「艶かしい香りの記憶」 | 10月は黄昏の国、僕の国。

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「艶かしい香りの記憶」

 

この話には前編があります。

よかったら先に読んでください。

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「癒され、眠りたい」(2023年12月13日 公開済み)

 

 

アトマイザーから吹き出された瞬間「!?」この香り知ってる。

脳内すごい速度で記憶検出が始まった。

誰? どこ? いつ? 数秒後に見つけ出した。

数年前の暖かい記憶、優しい女性。そして

僕を包んだ白い肢体も。。。

 

先週書いた記事「癒され、眠りたい」につづく話。

 

購入した香水ゲランに、呼び起こされた記憶の彼女。

香りってほんと凄いと思う。

次々に記憶が掘り返される脳内、僕的にタイムトラベル状態。

 

 

初めての日のことを思い出す。

 

彼女の上司とは職務で旧知の仲。年齢もほぼ同じ。

ある日、飲み会に誘われた。

奴は数人の部下を連れてきた。その中に彼女がいた。

 

「あいつ、お前の離婚を知ってから、お前の話ばかりする」

彼女が席を立った際そう切り出してきた。

僕は彼女と仕事で何度か会っていた。

頭の回転が早く、すこし垂れ目で、笑い方が特徴的で

混成チームの癒しになってた。

 

新宿で解散する際、奴が耳打ちしてきた。

「お前なら、オレは干渉しない」

解散したのに彼女は横にいた。同僚、上司見ているのに。

そういうことか。。。

エスコートしながら、ちゃんと彼女に向き合おうと思った。

でも、、、まだ半信半疑だった。

 

 

朝、目覚めたら彼女は消えていた。

サイドテーブルに残されたポストイット。

書かれた言葉、昨夜が夢でない証拠。

 

出勤で乗り換えた山手線ホーム。

芳香に一瞬、全身が止まった。あわてて周囲を探す。

そう、彼女の香りと同じだった。

「いますぐ逢いたい、声が聴きたい」そう思ってる自分がいた。

 

その香りが、いま手元にある。

ゲランのミツコ。記憶の香りの名を知る。

 

漂う香りの中、彼女の個人HPの存在を思い出した。

検索して見つける。閲覧パスワードを求めてくる。

もちろん記憶してる。大切な言葉だから。だったから。

 

記事を読む。

僕らが別れた数日後、更新が止まっていた。

文字を追う目が歪む、涙で滲む。

 

彼女の書いた文章が記憶のディテールを補完する。

 

癒された笑顔、すこし低いけど知的で繊細な声。

大観覧車から見た港町。アイコンタクトだけで自然に交わしたキス。

プリクラで撮った顔がお互い修正されて爆笑なんだコレ。

旅客船のまえで抱き寄せた時「顔が近いよ」戸惑った反応。

僕からプロポーズした。本当に好きだった。

 

そして、

別れた理由も思い出した。

彼女泣いてた。なんどもゴメンって書いてた。

文章読んで僕も泣いた。浴室で声を出して泣いた。

 

文面に彼女を案じ、開いたiPhoneのアドレス帳、

静かに閉じる。これでいい、このままでいい。。。

 

 

僕の手の中に残ったアトマイザー。彼女の記憶の欠片。

この香水が「凪いだ湖面に投じられた小石」のように

何かのトリガーになりそうで心配。

 

それほどに、僕の心がざわついている。 

 

 

(画像は黎明期のデジタル一眼で撮影しています)

 

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