季節と共にあるパン屋さん。
「自分達で作った野菜を使って提供したい」
農業があり、その陸続きにパン屋さんがある。
「人の身体は自分が食べたものでできている」
新鮮な野菜、安心安全な素材を使い、手作りにこだわってパンを作っているパン屋。
2019年7月にオープンしたのが、「パン処おひさま」さん。
パン処おひさまさんは路地の奥の奥にあるパン屋さん。
お店があるのは、東武東上線霞ケ関南口から、JR川越線的場駅からそれぞれ徒歩10分ほどの住宅街にあります。
霞ヶ関駅からは、かすみ北通り交差点から霞ヶ関駅を背に県道114号線(川越越生線)を南へ進み、ドラッグストアセキ・ファミリーマートを越え、その先の御嶽山神社の信号を右折。
道なりに進み、右に緩やかなカーブの途中を左手に入って行った閑静な住宅街にあります。
路地ごとに目印の矢印が掲示されています。住所からナビで行くのが最も分かりやすい。
(的場駅からの場合は、線路沿いのセブンイレブンを通り過ぎ、みよしの幼稚園の先の信号を左折)
「パン処おひさま」
川越市的場1919ー9
10:00~18:00
月曜・火曜日休み
080-9023-1919
最寄り駅:東武東上線霞ヶ関駅南口から徒歩10分ほど
駐車場1台分
Facebook:
https://www.facebook.com/PanDokoroOhisama/
Instagram:
https://www.instagram.com/pandokoro_ohisama/
※営業時間は午後6時までですが、パンがある時は7時頃まで開けています。お仕事帰りに覗いてみてください。
川越の新しいパン屋さん。
川越は、パンの街という一面があり、個人パン屋さんが数多くある街です。
個人パン屋の良さは、大手チェーンと違い、手作りにこだわり個性を発揮できる点がある。
市内どのエリアにも地域に根差したパン屋さんがあって、地域の食に欠かせない存在になっている。
中心市街地にパン屋が多いかと思いきや、実は川越は周辺地域に個人パン屋が多い街。
そして、川越の的場にできたパン屋が、パン処おひさまさん。夫婦で切り盛りしているお店です。
おひさまの土師さんは、川越の飲食店では珍しい、野菜ソムリエの資格を有しています。
野菜、という切り口がこのお店の真骨頂。
「日本野菜ソムリエ協会」
https://www.vege-fru.com/
『野菜ソムリエは一般社団法人日本野菜ソムリエ協会が認定する民間資格です。
野菜ソムリエの使命は、生産者と生活者の架け橋となること。
野菜・果物の目利き、栄養、素材に合わせた調理法など毎日の食生活に欠かせない野菜・果物の幅広い知識を身につけることで、家族の健康や食に関わるさまざまな仕事に活かすことができます。』
「野菜ソムリエ」と一言で言っても、資格は、野菜ソムリエ、野菜ソムリエプロ、野菜ソムリエ上級プロに分かれており、土師さんが保持しているのが野菜ソムリエプロ。
野菜ソムリエ有資格者自体は5万人以上がいますが、野菜ソムリエプロは3,000人弱。
野菜ソムリエ上級プロは150人ほどです。
(2018年6月末日現在:日本野菜ソムリエ協会)
野菜ソムリエから野菜ソムリエプロになるのは難易度が上がり、有資格者がぐっと減る。
ちなみに埼玉県で野菜ソムリエプロの資格を持っているのは150人ほどしかいません。
土師さんはそのうちの一人。
おひさまの土師さんは野菜ソムリエとして野菜教室の講師としても活動していました。
おひさまさんのパンと野菜の関係はのちほど掘り下げていきます。
駅から離れ、住宅街にある立地で、地域に溶け込み、地域の人に親しまれているパン屋。
