里帰り中のお刀の修復です。



ちょうど鮫皮の着せ直しが終わったところです。指し裏側の写真。

以前は外装の機能など全くご存知でない!といったご依頼でしたが、当工房で作った外装を使っていただければ、その違いは一目瞭然です。知れば知るほど、使えば使うほど、違いがわかりますから、ますます刀剣の奥深さを体験して頂けること必定です。

というわけで、柄前の新規作成から3年後の修復です。
三年間で柄巻きがボロボロになるほどですから、よっぽど熱心に武道の稽古に取り組まれたことでしょう。
一般的な使用であれば、10年経っても巻き直しの必要性を感じないのですが・・・。

今回は、前回の巻き藁試斬にも形稽古にもという用途からの変更で、形稽古専用の外装とのご依頼です。
となれば、柄下地の再整形から始めなければなりません。

この鮫皮を着せた段階で、使用感の微調整が終了したことになります。
残るは柄巻きだけ!

最後まで気が抜けない。
そんな緊張感が、このお仕事の醍醐味かもしれません。
日本刀の刀身研磨の真っ最中です。



どうも研ぎが決まらず、内曇工程前後を行ったり来たりしています。

写真では、光の都合上刃が黒く地が白く見えていますが、この先の工程でコントラストが逆転していきます。
肌をできるだけ抑えて研ぎ上げたいので、試行錯誤をしているものの今だ出口が見えません。

大幅に予定が狂っているので、早く踏ん切りをつけたいと思います!
今日は、久しぶりに明日になるまで飲んでしまいました!



私が家に帰れるギリギリの渋谷駅です。
すごい土砂降りですが、私の心は晴れています!

本日のご相談は、記憶の風化が進む東日本大震災の尊い犠牲者の鎮魂と震災復興のシンボルとして、日本刀を作りたいというものでした。
ご相談者様は、自らも被災地のご出身ということで、数々のお辛い経験をされたことでしょう。
何とかお力になれるよう、夢の実現のお手伝いをしたいと思います。
刀剣外装の手に持つ部分(柄前)には、組紐が伝統技法を用いて巻かれています。その下側には、鮫皮と呼ばれるエイの革で補強がされています。

この鮫皮を用いる技法にも、様々な方法があります。
総着せなどと呼ばれ、グルッと一枚の革で巻く方法では、鮫皮の伸縮性も勘案して加工を施さなければなりません。

当工房では、この鮫皮の厚みを極力厚いまま用いることで、柄前の強靭さと耐久性を実現しています。



この鮫皮は1mm強の肉厚のまま、総着せを行なっています(観賞用などの刀剣外装では、この半分ほどの厚みまで裏地をすいて用いるのが一般的です)。

使用感を向上させつつ強靭な外装を作るには、鮫皮の厚み一つにもこだわりをもって工作を施さなければなりません。そのぶん柄下地が薄くなりますので、下地の工作には大変神経を使います。

この肉厚ですと、加工時と硬化時の鮫皮の大きさは一回り以上の違いがでるため、熟練を要します。
錆び付けを開始して、はや1週間が経過しました!
その間、湿気でジメジメしたところに置いて、毎日弄ってやります。

良い錆が定着するように悪い錆を除去しつつ、大切に大切に錆を育てるのです!



愛情をかけて、時間をかけて、表面が良い錆で覆われるまでこの作業を続けます。
白鞘の修復が完了しました!



写真は、白鞘修理の最後の工程『研き』です。

古くなって艶の無くなった白鞘に研草で磨きをかけます。
これにより、表面に艶が出て、若干汚れが付き難くなるようです。

今回ご紹介した古い白鞘を別の刀身に合わせて加工する技術は、悪意のある技術者にかかると大変危険です。
例えば、新しい刀身(現代刀や昭和刀)を古い白鞘に休めることで、「白鞘の時代よりも、刀身の方が新しいはずは無い!」といった錯覚を演出し、あたかも古い刀である様に見せかける輩もいます。
特に鞘書きを生かして加工が施された場合などは、コロッとだまされることがあり注意が必要です。

この記事をご覧下さった皆さんは大丈夫かと存じますが、白鞘の目釘の位置や合せ目のズレなども念のために確認されることをオススメします。
お刀と合っていない白鞘の調整です。

