大阪。東京。茨城。愛知、等々……。
全国を、転々とする会社の社長が、保護委託先の俺の保護司。
周囲りは、知らない人だらけ。でも、寂しくなんてなかった。
こんなことが【孤独】だとすれば、幼い頃からこれまで、幾度となく俺が感じてきた【説明し難い気持ち】のほうが、よっぽど苦しかったからだ。

ただ、やけに母親が気がかりだった。
そこで、毎月の給料の3/4を、母親に仕送り続けた。
あちこち現場を転々としても、寝る場所はあるし、ご飯もある。だから、とくに【お金が必要だ】と感じることはなかったから。

朝5時に起きて、職人達の朝食の準備をする。
職人達の朝食終了後、急いで俺の朝食。
その後すぐに、車のエンジンをかけて、職人達を待つ。
仕事中は、殴られながら覚えさせられる。今の時代なら、立派な【パワハラ】だ(笑)
いや、立派な【暴行罪】だな(笑)

仕事が終わると、急いで宿に戻り、風呂と夕食の準備。みんなが食べ終わって、やっと俺の夕食。たまに、酔っ払った職人から、説教も聞かされる。
そんな暮らしだから、お金を遣う暇がない。

毎日毎日、同じことの繰り返し。
今なら、それが【当たり前な日常】だと理解できるが、この頃はまだ15歳。何かしらの【刺激】を求めていたから、満足できない日々が続いた。
自分自身が【保護観察の身】であることも忘れて………。

ある日の仕事中、社長と喧嘩をして、殴られたので殴り返して、軽く怪我をさせてしまった。
社長と言っても、保護司。
『警察に言うのは、やめとく。そのかわり、もうお前は帰れ』
クビになってしまった。

実家へ帰る気にもなれず、古巣の街に戻り、先輩達と一緒にアパートを借りた。
先輩達は、自分の家があるから、実際には俺の【独り暮らし】だ。

毎日、薬漬けのような日々。
【刺激が欲しい】と思ってたくせに、何をするわけでもなく、ただただ薬に身をまかせ、バイクを乗り回し、喧嘩なんかに明け暮れるだけ。

ただの【ろくでなし】だ。

結局、中学の頃と変わらず、【何をすればいいのか分からない】が、俺の【生き方】だった。
消火器を撒き散らしたことで、俺はまた逮捕された。
が、学校内の出来事なので、すぐに帰らされた。学校側が、【世間体】を気にしたからだろうか………?
いずれにしても、とりあえずは【釈放】された。

ところがそれ以降、俺が学校に行けば、教師は警察を呼ぶようになった。
そして警察は、俺をパトカーに乗せ、近くの派出所で保護。親を呼び出し、連れて帰らせる。
その繰り返しだった。

そんな調子だから、周囲は余計に、俺を避けるようになった。
そして、耳に聞こえてくる連中の会話は、【どこを受験するか?】ばかり。

もはや俺は、【重たい空気】のような存在だ(笑)

ある日、家庭裁判所の命令で【保護委託】の処分が出た。
ようするに、周囲に悪影響だから、この街を【出ていけ】と言うこと。
ふざけんな❗こんなところ、こっちから出てってやるよ❗

すべてに唾を吐いた。
家にいても、両親は喧嘩ばかり。
【何か】をみつけたかった。俺にしかできない【何か】が欲しくて、一人、この街を出た。

きっと、幼少期の頃の環境や生き方が、俺に【諦める癖】をつけたんだろう。
ただ厄介なのは【諦める心】は、【投げやりな生き方】や、【自暴自棄】と言う【破滅的・破壊的な生き方】として、行動に表れた。

この街にも、おさらば…………。
全然、泣けなかった。子供の頃に観たTVドラマじゃあ、絶対に【泣くシーン】なはずなのに。かといって、清々してたわけでもない。虚しさもない。まるで【無感情】みたいだ。

数人の、他の中学の不良仲間が、見送りに来てくれた。
『じゃあな。』
それだけの言葉を交わして、俺は保護司に連れられ、列車に乗った。

【俺の人生、たかが知れてる】……。
そんなことを思いながら。
中学3年になった俺は、最初の1ヶ月ぐらいは落ち着いていたし、真面目に学校へ通っていた。
クラスの友達と【普通の会話】を楽しんだり、あまり聴き慣れない【歌謡曲】と言うものを、友達に聴かせてもらったり。

『これが、学校生活なんやな~』などと思いながら、そこそこエンジョイしていた。

ところが、周囲の友達の話題が【受験】に集中し始めると、またまた、話題が合わなくなっていった。
いくらその頃、【真面目に学校へ通っていた】と言っても、それ以前が【最悪】だし、見てくれは相変わらずの【不良】だし。
かりに、俺が【不良】でなかったとしても、中学生になる直前、親父から

『家には、お前を高校に行かせる金なんか無い。だから、中学を出たら働け』

と、言われていたから、そもそも【進学できない】と知っていた。

しかも、今までそこそこ、仲良く話してた連中でさえ、俺を避けるようになった。
内申書が悪くなることを、恐れたからだろう。
俺はまた、説明できないような孤独を感じ、学校へ行かなくなった。

毎日のように酒を飲んだり、シンナーを吸っては、バイクで走り回った。街に出かけては、喧嘩やカツアゲを繰り返した。
何度も警察に捕まったが、何だかんだと言い逃れては、懲りずに同じことを繰り返した。

何を、どうすればいいのか?
誰と、どうすればいいのか?
何処で、何をすればいいのか?

わからない。何もわからない。
やりたいこともない。【受験】にも縁がない。
避けるだけの教師。
避けるだけの友達。
避けるだけの大人達。
ただ、わからなかった。

ある日、学校の廊下で、消火器を撒き散らした。学校に警察が来て、現行犯逮捕された。

俺の選ぶ道は、いつも【鉄格子の中】だけだった。