日本刀の刀身は、金属の部品で固定されています。

その部品はハバキといって、一振りに一つ付属しています。

 

手前のハバキが木製、奥が銅製です。それぞれ、木ハバキ、銅ハバキなどと素材の違いに合わせて呼び方が変わります。

厳密には、銅無垢の単一部品で作られているものを、銅一重ハバキなどといい、他にも二つの部品で出来ていて表面を厚手の金箔で巻いている物などは金着せ二重ハバキといった要領で、名称が変わります。

 

ところで、なぜ木ハバキを作るのか?というと、拵えの保管用に刀身の代わりにこれまた木製の刀身を作って、拵え一式を着せた状態で保管するのですが・・・。

 

この木製の刀身をツナギといって(木刀身ではない)、木ハバキはこのツナギの付属品なのです。

 

力を入れたら直ちに壊れてしまうほどもろい木ハバキですが、金属製のハバキを作るよりも工作がとっても楽しいです。ギリギリの力加減で繊細に作らなければ製作中に割れてしまいます。猛烈な集中力を要する工作なのですが、難しい仕事ほど燃えます(笑)。

刀剣の寝巻きに該当するものを、白鞘とか休め鞘などと呼びます。

使用しない刀剣は、最も適切な保存方法として、この白鞘に納めて保管することが良いとされています。

 

今回は、そんな白鞘の工作です。

 

私の最も苦手な工作ですが、今回はサイズも小さいので製作させて頂きました。

 

途中の工程までは、通常の鞘の製作と根本的に変わりませんが、使用するホウノ木の部位や必要最低限の長さで作るなど、若干の違いもあります。

 

白鞘の製作は、本来鞘師さんのお仕事です。白鞘専門の職方さんの腕には遠くおよびませんが、保存が目的ですので機能性に重点を置いた工作にて、よしとしたいと思います。

蒸し暑い日々が続いています。

外出時には、十分な水分補給と適度な塩分を摂って、 熱中症にならない努力を怠らないことが必要だといいます。

 

 

そんな猛暑の中、久々に都内へ・・・。

慣れない事をするものではありませんね、新橋にたむろする群衆の会話内容が全く頭に入ってきません。こっこれは熱中症の兆候では?っと不安に思っていると、ほぼ全員中国人?韓国人?でした。

爆買い終了というも、まだまだアジア圏からの観光客は絶えることがないようです。

 

 

ちなみに新橋の語源は、 1710年(宝永7年)に朝鮮からの聘使の来日に備えて、日本の威光を顕示するために、芝口御門が設けられたことに由来するそうです。

ということは、新橋は今も昔も観光客のために使われることに変わりないのかもしれません。

錆身の修復です。

 

刀身の修復は、研摩意外に方法がありません。ということは、修復を施せば施すほど刀身は痩せてしまいます。終いには肉がなくなり用を成さなくなってしまうので、むやみな研摩は破壊行為にも繋がります。

 

つまり、刀身にとって良い修復とは極力研がないことですから、愛刀家は常日頃から錆びさせない努力が必要になります。

きびしい言い方ですが、日頃からの手入れが出来ない方は、文化財保護のためにも刀剣の所有を控えたほうが無難です。

 

今回は、鎧通しと呼ばれる平造りの短刀身です。

 

鎧通しとは、 戦場で武者どうしが組打ちで戦った時に、相手の鎧の間から止めを刺すための短刀です。通常は、写真の様に分厚く鋭い体配をしています。この度の刀身も、元重ねが1cmちかくあり大きな針のようです。

現在製作中の拵えです。柄前が一足先に完成しました!

 

 

限りなく深いミドリ色を再現するために、何度も染色を繰り返して目指す色に近づけました(染色の化学)。

 

 

パッと見は黒の柄糸ですが、太陽光などでは深みのある深緑色を楽しむことができます。こういった個性の演出も、フルオーダーの楽しみの一つです。

 

 

前回の漆黒の柄巻きともまた違ったおもむきがあるので、雰囲気がガラッと変わります。

この微妙な違いは、さほど大きなものではない様に感じますが、大会などで大勢の剣士が集まる場所では、ずば抜けて違いが際立ちます。規格品の柄糸と染色を施した柄糸の大きな違いです。

刀剣外装の調整が終わりました!

