前回の記事はこちら → 愉快な社長<40> ~面談~
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【登場人物】
土井さん 社長
三島さん 専務
片山さん 部長・元某大手通信会社部長
宮川君 営業マンからの転職
畑野君 弱電技術者からの転職
小林君 自宅の商店のお手伝いからの転職
金田君 奥さんの実家稼業からの転職
藤原君 引きこもりからの脱出
M社 .. N社案件の窓口になってくれている会社。
宇和さん M社部長
※2006年~2009年の出来事です。
※登場人物の名前、会社名などは全て仮名です。実際の名前とは異なります。
いよいよ事務所内も寂しくなってきた。
いい加減、僕も脱出せねば..
宇和さんには申し訳ないけど、少々思う所があり、まずは他で転職先を探す。
宇和さんの所は、最後の最後に頼るか、頼らないか..
他のメンバーは、相変わらず危機感が無く、のんびり過ごしている。
僕:
そろそろ本格的にヤバいよ?
転職先探さんと、奥さんに連れ戻されるかもよ?
金田:
いやー
正直、嫁の実家の仕事はしたくないんっすよねぇ..
俺、家に帰っても針のムシロなんですわ。
あれに戻るくらいなら、給料なくても、ここに居た方が良いっす。
奥さんの給料があるので、生活には困らないと言う。
人それぞれだし、本人がそれで良いのなら、僕はもう何も言う事は無い。
他のメンバーも、転職する気は無さそう。
そして給料が止まって、2回目の給料日。
この日は2か月分振り込まれるとの約束だった。
給料日の夕方、妻から電話が掛かってきた。
電話が掛かってきた時点で、内容の察しは付く。
妻:
今月も給料入ってないよ?
僕:
やっぱり..
会社に聞いてみるけど、多分無理じゃと思うよ?
妻:
まぁ仕方ないわいね。
N社の蓄えがある筈なので、1年くらいは十分暮らせるはず。
その日の帰り、それまでの僕の貯金から幾らかを降ろし、
当面の生活費として妻に渡した。
僕:
給料出たら返してね?
妻:
わかった。
あの会社にいつまで居るん?
僕:
給料止まって2ヵ月じゃけんな。
もうイカンな。
突然辞めて帰るかも知れんけど、ごめんよ?
妻:
まぁ、このまま居っても未来はないけんな。
仕方ないわい。
そして、翌月の締め日まで半月を切った、ある日。
三島さんに給料の目途を聞いた。
僕:
もし今月も給料がなかったら、3か月になりますけど、どんな感じですか?
三島:
えーとですね..
正直に言うと、現状かなり厳しいです。
僕:
遅延が続くと支払いがどんどん膨れるし、大変になる一方ですよね。
僕も皆も持たなくなるので、1か月分でも、なんなら半月分でも
出して頂くと、僕も助かりますし、皆も助かると思うのですが..
三島:
うーん..
それは重々わかってるんですけど、なかなかそうはいかなくて..
事務所の家賃もしばらく滞納していて、待ってもらっているんですよ。
僕:
じゃあ、今月も給料無しですか?
しばらく黙り込む三島さん。
三島:
皆にはくれぐれも秘密でお願いします。
いつになく硬い表情の三島さん。
なんだろう。
立ち退き迫られて、切羽詰まっているとか、そんな話なのだろうか..
三島:
実は、入金の手段はあって、その目途も立ってるんですよ。
それには条件があってですね..
しばらく黙り、何か考えている三島さん。
大きなため息のあと、話を続ける。
三島:
父が、社長を連れて来いと言ってるんですよ。
僕:
それって、どういう..
三島:
父が、社長が実家に挨拶に来たら、お金を用立てると言ってくれてます。
何度も社長と話しているのですが、社長が挨拶に来てくれなくて..
三島さんの、実家が所有している土地の一部を担保に融資を受け、
そのまま会社に貸し付ける用意があるとの事。
その条件が、社長が三島さんのご両親に会う。
それを、社長が渋っているらしいのだが..
僕:
えーと..
三島:
分かり易く言えば、私と結婚する気があるのなら お金を用立てるけど、
その気がないのなら、お金は用立てないし、私とも別れてもらう..
と言ってます。
ああ、そう言う事ね。
会社が困っています!お金を貸してください!
かと思ったら、
娘さんを僕に下さい!
の挨拶か。
なんだ、そういう事か..
いや、え?なんだそれ..
そんな事で、僕らは振り回されてるの?
社長と三島さんの個人的関係が、会社の経営に影響してるの?
三島:
社長も私も、もう個人の資産は全部会社に注ぎ込んでまして..
何も残ってないんですよね。
それに父も腹を立ててまして、結婚する気があるのかないのか、
はっきりさせたいみたいなんです。
お父様は、不倫であることを知らないのかな。
それとも、社長はもう離婚しているのかな..
三島:
社長には、挨拶に来るように、何度も何度も頼んでるんですけど、
ずっと渋ってるんですよ。
この二人が、破局しようが添い遂げようが、知った事ではない。
でもそれを、会社の経営に持ち込むのはダメだろう。
ああ..、この会社は、この二人の「会社ごっこ」だったのか。
僕:
以前お話しましたけど、僕も3ヵ月が限界です。
非常に心苦しいのですが、4か月目は有り得ませんので..
三島:
わかってます。
それは止むを得ないと思います。
それまでに、社長が挨拶に来てくれるように説得します。
努力する方向が違うような気がするけど、
未払金は払ってもらわないといけない。
是非とも、頑張って欲しい。
この会社の幸いだった点は、現金取引だった事。
手形を切っていれば、もうとっくに潰れていた。
現金取引だったので、良くも悪くもズルズル続けられた。
悪い点も、現金取引だった事。
個人資産投入で凌げて、潰れる事無く、今まで引っ張ってきてしまった。
一番悪のは、会社と個人の境目がなく、私情を経営に持ち込んだ事。
社長の暴走を専務が止めることなく、むしろ背中を押した事。
この様子だと、次の給料も出ない。
ここが引き際。
締め日を退職日にすると決めた。
うちも生活がある。
1月分放棄したり、中途半端に辞めて日割りにする気は、全くない。
辞めると決めたからには、退職日までにいろいろと調べたい事がある。
急がねば。
続きはこちら → 愉快な社長<42> ~最後の公園会合~
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