元々刀についていた白鞘なれど、刀身が入り辛い・・・とのご相談です。お話だけをお伺いして考えられる理由は、以下の3通りになると思います。

・白鞘の中に異物が詰まっている。
・白鞘の反りが、何らかの理由で変わった。
・刀身の反りが、何らかの理由で変わった。

この手のご相談で、一番多い原因は「異物が詰まった」ことによる機能の低下です。
中にゴミが入ってしまったり、鞘の内部が刀身で削れて切っ先の方へ落ちてしまっているなど、様々な理由が考えられます。また、お刀を武道に用いる場合、抜刀や居合に用いることで刀身に歪みが生じて、元の反りと変わってしまったという前例もあります。

白鞘に刀身を納めてみると、異物が詰まっている感触は一切ありません。
刀身も改めましたが、抜刀による斬りヒケなどは認められませんでした。
ということは、「白鞘側の変化」ということも考えられますが、経年で形状が変化するということはまず考えられません。その理由は、材料となるホウノ木の歪み(暴れといいます)を極力抑える為、長時間(長いもので10年以上)放置してから白鞘に仕立てるからです。

そこで、一つの仮説として、元々刀身に合っていない白鞘だったのではないか?と考えてみました。

白鞘は、塗り鞘と違って、何度も修復ができるように作られています。
まずは、丸一日水につけて接着面の続飯(そくい)を剥がします。



水から出したところです。
接着部に白い物が見えますが、これは合成接着剤です。
この段階で、もはや伝統技法による工作ではない為、ほぼ仮説は立証されたも同じです。

分解してみた結果、予想通り別の刀身の為に作られた白鞘でした。白鞘自体は、枯れた良いホウノ木が用いられています。
今回は、合成接着剤を全て除去し(木材に染み込んでしまっている箇所は、カンナで削り)、内部に刀身からの錆が移っている箇所を除去し(場合によって漆や膠で補正します)、再度刀身に合わせて掻き入れを行ない、続飯で接着して完成です。

新しい白鞘を作った方が早いですが、今在る物を大切にする心を大切にしたいと思います。
研究中の刀身の研磨です。



ご依頼者様曰く、隕石を用いて作刀されたお刀だそうです。

現代刀の特徴と言えばそれまでなのですが、鉄味は白く、無地肌風の刀身です。
沸付いた互の目調の焼き刃がやけに眠く感じますが、総じて刃紋の眠い刀剣は、武器としての性能が高いことが知られています。

はじめに拝見した時の印象は、「すごい剛刀!」でした。
海部刀を彷彿とさせるデフォルメしたような体配が、そう感じさせるのでしょうか?

現在、この特別なお刀に、最もあった研ぎを施すべく、研究中なのです。
隕鉄の影響もあると思いますが、一筋縄ではいかないじゃじゃ馬です。
最近多くなってきた外国の方からのご依頼です。



拵一式の修復にて付属されていた名品の鍔です。ご覧の通りピッカピカです!

日本には、錆の趣きを愛でる美意識が古来よりあります。
一見錆びた汚い鍔でも、経年による古色が鑑賞のポイントであり、時代鑑定上重要な要素なのです。

最近は、日本人でも鍔や刀身の茎を磨いてしまう人がいますが、絶対に手をつけないでください!
錆を落とした瞬間に、何世代にもわたって日本人が大切にしてきた美意識が失われてしまいます。

これから時間をかけて、この鍔の錆び付けを行なっていきます。
昨日、鉄鋼協会の研究フォーラム講演会を聴講すべく、東工大へ行きました。



東工大へは、学部生時代の共同研究以来です。
今回はかつての専攻分野の生化学ではなく、製鉄の工学的アプローチについての知識修得が目的です。



私は、講義のない休みの校舎が好きです。
古めかしければ古めかしいほど良く、なぜか魅力を感じるのです。

というわけで、一日みっちり従来製鉄法の工学的な解明について、最新のデータと学術的知識をアップデートしてまいりました!

ちょっと専門的な話になりますが、低チタニアのケラ押し法を採用している日刀保タタラの問題点や、三元状態図で示されるスラグ解析の結果など、あらためて工学的アプローチから得られる研究結果を現場に反映する重要性を認識しました。
特に、現代タタラからはズクが出ていない現実や、日本の土壌が酸化したことによる砂鉄の違いなど、大変為になる情報と共に、即作品作りへのヒントになる論文なども頂くことができました。