 

日本刀の使用感に大きな影響を与えているものは、外装です。

特に柄前は、使用者と刀身をつなぐ唯一の装置ですので、本来高度な機能性をかねそろえています。

しかしながら、昨今普及している柄前は、押し並べて量産された規格品が多く、柄前の奥深さ・使用者に合わせた微調整の重要さといったものが一般的にはあまり理解されていません。

 

武道の高段者でも、愛刀の外装を模造刀の拵えで間に合わせている方がほとんどで、中には刀剣が何たるか?外装が何たるか?を全く理解しないまま真剣を使い続けている人も多くいらっしゃいます。毎年、世界中の道場で発生している不慮の事故は、危険に対する慣れと安全性を欠いた外装の使用に起因しているケースが大多数です。

 

 

今回のお仕事は、量産品の柄の調整です。一度、柄巻きを解き、鮫皮を外して柄下地の補強と微調整を施し、再度組み上げました。女流剣士の愛刀ということで、柄の形状(柄成り)を女性用に調整しました。また、諸捻り巻きの木綿柄糸を、正絹にて諸摘み巻きに変更しました。長く使って頂いて、普及型の外装との違いを体感して頂ければ・・・と思います。

 

 

刀装具も現代製の鋳物ですが、バランス調整が出来ないものが多いので、極力使用を避けて頂きたいと思っています。目貫の位置も若干変更しました。

 

*:規格品の外装を否定するつもりはありません!圧倒的にコストパフォーマンスに優れていますので、武道の入門用としては十分ですが、観賞用の刀剣や一定以上の経験者であれば、ご自身の品位を下げかねませんので、こだわって頂きたいところです。

昨晩、徹夜で下リンクの記事を書いてみました!

「目貫の向き」(Yahoo!Japanブログへ)

ダラダラと長いだけの投稿ですが、拵え製作時のご参考になりましたら幸いです。

というわけで、最後までご覧くださった方々、ご拝読ありがとうございます!もう少しだけお付き合い下さい。というわけで、出題です。

 

この目貫の表裏を当ててください!

 

梅の図柄の目貫。

 

ちょっと分かり難いと思いますので、次にカラー写真をご覧ください。

 

左の目貫は金色絵され全長51mm、右が銀で52mm。

 

分かりましたでしょうか?正解は、銀色絵の右の目貫が表、左の金の目貫が裏でした!ちなみに、入手当時は江戸期の柄前に組み込まれ、健全な柄巻きでしたが、表と裏が逆(逆さ目貫と言う)に設置されていました。おそらく、ご依頼者(使用者)と相談の上、当時(幕末?)の柄巻師があえて逆さ目貫に組み込んだものと思われます。

ちなみに、金が裏!とどうして言い切れるのか?というと、同時期の意匠の目貫をもう一セット。

 

 

こちらの目貫の場合、より一層分かりやすく金色絵の目貫の花が後ろを向いています。サイズも3mmほど小さく、金の目貫が裏側であることがわかります。

様々な解釈が出来るとは思いますが、大変深い意味を持っており、味わい深い作品です。

寝ても覚めても刀剣一筋!といった偏った人間は、意外に多いと思います(勘違いならごめんなさい)。ところが「刀剣」というと、どうしても日本刀上位主義に走ってしまうのが偏った人間ならでは?の思考回路です(笑)。かく言う私めも典型的な偏った人間なので、「刀剣」と聞いてイメージするのは、日本の打刀なのです。が、何も日本刀ばかりが刀剣類ではありません。

 

こちらは伊達政宗公(1567年~1636年)の愛刀で、支倉常長が献上したと伝えられる短刀類です。インドネシアの伝統刃物クリスが、当時の日本にも渡来していたことがわかる、歴史的にも貴重な資料です。

 

次に、ハプスブルク系の宝刀類をご紹介します。

 

こちらは、ボヘミヤ王オタカル2世(1230年~1278年)の愛刀。鎌倉時代にドイツで作られた後期ロマネスクの儀式用の短剣です。両刃の刀身で、中央部に樋が彫られ、中国剣にも見える形状です。全面に鍛肌が認められ、茎には槌目が残るなど、当時のヨーロッパの鍛造技術の高さがうかがえる貴重な一振りです。

 

こちらは、マクシミリアン2世(1527年~1576年)の愛刀。室町時代(永禄期)にイタリアで作刀されました。当時のヨーロッパでは、片刃で刀身が幾分湾曲した鎬造りの刀剣を「コルテラッジオ」と呼び、ローマ風と考えていました(日本刀もコルテラッジオに分類されます)。16世紀の宮廷では復古調が流行し、ローマ様式?の鎬造りの刀剣が好まれました。

 

