個人八百屋というのは、時代の波に押されてもう絶滅危惧種のようになっていますが、いや、ここに元気な川越の八百屋がある。
農産物を知り尽くし、発信する熱意に燃え、自分で仕入れた農産物を販売や配達のみならず自身で飲食店まで運営してしまうという行動力。
野菜にまつわる色んな話しを聞けるというのもこのお店だからこそで、訊けば一つ一つの野菜について熱く語ってくれます。
野菜についてここまでの知識、愛情を持っている人が川越にいるなんて、ときっと驚くはず。
2016年8月にオープンした「小江戸カントリーファームキッチン」さん。
川越市松江町1-22-11
11:00~19:00 049-298-5735 不定休
お店があるのが、蓮馨寺から直進1分。山門から伸びる立門前り沿い、大正浪漫夢通りを越えて、さらに進んだ右側にあります。
あるいは大正浪漫夢通りからは、大野屋さんがある辻を川越街道方面に入って行っても辿り着く。
立門前通りに二階建て建物が見えてきました。
店先には野菜が並べられ、まるで八百屋のよう。?
蓮馨寺からほど近く、一番街に来る観光客も立ち寄り、喜多院の参拝者も訪れる、脇道のような場所にありつつ、川越の色んなスポットにアクセスしやすいという立地。
店内に足を踏み入れると、旬の素材を使った料理がこれまた所狭しと並んでいます。目移りしてしまう品揃え。
小江戸カントリーファームキッチンさんはお野菜たっぷりバイキングのお店。
お店のシステムは、大きく分けて二つあります。
大人1500円・小人980円のバイキングと980円のプレートバイキング。
バイキングはお代わり自由で、プレートバイキングは一回好きなものを選ぶことができるプレート。
休憩メニューとしてデザートセットが680円。
他にテイクアウトメニューが、
持ち帰り弁当が780円、680円、580円の3種類。これも容器に入れるおかずを自分で選ぶことができます。
また、500円で総菜詰め合わせも行っています。
ご飯やカレー、豚汁に煮物、焼き物、お肉、野菜、フルーツ、これら全てから選ぶことができます。
たくさんの種類の中から好きなものを選んでお皿に盛り、自分だけの組み合わせの特製プレートを作っていく。
店内には、あれにしよう、こっちもいいな、と迷う人の姿は日常茶飯事。しかしバイキングシステムを思い出して胸を撫でおろす。そう、バイキングなら、何度もいろんな組み合わせを楽しむことができるのです。
トレーにこれでもかと料理を載せたら、二階の食事スペースでゆったりと頂く。
カントリーと店名に付くように、店内はカントリー調の雰囲気はどこか懐かしいような思いに駆られます。
お米を一口。
あ、っとお米の美味しさにまず引き込まれる。思わずお米ばかり食べ進みそうになりながら、おかずの味、の前にやっぱり素材の味がきちんと感じられて、美味しい。いい素材を使っていることがすぐに分かります。
バイキングならまだまだこれから、気になったさっきの料理を食べてみよう、一階に下りて盛ってくることも自由。そうだ、次は野菜を中心に選んでみよう。
気が付けば、身も心もお腹いっぱいに。バイキング注文には、最後にスイーツプレートがプレゼントされてさらに心がいっぱいに。
店内に並ぶ料理は、ずっと同じもの・・・ではなく、日によって変わり、旬の食材が変わっていくことに合わせて料理が変わっていきます。
食材、つまり農産物を大切にする意識が人一倍あるのが、小江戸カントリーファームキッチン。
それも当然のことかもしれません。。。
なぜなら・・・
一見すると、なぜ店先に野菜などが?と思うかもしれませんが、
ここにカントリーファームキッチンさんの神髄が籠められている。
飲食店が農産物「も」販売しているんだ、と受け止めがちですが、本当のところはその逆、農産物がメインとしてあって、飲食店を運営しているんです。
ここは、「飲食店」であり、「八百屋」でもあるという二つの機能がある川越でも珍しい形のお店。
店先に陳列している農産物は、全て、カントリーファームキッチンの櫻井さんが自身で仕入れているもので、販売しています。
そして、お店の料理には自身が仕入れたものを使用している。
新鮮なものを新鮮なうちに使用できるという強みがこのお店にはある。
実は、八百屋としては長い経歴を持ち、今でも八百屋が主としてあります。
小江戸カントリーファームキッチンの店先はほんの一部ですが、霞ヶ関で「カントリーファーム」という名の八百屋を切り盛りし、飲食部門として「小江戸カントリーファームキッチン」を始めました。
通常、飲食店というのは食材の調達を八百屋に頼ったりしますが、カントリーファームキッチンは全くその必要がない、というか八百屋の立場として今でも飲食店への配達は大事な仕事としてあります。