扉を開くと、広い店内にはパン陳列コーナーとイートインスペースがあります。
おひさまのパンの種類は、子どもから大人まで安心して食べられるラインナップ。
一つ一つ、大事に陳列されている。子どもでも食べやすいよう小ぶりにしているのも特徴。
この日のパンは、本日のピザ、ハムエピ、ポテトサラダパン、平焼き肉みそパン、ウィンナーロール、焼きカレーパン、明太フランス、ミルクフランス、苺のクリームチーズ、ストロベリーカスタード、クリームパン、ピーナッツクリームパン、粒あんパン、チョコバナナパン、メロンパン、シナモンロール、角型食パン、くるみ食パン、レーズン食パンなど。
バゲットは朝9時のオープン時に2~3本用意。予約も可で、前日の午後3時までに連絡すれば翌日受け取れます。
また、その日のおすすめパンは店外の看板に記載されています。それも参考に。
パン処おひさまさんは、地域の人にとっては身近なパン屋さんであることを大事にしている。
「パンは親しみある食べ物で、日常的に食べてもらいたい」
肩ひじ張らず、気軽に食べてもらいたいパン。
身近な存在でありながら、近所に素材にこだわり、手間をかけて作るパン屋さんがあることの暮らしの豊かさ。
地域の生活に欠かせないお店になりつつあるのだ。
おひさまのパン生地は、パンによって地元埼玉県産小麦を使うことを大事にし、現在、埼玉県産ハナマンテン100、埼玉県産桜つばめ(さとのそら)、埼玉県産茜特を生地に使用している。
他に北海道産ゆめきらりも使用。パン酵母は、白神こだま酵母の天然酵母を使用しています。
生地には安心安全な原料しか使っておらず、食品添加物などは無添加であることはもちろんです。
そして、おひさまの最大の売りと言えば、パンに野菜を積極的に使っていること。
しかも、自家菜園で自家栽培した野菜を数多く使っている。
今日のパンにはどんなお野菜が??
その日のパンに使っている野菜の案内は、店外の看板にも書かれています。
使う野菜はその日によって変わり、野菜が変われば作るパンが変わっていくという日々の変化があるお店。
夏の時季だと、トマト、ナス、ピーマン、唐辛子、オクラ、里芋、生姜、枝豆、ビーツなど。
地元の野菜を積極的にパンを活かすパン屋はありますが、自家栽培で野菜を作っているパン屋というのは希少な存在。
いや、飲食店という大きなくくりで言っても、野菜を自家栽培しているお店というのは少ない。
おひさまさんの場合、パンのために自家栽培しているというより、もともとお店からほど近くのところにある畑で野菜作りを行っていて、その延長でパン屋があるという経緯なので、野菜作りが負担なく続いている側面があります。
パン屋のために農業があるのではなく、
農業があり、その先にパン屋があるというお店。
野菜を自家栽培していることで、一つ一つの野菜などを購入してパン作りするより安く提供できるメリットもあります。
これから秋になれば、じゃがいもが収穫予定で、お店で加工しポテトサラダなどになっていく予定。
冬になれば白菜やキャベツ、大根、ブロッコリー、カリフラワーなどを作る予定。
パンに使うだけでなく、量が確保できれば店内で野菜として販売することも考えています。
そして、おひさまさんの特筆すべき点は、「手間暇をかけて手作りしていること」。
おひさまのパン作りは、ほぼ全てにおいて手作りにこだわっている。
これは実はとても凄いことで、なかなか簡単に真似できるものではない。
個人パン屋ならパンは手作りで作っているものだろう、と思うと思いますが、もちろんおひさまのパンは全て手作り。
しかし。パンは「パン生地」だけを作るものではない。
