹が出てきた、
「早かったね!」
「 楽しみで、たのしみで、ついね、」
「 だよね、」
チヂミの皿は、さっきのお客さんの前に置かれた、
焼きたてのチヂミの横には、
薄い韓国のりが、添えられている、
おいしそうだ・・・・・
一品は、これにしよう、
7時になり、 S君がやってきたので、
カウンターから、坐れるところに、
席を移してもらう、
「 S君はね、昔のまんま、ちっとも変ってないよ」 と、
妹の言う、昔のまんまが
話し始めて
すぐ わかってきた、
殆ど、初対面に近い私を相手に、
S君は、
知ってる事だけを話す、
謙遜も
知ったかぶりもしない
大げさな言い方も、
出し惜しみもなし、
それでも、古神道に通じるS君の話は
初めて聞くモノばかり、
そんな話に、
いちいち、「へぇ~・・・!」と、のけぞって、
言葉もない私に、
別に、頓着するふうでもなく、
話し続けるS君、
普通でないハナシをふつうに
多分、性格そのままに、
ほんとにこの人は、水色の袴を履く人なんだな、
と思いだした、
いや、もう履いてるような気もする、
「じつは、僕だけのの参拝の仕方があるんですよ」
というので、教えてもらった、
「 拝殿下の正面に立って、
二礼、二拍手、次は?」
「 手を合わせて、目をつむって・・でしょ」
「 いや、目を開けて見るんです、」
「 見る?、なにを」
「 正面の鏡、」
「 鏡って、拝殿の奥にあるあの鏡?」
「 そう、それを20秒から、30秒くらい、じ~っと見つめる,」
「後ろに・・・・ 次の人が待ってるでしょ、」
「 いいの、待っててもらえば、
年に一度しか行かない、初詣なんかで、
これやろうとしても、それはムリだよ」
「 でしょうね、」
「 で、目をつむる、・・・・するとね、鏡の残像が初めは
あるんだけど、それがだんだん変化してしていくから」
「 え、なんに?」
「 みんな違うんだけど、光だったり、虹のようになったり、
なんかの形に変わっていったり、」
「 ・・・・・」
「 それが、神様にいただいた答え 」
「 メッセージ・・・ということ?」
「 そう、それを戴いたら、また一礼して下がる、
それで、終わり」
「 そのやり方、ダレかに教えてもらったとか?」
「 いや、自分で考えたんだけど・・・
いちばん、いいやり方なんじゃないかと、」
「 そうなんですか・・・・」
多分、ほかのダレも考えつかない、
でも、素晴らしい方法のような気がする、
自分もやってみたいと思うから、
やっぱり、只者ではなかったS君、
少し仕事の、かたづいた妹も
やってきた、
「 ていちゃん、美味しかった~!ありがとうね、
ていちゃんて、こんなコトする感じには、
見えなかったけどな、」
「じゃ、どんな感じよ、」
「 ぇ、そう言われたら・・・困るけど、」
「あのね、やってたんだって・・・ママゴトで、」
「そうそう、メダカつかまえてきて、」
「メダカを?」
「メダカ、 三枚おろしに してた、」
「三枚おろし?、どうやって」
「安全カミソリで、」
「 え、カミソリ・・・よく親が 」
「 だから、こっそりよ、」
「 そうそう、鏡台のひきだしの中から、こっそり
・・・・もっていってたらしいのよ、」
「 お姉さん、知らなかったの? 」
「 6才、はなれてるから、あんまり一緒に
遊んでないの、」
「そうか、ていちゃんて、あぶない子だったんだ、ハハハ」
「 そ~んなに、特別じゃなかったと思うけど、
ねぇ、お姉ちゃん、」
「 そういえば、安全カミソリは、、さすがに
なかったと思うけど、小さなナイフくらいは
使わせてくれてたよ、あの頃の親は、」
「うん、そうだったと思う、使ってた 」
「だから、しょっちゅう、絆創膏はってたけどね、」
「 そう、今も貼ってるけどさ」
話しはつきない、その夜でした、
つづく