現在製作中の柄を刃方柄頭側から見た写真です。



既に、鮫皮を総巻きに着せた状態です。
下地が如何に薄いかお分かりいただけるでしょうか?

下地の調整は、そのまま刀剣の使用感に大きな影響を与えます。
そのため、材料の厳選から加工に至るまで、片時も気を抜くことができません。
強度に影響を及ぼさない箇所の肉を極限まで削ぐためには、強い光源を様々な角度から当てて光源が透けるギリギリまで削りこんでいく方法もありますが、基本的には経験がものを言います。

今日はケーキ作りに夢中で、お仕事は一休み!
草木も眠る丑三つ時、ゴソゴソと手を動かしているのは毎度のことですが・・・



今日は、ケーキ作りに挑戦です!

切り株をイメージしたブッシュ・ド・ノエルを作り始めたまではよいものの、生クリームを盛りすぎて何が何だか・・・。てっぺんにゴロゴロしているのはきのこの山です。
きのこでも生やせばそれらしく見えるかな?と思ったのですが、烏帽子岩の周りに漂う漂流物みたいになってしまいましたとさ(笑)
時間を気にせず気ままに進めさせて頂いている軍刀拵の修復です。



やっと部品が揃ってきました!あとは柄縁側の小刻み加工の小切羽と縦刻み加工の中切羽だけです。
なかなかピッタリ合う部品に巡り合えず、残りの切羽は新規に作ろうかとも考えています。

いずれにしても、「いつまででも待ちます!」という豪気な御仁からの注文ですので、妥協せずによい物を探していきたいと思っています。

軍刀の修復ほど、安易な様で難しい仕事はありません。
微妙なタッチの差で、気品溢れる高貴な太刀拵になったり、ジャンク品の寄せ集めにしか見えなかったりします。

本当は、通し番号の刀装具一式を用いて製作したいのですが、戦後70年を経て良い物は数に限りがあり今後も少なくなっていく一方のため、容易な作業ではありません。
本日は、一年に一度の日本刀の祭典?大刀剣市へ遊びに行きました。



会場は毎年、世界中の刀剣愛好家やら武道家やらでごった返して、すごい熱気です。
例年に比べて若干外国からのお客さんが少ないようでしたが、それでも皆さん楽しそうに刀剣に見入っていました。

今年は、旧知の友人たちを刀剣鑑定の世界に引きずり込んでしまった負い目?もあり(笑)、入場券を人数分用意させて頂きましたが、前日までにどうしても一枚間に合わず「余り券ない?余り券ない?」と、子どもの頃スタジアムで見かけた絶対なりたくない大人のような有様でした。

当日の早朝、新進気鋭の甲冑師(佐藤誠孝)さんから、「余ってるよ~!」とのありがたいお申し出を頂き、新宿駅で待ち合わせてガイドブックと入場券を交換。無事人数分の入場券をゲットすることができました!

会場では、友人が見事掘り出し物の刀剣を購入!
友人が買わなかったら、私が買っていたであろう刀剣を抱え、ホクホクの笑顔の友人を見送り、会場を後にしました。

今回も、笑いが絶えない楽しい時間を過ごさせていただきました。
引き続き柄前工作の続きの工程、「鮫着せ」です。

刀装具が完成したら、柄下地を一段掘り下げて鮫皮を着せます。
「鮫皮、鮫皮」と呼んでいますが、実際はエイの革です。



写真は、柄の指し裏です。
総巻きといって、グルッと一枚の鮫皮を巻きつけます。
目釘穴が無い状態の柄下地をご覧になるのは、珍しいかもしれません。

総巻きでは、繋ぎ目がわからない様に合わせるのが、腕のみせどころです!
今回のご依頼は「価格を抑えた工作」をお願いされているため、この程度の完成度です。



柄巻師を称する専門家であれば、さらに繋ぎ目がわからない様に工作を施すのがあたりまえです。

鑑賞用などで、費用も時間も気にしないという場合には、下記の様な技法を用います(秘伝で~す)。



左右の鮫皮の粒の頭を合わせて繋ぎ目を調整します。
この時の左右の水分による鮫皮の伸縮率の違いと硬化後の収縮位置を体得している事が、柄前師の条件です。
繋ぎ目の鮫皮の表面と裏地を、凸凹に加工して接続します。
表面の粒と裏地の伸縮性が全く別物なので、一にも二にも熟練を要します。

今回は特別に秘伝を紹介しましたが、真似してできる方は本職アマチュアに関わらず、ぜひ挑戦してみてください。(私の場合は、毎日鮫皮と見つめ合って体得までに10年かかりました。)

ちなみに、肥後拵の柄前など鮫皮を漆で塗り固める場合は、繋ぎ目を若干開いて設置し、間から漆が下地に届くように塗り込みます。
先日より工作行程をご紹介している柄前です。