パンは様々な具材、フィリングでそれぞれの味・個性を出していく。
そして、おひさまではパンに使うフィリングも手作りしているのです。
カレーパンのカレー、あんパンの餡子、ピザトーストのピザソース、クリームパンのクリーム、ピーナッツクリームパンのピーナツクリーム、カスタードクリーム、ポテトサラダなどなど。
(例えば、餡子を自店で炊いているパン屋というのもなかなか少ない)
そしてこれも、材料自体に食品添加物などは使用せず、クリームパンのクリームには卵・牛乳・砂糖・小麦粉しか使っていないというシンプルな材料で作っていることは言わずもがな。
お店という形で営業しているパン屋で、こうして取り組みを行っているのは実は珍しい。
「苺のクリームチーズ」のパンは、クリームチーズに手作りのイチゴジャムを合わせたクリームを乗せている。
手作りのイチゴジャムというのは、市販のイチゴを購入してジャムにしているのではなく、イチゴから作っているということ。
自家菜園で収穫したイチゴ(品種は宝交早稲(ほうこうわせ))を使った手作りイチゴジャム。
5月に畑で収穫したイチゴを冷凍しておき、今、店内でぐつぐつと丁寧に煮詰めてジャムにしてパンに使っている。
市販のジャムを使用する飲食店が多い中で、自家栽培・自店加工でジャム製造しているのはレア。
同様に、以前パンに使っていたブルーベリージャムも店内で手作りしていました。
イチゴジャムを手作りしている時の店内は甘い香りでいっぱいに。
じっくりコトコト煮詰める作業が店内でありました。
原料はシンプルにイチゴと砂糖だけで添加物は一切なし。
優しいイチゴの甘味とクリームチーズの相性が良いパンになっています。
イチゴジャムにしてもピーナッツクリームなどにしても、フィリングを手作りというより、正確に言うと、素材から手作りというのがおひさまの姿勢。
ピーナッツクリームは落花生の栽培から始めている。
素材作り-仕込み-調理を全て自分達で行っているからこその、安心と自信を持ったパンを提供することができます。
以前は畑で収穫した枝豆を、ずんだあんぱん、ポテトサラダパン、枝豆とチーズのリュスティック
に使っていました。もちろん、すんだあんやポテトサラダは手作り。
ヤングコーンが収穫できたらピザトーストの上で活躍。
そうして季節により、パンの中の具材が変わっていくのが楽しい。
季節により、旬の素材を活かしてパンに採り入れているパン屋さん。
パンを食べながら、農産物もしっかり食べられるパン屋がおひさまさん。
季節と共にあるパン屋さんなのです。
お店で購入したパンは、店内のイートインスペースで食べることができます。
ドリンクメニューもあり、ホット・アイスコーヒー、リンゴジュース、オレンジジュース、お子様リンゴ・オレンジジュースなどがあります。
朝ごはんに昼ごはんに、パンを食べながらゆっくりと過ごす人がいる。
素材を手作りし、加工も手作りするパン屋、おひさまさんのオープンに至るまでの経緯とは。
イートインスペースで過ごしながら、おひさまさんの川越物語を掘り下げていきます。
ふっと、買ったばかりのパンを噛みしめる。
味がじゅわっと口の中で広がりながら、おひさまストーリーが始まった。
「パン処おひさま」の土師さんが野菜作りを始めたのが今から10数年前。
もともとお父さんが畑で野菜作りをやっていて、その畑を自分達が受け継いだ。
月日と共に使用する畑の面積が増えていき、作る野菜の種類・量も増えていった。
季節によってその季節ならではの野菜を収穫しています。
今では年間で60種類ほどの野菜を作るまでに。目標は100種類。!
