「あいみょん時計、胸に残る背徳。」 | 10月は黄昏の国、僕の国。

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心 う つ り ゆ く よ し な し ご と を。

読んでくださる方へ。

ぜひ、お好みのBGMやお茶をご用意ください。

すこし文章長めの「恋話」ですので。

 

BGMをご用意しています。僕のお気に入りの曲たちです。

特設ページにジャンプします。よろしければどうぞ。

 

 

「あいみょん時計、胸に残る背徳。」

 

僕のなかでは、ほんのすこし前の話。

それほどに痛みが残ってる。

 

 

彼女は相手の懐に入るのが上手な女性。

いや僕から見て、少女に近い女性だった。

 

彼女は派遣で僕の部署に配属され、主に雑用をお願いしていた。

 

この女性が僕のプライベートを詮索してくるようになった。

それまで仕事以外の話をしたことがなかったので

僕はすこし驚いていた。でも、

なんとなく見えた誰かの代理で質問してる。

 

「じゃあ、交換で」

僕がひとつ答える代わりに、彼女の知る情報との交換を条件にした。

「奥さんと別れた理由は?」

「もう昔の話、それに知ってる人は沢山いるよ。

 周囲に聞いてみればいい。別の質問どうぞ」

 

 

僕が代わりに求めたものは「僕に有益と思われる話。噂でもいい」。

彼女から提供される情報は、社内恋愛ばかりだった。

 

なかには禁断話があって、それは僕の興味を引いた。

役員重役の裏事情は、地雷を踏まないだけでなく

うまくフォローできれば信用される。知っていて損はない。

 

それにしても女子って想像以上に情報持ってる。ちょっと怖いな。

ときどき続くこんな情報交換、気づいたら半年経っていた。

 

 

ある日彼女は、交換できる情報がないけど、、と話してきた。

じつは僕も過度の交際情報でお腹いっぱい。どうしよう?

 

「君の母親の生まれ年はいつですか?」

これは僕が、女性の年齢を推察するのによく使う質問。

この女性、派遣社員だから僕は年齢知らされていない。

 

「そんなのでよければ、いくつでも質問どうぞ」

即答で返してくれた。

「では、もうひとつ。兄妹の構成はどんな感じ? 何番目?」

ふーん、計算するとおおよその年齢が出てきた。

20代前半? 半ばあたり? 見た目通りやっぱ若いな。

 

それで君が知りたい質問は何?

「最近の恋愛事情です。彼女さんとはいい感じですか?」

あー、と声が出て言葉に詰まる。どう説明しよう。

 

 

「すこし前、彼女とケンカ別れたんだ。

その後、ほかの女性と交際したんだけど

いろいろあって結局、元彼女と復縁したんだ」

 

一呼吸して話を続ける。

 

「元カノに、この空白期間に何があったのか問い詰められて

何もない、ただ前髪にキスしただけ。と答えたら

彼女に浮気者って凄くキレられたんだ。

別れてる間に、前髪だけだよ浮気者って酷くないか?」

 

目の前の女性「ええ″〜っ!」と奇声をあげ

何も答えず小走りで消えた。

僕、なんかまずいこと言ったんだろうか?

 

 

この女性の雰囲気が変わったのはこの頃から。

もう情報の交換などせず普通に会話して

ときどき飲みに行く仲になっていた。

 

年齢差から会話上、父と娘みたいになってた。

甘え上手というか奢られ上手。まぁ楽しかったよ新鮮で。

 

「私と飲んでて、彼女さん怒りませんか?」

大丈夫。先週ケンカ別れしたから気にするな。と笑って答えた。

 

「じゃあ、今度デートしましょうか?」酔った顔でいう。

バーカお前酔いすぎ。会計済ませて店を出た。春の夜風が涼しい。

 

「お、月が綺麗だぞ」見上げた僕の胸に入ってきた彼女。

 

「どうした?」なにも答えない。

「どうだ、お父さんと同じ加齢臭するだろ?」笑って言ってみた。

 

「お父さん、ちっちゃいとき死んじゃった。。。

 お父さんとか思ったことないから」

僕は言葉を失った。

こんなとき僕はどうしたらいい? 

 

彼女の前髪から甘い花の香がした。

僕は香りに弱いのかもしれない。

 

なすべきことをしろ、、。

 

咲いた花が夜、花弁閉じるように

僕の腕が彼女を強く抱きしめる。

彼女は小さく声を漏らし、姿勢を変えて

両腕を伸ばし僕の首を抱き寄せてきた。

 

. . いいのか?

確かめたくて僕は瞳を探した。

前髪で彼女の表情は隠れていた。。。

 

 

若いって、こういうことか。

彼女は好奇心旺盛で、エネルギーが溢れていた。

金曜の夜は終電でもなく、朝方まで遊んでいた。

 

数回同行したが、

彼女と友人たちは無限の体力を持っているように見えた。

見聞きするものが新鮮で楽しそうだ。

思い返せば自分にも過去そういう時期があったな。

 

対照的に衰えを自覚する自分がいた。

僕は体力だけでなく思考もおじさんになってる。

それほどの年齢差だった。

 

彼女は優しい子だった。

疲れて終電で帰る僕に合わせてくれた。

不満いう友人たちを置いて、一緒に帰ってくれた。

 

次第に僕は疲れて、休日の外出辞退することが多くなった。

それは確実に僕らの溝になった。

 

 

彼女は派遣契約が切れて連絡が来なくなった。

僕からも連絡しなかった。

きっと考えは同じだと思ったから。

 ・

 ・

 

おじさんと少女、そして僕らを記録するカメラたち。

 

僕のなかでは

「岩井俊二と藤谷文子の世界」なのに、「ほぼ同じ年齢差」なのに

映画と現実の差を、まざまざと見せつけられた。

 

お前が岩井俊二の気分とかどうよ? と思うよね。

あの映画ほど刺激的ではないけれど

自分に酔っちゃうほどに

この年齢差って僕には十分カルチャーショックだったんだ。

 

機会があったら君も「年の差恋愛」してみるといい。

新しい刺激を得る反面、努力を怠ると簡単に崩壊しそう

まるで薄ガラスのような世界。

一回り半は、想像以上に世界が違いすぎた。

 

終わってみて思うこと。

将来、真の大人の女性になったとき

彼女は、僕という大人をどう思うだろうか?

彼女は、結婚相手にどんな男を選ぶのだろうか?

 

 

 

 

「そういう時計流行ってるの?」

 

彼女の腕に金色のデジタルカシオ。クラシカルなデザイン。

「あいみょんが着けてるから真似したの。会社で何人か持ってるよ」

そうなのか? なんか不思議。

 

かたや僕の腕に、おじさんの安い時計。

高価な時計は「できる男感」出すけど

所有者が時計の価値に劣る能力だと、逆にすごく恥ずかしい。

 

安い腕時計で僕をあなどれ。

そしてギャップに驚け。

そういう性格の僕。

 

 

あそびで腕時計並べて写真撮った。

笑顔や変顔の恋愛写真よりも

僕らをよく表してる。当時そんなふうに見えた。

 

 

同じカシオ時計、同じ時刻を表示しているのに

ふたたび写真を見ると歩む時間が違うと感じる。

この写真撮った時、すでに

僕らの別れを暗示していたのかもしれない。

 

あの日々からちょうど1年。

わずか1ヶ月の短い恋。

大人の僕の胸に、背徳残る恋のお話でした。

 

 

(画像はiPhone&黎明期のデジタル一眼&

 知人のスマホで撮影しています)

 

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