刀身に合わせて内側の書き入れを行い、外側の肉置きをご依頼の都合に応じて加工。
柄下地に合わせて柄縁を作成し、茎の櫃穴を穿ちました。


今日までの作業経過を、順を追って再度ご紹介します。



行程が判り易い様に、柄縁側のみ下地を加工した写真。



柄成を整形中の荒削りの写真。
通常は、この写真のように一気に鉋で整形します。



柄下地に合わせて柄縁を製作中の写真。



そして、本日の写真。

今回の工作は、大変貴重な幕末の鞘を生かして柄前をお作りします。
拵全体の調和を図るため、バランス感覚と美的センスが要求される大変難しい作業です。

今月中に納品できるように、頑張りたいと思います。
取り出したるは、銅板です。



約2mm厚の銅板を金ノコで切り出します。



しるしをつけた部分を切り出しました。

この部品がどうなるのか?というと・・・



鯉口金具と思われた方は、ブブ~ッ×。





柄下地に合わせて製作した、柄縁です!
まだ、荒削りで火肌も見えますが、断面図が若干ハマグリ状になり、品をよくするため腰を低く抑えています。
天板に櫃孔がない製作途中の柄縁をご覧になる機会は、極端に限られると思います。

工作行程をよくご存知の方でしたら「あれ?」と思われるかもしれません。通常は、柄縁に合わせて下地を作成します。
刀剣が武士の商売道具として活躍した時代は、刀身と使用者の条件を満たす為に柄前がありました。
そのため、今回の様に刀身に合わせて製作した柄下地を、使用者の手の内に合わせて整形してから柄縁を作っていたと考えられます。
「柄前は、柄縁依存的な形状になっている」と断言する研究者もいるとおり、柄縁が刀剣の使用感に影響を与えていることは間違えありません。
そこで当工房では、特に使用にこだわりがある依頼の場合、柄下地を作ってから柄縁をお作りしています。

次は、櫃孔を穿って、拵え全体とのバランスを調整します。
15日(日)に、刀剣勉強会を開催しました。



毎月行なっている刀剣勉強会ですが、今回は特に「武道家の為の勉強会」という方向性で開催いたしました。

流派、連盟、経験年数、全てバラバラの中で、共通点は武道をたしなみ刀剣をこよなく愛するという、最も純粋な共通点でつながっている皆さんと楽しい時を共有させて頂きました。

当日のスケジュールは下記の通り。

10:00~ 喫茶店にて、「刀剣鑑賞のいろは」
12:00~ 飲食店にて、昼食をとりながら初歩講義「鑑賞作法など」(安藤先生)
13:00~ 横浜刀剣会にて、入札鑑定会に参加。(入札鑑定中も、初心の方には別途講義を開催)
15:30~ 喫茶店にて、「武道と刀剣について」
17:00   解散

入札鑑定会では、旧国宝指定の上古刀など、見応えのある刀剣を手にとって拝見することができました。

次回は、当工房或いは鎌倉周辺にて、実施予定です。
参加は無料(資料がある場合には、資料代要)、楽しむことを目的に、定期的に開催中です!
日本刀は美しい!

不思議な事に、美的センスを取っ払って「実用的な外装を作ろう!」、「刀身を生かす外装を作ろう!」、「身体の一部になるような外装を作ろう!」と思えば思うほど、結果美しい外装に仕上がる気がします。



今し方、完成したばかりの柄前です。
武道用途の現代刀に着せますが、目的に合わせてムダを省き実用一辺倒に作りこみました。

日本刀の美しさの根源は、「実用の美」に他ならないと私は思っています。

日本刀は、世界一の刃物などと言いますが、世界一使い手を選ぶ武器でもあります。
つまり、熟練した武道家でなければ、刀剣を生かすことができません。
「実用の美」とは、ムダを省いた刀身と使い手の熟練した技術、それぞれが美の境地に達して初めて機能します。
そのため、両者の力を最大化する装置こそが拵えの顔に値する柄前なのです。
幕末から明治初期にかけての青貝散しの鞘です。



自然な青貝の反射が目を引きます。
大変美しくおもむきがあり、武家の美意識を垣間見る事ができます。
技術が途絶えており、二度と作れないという意味でも大変貴重な作品です。



そして、こちらが現代の青貝散しです。

粒の大きさに違いはありますが、同じ青貝を蒔いています。(携帯のカメラで写真を撮ると、同じように写ります。)
同じ貝殻を用いているものの、肉眼では、現代の物は反射色が多彩で青ばかりか赤や黄色といった様々な色が均等に混ざっていて、慌ただしく品位に欠けます。
本来は、青を基調としなければおかしいのですが、同じ材料を用いても再現は難しく、その理由はよくわかっていません。

貝の種類が違うのでは?といった話も聞きますが、私は用いられている漆の違いに原因があるのでは?と思っています。
江戸期の塗りは、純国産の漆を用いており、経年により透明度を増し、のちに赤味がかった鈍い光を宿します。現代の漆は、大陸産が大部分を占め、使用したことがある方はお判りと思いますが、とにかく臭いが違います。また、混合されている溶剤?テレピン油?も、本来は用いていなかったのではないでしょうか?

可視光のスペクトルは、360nmから830nmです。
現代の青貝散しでは、その全ての波長が含まれていることから、透過率を考えると極めて透明度が高いと言わざるを得ません。もし、江戸時代の青貝散しを再現するならば、380~480nmの波長を反射するように漆の吸収スペクトルを調整してやる必要があります。
恐らく、漆が紫外線に弱い性質と関係があると思いますが、この辺りの精査は研究者に任せたいと思います。