野菜作りを続けているうちに、ある気持ちが湧き上がっていきました。
「せっかくこれだけ野菜を作っているのだから、何かできないか」
会社員をずっと続けていましたが、いずれは自分のお店を持ちたいと構想していたところ、自分達の野菜が大きな強みになるのではないかと考えた。
その後、土師さんは野菜を深く知ろうと2014年に野菜ソムリエの資格を取り、周囲の話しを聞いてさらに野菜作りの種類を増やしていきました。
本格的にお店オープンを計画し、飲食業のノウハウを学ぶためにスクールに通うことに。
それが、株式会社リライブが運営するスクール、「リライブフードアカデミー」。
カフェ・ベーカリー・パティスリー開業のための社会人向けスクールです。
スクールはJR新宿駅近くにあります。
「リライブフードアカデミー」
http://www.re-live.com/
リライブについて
「『第2の人生を生きる』それがリライブの名前の由来。社会人向けに特化した、就職転職・独立開業に強いスクール。
RE-LIVE…それは「再び」「生きる」ということ。第2の人生に踏み出すという意味を込めた言葉です。
社会人の人たちが、それぞれの「食」の目的へ踏み出す。スキルを高め、自身の生活や仕事に活かすという目的。技術や知識を身につけ、プロになるという目的。そして、将来の開業。もしくは、短期間の開業を目指す。それぞれの自分の生き方に合わせたレベルアップをサポートしていくのがリライブフードアカデミーです。」
ベーカリーコース
カフェコース
バリスタコース
スイーツ&フランス菓子教室 インストラクター育成コース
開業コース
旦那様が2013年にベーカリーコースに入校し、続いて奥様もベーカリーコースに通い夫婦で学びました。
卒業後はリライブが運営する直営店舗で働き、その後、2019年7月にオープンさせたのが「パン処おひさま」。
休みの日も畑で農作業があり、仕込みがありと多忙な毎日。
お店を始めて忙しくなっても自身の核となる畑はおろそかにせず、作業に取り組んでいる。
「パンのために手間暇をかけるというか、自分達の菜園で作ったもの、加工したものを提供したいと思ってパン屋を始めました」
「店名 の『パン処おひさま』。 店名は、店舗になる実家をリフォームする際に、建築屋さんとの打ち合わせの中であっさり決まってしまった名前です。
お店のイメージにあった内装にするために、店名を先に決めたほうが良いねというアドバイスがあり、
田舎のパン屋さんだから、都会のおしゃれな横文字のピカピカの名前より、地域の方に覚えていただきやすいひらがなの店名がいいという私の希望で、パン、小麦、畑、野菜、といろいろキーワードを出しているうちに、全部関連するのが、おひさまだねということになり、あ、それいいねと ”おひさま” で決定となりました。
パン処、、、をつけるのは夫が最初から決めていて、次に続く言葉は何でもいいよと、
こんな感じでとっても簡単に店名が決まりました。きっと世の中の人はもっと真剣に悩みますよね。
あ、あと、私が黄色くて丸いものが好きなので、おひさまのイメージがぴったりあいました。
お店の壁紙の一部。黄色くて丸いんです。」
おひさまでは、ゆくゆくは広い店内を活かして色々な会を展開したいと構想している。
野菜ソムリエとして、野菜を知ってもらう野菜教室も面白い。
(おひさまの運営自体が野菜ソムリエとしての活動の一環とも言える)
また、音楽イベントだって店内でできるかもしれない。
音楽イベント?
店内に置かれている、ピアノとエレクトーン。
パン屋さんにピアノとエレクトーン。なんという組み合わせでしょう。!
これは土師さんが使っていたものを置いていますが、お店に来た人がこれに目を留め、おもむろにピアノを弾く人もいる。
その一人が、おひさまの近所に住む川越のピアニスト、吉田太郎さん。
吉田さんは、ピアニストとして活動する傍ら、川越が拠点の音楽団体「オトムスビ」の代表を務めている人でもある。
「オトムスビ」は、「音」×「結び」をモットーに、主にクラシック音楽を通じて、人々や文化との様々な「結び」を生み出すことを目的とした団体です。
川越で定期的にオトムスビ主催のコンサートも開催しており、地元密着のアーティストとして浸透している。
(川越style「オトムスビ」川越を拠点に『音』×『結び』をテーマにクラシック音楽を中心に普及
https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12465230254.html)
今後は、おひさまで吉田さんのコンサートなど、色々な展開が構想されている。
季節によってパンが変わる。
季節によってお店が変わる。
畑と共にあるパン屋。畑発のパン屋は面白い。
次はどんなパンが並ぶだろう。
さあ、また収穫したばかりの野菜を使い、丁寧な仕込みが始まっていくのだ。
「パン処おひさま」
川越市的場1919ー9
10:00~18:00
月曜・火曜日休み
080-9023-1919
最寄り駅:東武東上線霞ヶ関駅南口から徒歩10分ほど
駐車場1台分
Facebook:
https://www.facebook.com/PanDokoroOhisama/
Instagram:
https://www.instagram.com/pandokoro_ohisama/