こちらのゴージャスな御刀は、ドン・ファン・デ・アウストリア(1547年~1578年)の愛刀。室町時代(天文~天正期)にイタリアで作刀され、神聖同盟とオスマン帝国との戦いの英雄ドン・ファンが愛用しました。当時の剣術の流派では二刀を用いたため、左手用の短剣も付属されていましたが1873年の盗難により紛失しています。写真では判りにくいですが、刀身の鍛えは見事です。

 

以上の刀剣類からは、よく練れた鍛肌が認められます。特に、ヨーロッパの刀剣類からは、かの地が如何に高度な鉄文化を培ってきたかが一目瞭然です。インドネシアでは、国立博物館収蔵の国宝指定刀剣類を手にとって調査させて頂きましたが、基本的には柾目を基調にした積層鍛造鋼であることから、古代インドに起源を持った作刀技術が基になっていることがわかります。

 

と書き始めるとキリがないのですが、世界中に刀剣及び付随する文化は確かに存在します。その中にあって、日本刀の存在感が際立って目立つことは日本人としてうれしいですが、日本刀の楽しみ方も群を抜いて奥深いものがあります。

 

ご興味のある方は、ぜひ最寄の刀剣勉強会へ足をお運び下さい!

毎度、ご来訪頂きありがとうございます。日本全土もほぼ梅雨明けし、いよいよ夏真っ盛りへと突入です!昨今、室内で日射病に倒れる方が増えているそうです。こまめな水分補強で体調管理にお気をつけください。

 

さてさて、日本刀というとどうしても刀身に目が向きがちです。美術館などでガラス越しに見る名刀は、どれも刀身のみの展示ばかりで、辛うじて数振りの拵えの展示をみる程度です。それらの名刀は、展示の用に供されていない時は、白鞘とか休め鞘と呼ばれる白木の木刀のようなものに納まっています。石川五右衛門の刀と言えば、同年代の方々は何となく想像できると思います(笑)。

 

 

中には、白鞘拵などという方もいますが、白鞘はあくまで刀身を保存しておくための収納具であって拵えではありません!

当然、外装としての機能はありません(収納具としての高い性能はあります)ので、白鞘に納められた刀剣をアニメの様にチャンバラの真似事に用いることは、お怪我をされることもありますのでくれぐれもおやめください。

 

刀身を武器や武道具として用いるためには、刀身の能力を引き出す装置すなわち拵えが必要です。拵えは、本来外装職人が一振り一振り刀身に合わせてお作りします。どういうわけか、戦後以降「刀剣」というと刀身ばかりが注目されて外装の重要性が軽視されてきた感があり、巷の現代拵えは性能を持ったものが著しく少ないのが現状です。

 

そんな拵えですが、刀身と使用者を繋ぐ唯一の装置であって、特に柄前の形状一つで刀剣の使用感が大きく変わります。中でも、拵え工作の最終工程に位置する柄巻きの重要性は驚くほどです。

 

 

柄糸の素材や色、巻き方、目貫の位置などを変更することで、意匠性や使用感の改善、さらには安全性の向上も補うことが出来ます。

日本刀の外装に見られる特徴の一つに、「柄巻き」があります。

「柄巻き」とは、刀剣外装の柄の部分に平紐などを巻いたものですが、特に武道などで刀剣を用いると劣化が進みやすい箇所でもあるので、定期的に巻き直す必要があります。

 

江戸時代には、年末に柄糸を巻き直して新しい柄巻きを施した愛刀と共に、新たな気持ちで新年を迎えたといいます。

 

こちらは、現在巻き換え中の柄前です。

 

柄巻きのご依頼というと、ただ柄糸を巻き換えるだけのイメージがあるかもしれませんが、そう簡単な話ではありません。

特に武道などで多用される現代刀に付属している拵えは、十中八九、日本刀のカタチを模した粗悪なものが普及しています。

そのため、柄巻きのご依頼時には、柄糸を外し鮫皮を剥がして下地の状態を確認しなければ、危なくて納品できたものではありません。これは、時代拵えの修復時でも同様で、カタチだけの工作に終始するようでは、実用の美に迫ることはできないと考えています。

 

本来、刀身の茎は一振り一振り形状が違います。当然、柄前も刀身に合わせて個々に製作しなければ、安全かつ刀身の性能を生かすことは難しいはずですが、現実的には価格を抑えて量産された規格品が巾を利かせているというのが現状です。

 

当工房で特に難しいご依頼の一つが、劣化版とでも言うべき規格品の修復だったりします。一から作り直した方が圧倒的に楽なため、どこから手をつけて良いのやら・・・、毎回頭を悩ましてしまいます。

この問題の根底にあるのが、現代的思考の品質の概念と伝統工芸の考え方の概念の違いなのではないでしょうか?