かなり、冷え込むようになってきた。
この街は、俺が育った街とは違って、寒さがハンパじゃない。
それこそ、俺が暮らすには厳し過ぎる環境。
でも、故郷に帰っても同じこと。俺は、こんなろくでなしだし、何処に行こうと【冬】は【冬】だ。

ある朝。
目を覚ました俺は、少しだけ残ったウイスキーのボトルに口をつけ、一気に飲み干して、布団からでた。
もう薬は、まったく無い。手に入れたい気もするが、こうも寒いと、何一つやる気にならない。
酒を飲んで、身体を温めるのがやっとだが、もう、酒も底をついてしまった。
アパートは、1階と2階の2部屋を借りていて、1階にはタケルが住んでいた。
『タケルは、まだ寝てるかな?』
ぐらいの気持ちで、俺は小銭を握りしめ、缶コーヒーを買いに出た。
吐く息は白く、耳と鼻が痛い。缶コーヒーを2本買い、アパートに戻り、タケルの部屋のドアを開けた。

そこには、あったはずの靴は無く、タケルの姿も無くなっていた。
『トイレにでも行ったかな?』
と思い、しばらくタケルの部屋にいた。しかし、帰ってくる気配がない。

街に出て、駅前辺りを探してみた。小さな街の、商店街。クリスマスの飾りつけが、あちこちに光ってる。街を彷徨くヤンキー連中に、タケルのことを聞いてみたが、誰もが【知らない】と言う。

3時間ほど歩いただろうか。
ある知人から、タケルがフラフラと、列車に乗るのを見たと聞いた。
タケルはモヒカン頭だから、すぐに分かったと。タケルは確実に、【薬の効き目】だったらしいと。

『タケル………。』

ヤツは、消えてしまった。
俺は、知らない街で【独り】になった。

15歳の頃、独りで生きてたのとは、勝手が違う。
言いようのない孤独感が、俺を襲いはじめた。
俺は、どうなってしまうんだろう?
今さら、何ができるんだろう……。


毎日のように、タケルやメンバーと薬をやり続けてた。
仕事も、とっくに辞めてた。

酒を浴びるほど飲み、街に出ては喧嘩の繰り返し。
不思議なことに、マルは薬をやらなくなった。理由は、【つまらないから】だったそうだ。でもマルも、これといってする事がないから、俺達と一緒に行動してた。

酒を飲んでは、街で暴れる。これじゃまるで、故郷で暮らしてた頃と変わらない。
ただの【ろくでなし】の日々だった。何一つ満足しないし、かと言って、それを誰かのせいにする気もない。
ようするに【投げやりな性格】が直らない。当然ながら、葛藤もあった。でも、20年余り培ってきた性格は、簡単にはいかない。
それほど俺の業は、あまりにも深く、どうしても【諦めよう】とする。

ある日の夜、部屋で薬をやってると、突然、ドタドタと、何人かの靴音がした。
ガラッ!とドアが開くと、警察官がいた。俺は、幻覚かと思ったが、すぐにそれが【現実】であることに気付いた。

パトカーに乗せられ、警察署へ。

数時間の取り調べの後、帰らされた。
もう、溜息も出ない。結局いつも、こうなってしまう。それもこれも、悪いのはすべて俺。そんなことは、誰に言われなくても解ってる。だからこそ、そんな【自分自身】に、余計に腹が立つ。
いくら腹が立っても、【今さら、どうにもならん】と言う気持ちが強まって、自暴自棄に拍車がかかる。

いっそのこと、消えてなくなりたい気分。でも、それすらできない。
この街に来ても、俺が変わることはない。故郷で生きてた頃のような、ただの【無法者】。

こうして俺は、この街でも警察に目をつけられる【愚か者】になった。

もう、めちゃくちゃなバンドだよな、このバンド。
ちなみに、このバンドのヴォーカルが幼馴染で、俺の目にブーメランを投げたヤツなんだよな(笑)

37歳で、他界してしまったけど………。
俺とタケルは、舞鶴に流れ着いてしばらくして、【幸生(サチオ)】と言う名の男と知り合いになっていた。
サチオからの紹介や、街で仲間になった連中で、なんとかメンバーは揃った。
でも、タケルがベースを弾けるのと、【マル】って男がギターを弾けるが、俺と、ドラム担当の【多田】って男は、楽器なんかできゃしない。
で、結局また、薬に手を出す始末……。
メンバー全員が、毎日ボケてた。
まったく。心が【脆い】のか……。
【芯がない】と言うのか………。
相変わらず、【投げやりな性格】は、簡単に直らない。
抵抗すればするほど、【投げやりな気持ち】もデカくなる。そんなことしてる間にも、時間はどんどんと、過ぎていく。

俺は、詞を書き始めた。
理由は、なかった。
小学生の頃は、ずっと詩を書いてた。
その頃も、書き始めた理由は、分からなかった。
ただ【何かを伝えたい】と言う気持ちだったのは、間違いない。

この【不甲斐ない俺】……。
この【変えられない俺】……。
この【使い切れない日々】……。

題材は山ほど、そこら辺に転がってた。
とにかく【詞を書く】と言う行為が、唯一の【抵抗手段】だった。

今日すら見えないのに、【明日】なんて……【夢】なんて……。