というお店なので、料理に使う食材はふんだんに。
八百屋の目というのは、農産物を客観的に見極めることができる目。
大手量販店と違い、カントリーファームという八百屋は個人店で、扱う農産物は大手の量からは大分減りますが、その分一つ一つを吟味して仕入れ提供しようとする。
言ってみれば、その選ぶ目、農産物をセレクトする目利きを売りとしています。
その時の「旬」のものを選ぶのは当然、ただこれは、言うは易く行うは難しで、八百屋的プロの目利きが必要になります。
一つの農産物でも時季によって旬は変わっていく。今仕入れるならどこの産地のものがいいのか、この野菜はあの産地なら3月から6月までが一番美味しい、時季を考え、市場で自分の目で確認しながら、選び出す。
日本の土地は縦に長いなので、南から北まで風土が多種多様。
旬の野菜は南から迎え、、まるで桜前線のようにだんだんと北上していく。それを見極めて産地を選ぶことができるのが八百屋です。
だから、店頭にいつもネギがあったとしても、その時によって仕入れる産地が少しずつ変わっていく、変えていくというのが八百屋の水面下の仕事。
ネギは欲しいという人が多いので、常に必要、しかし、ずっと同じ産地のものを置き続けると味が落ちる、その時一番美味しい産地を見極めて提供しようとする。その信念を大切に、農産物へのこだわりは留まるところを知りません。
時期によって農産物が変わるというのは、店先を見ていればすぐに気付くこと。
並ぶ顔ぶれが変わっていくことが、まるで四季の移り変わりのようで、その時一番良い産地の農産物が販売されています。
(2017年1月)
そして、仕入れる農産物が変わっていけば、当然店内の料理も変わっていきます。
(2017年1月)
(2017年2月)
取り扱っている卵は定番人気で、さらにそれで作る自家製プリンも人気。
農産物と加工品を一手に取り扱えるのが、ここも強みです。
全国各地の農産物を仕入れながら、ある思いもカントリーファームキッチンさんは胸に抱いています。
それが・・・「川越の農産物の魅力をもって知ってもらいたい」。
全国の農産物を見渡しても、川越産は負けてないどころかずっと美味しいものがたくさんあり、それが知られていない状況は寂しい。
特に川越の南端、「福原地区の野菜は抜群に美味しい」。
さつま芋が有名ですが、「里芋が本当に美味しい」と自信も持って話します。他にも人参、大根、牛蒡、など土物類が美味しいのは、この地区の土があるから。まさに川越の資源で、川越の宝物のような畑があること。
それが、八百屋としての客観的な目で見た動かしがたい事実であり、お店の料理には川越産里芋は八百屋的な目で使用しています。
ねっとりとしてホクホクとした美味しい川越の里芋。
農産物の伝道師、櫻井さんの想いの籠った一品です。
川越の農の力を感じられると思います。
「野菜はとにかく面白い。時季によって顔触れが変わるし、全く飽きない」と笑顔で話す櫻井さんなのでした。
小江戸カントリーファームキッチンの櫻井さんは、これまで30年間一貫して八百屋を営んできました。
八百屋は親から継いで何代目・・・ということではなく、なんと櫻井さんが初代なのです。
個人で新たに八百屋を立ち上げるという稀有な例がここにあった。
生まれも育ちも川越の櫻井さんは、実家は今福で今で言うところのコンビニ、「ピンクチェリー」を営んでいました。
高校卒業後、家業を手伝いながら仕事を覚え、25歳の頃自分で商売を始めようと一念発起したのが、八百屋でした。
当初はお店を構えず、曳き売り販売から始めた。
川越総合地方卸売市場で野菜を仕入れて、ワゴン車にたっぷりと載せては、都内で移動販売していました。
それを2、3年続け、都内の倉庫を借りて八百屋を構えるようになって、どんどん八百屋として軌道に乗っていく。
そして、故郷川越でお店を構える時がやって来ました。
30代後半、川越で八百屋を開いたのが、西武新宿線南大塚駅南口。
ナンツカの人なら覚えている人もいるかもしれません。
今、「やきとり ひびき」さんがある場所の斜向かいに八百屋があったことを。あのお店が、櫻井さんのカントリーファームだったのです。
ナンツカで八百屋を開いたのち、川越の霞ケ関に移転、
現在は「丸和ストア」の中に八百屋カントリーファームを開いています。
(霞ヶ関の丸和ストア)
八百屋を中心に据えつつ、野菜を使った総菜を提供したい、もっと川越の中心部で展開したい、自分の目利きで選んだ食材をもとに飲食店をやりたい、そう考えた櫻井さんは立門前りに小江戸カントリーファムキッチンをオープン。
本業が八百屋であり、今でも毎日朝の3~4時に市場に農産物を仕入れにいくのは変わりない。そこから農産物を仕分けし、飲食店などへの配達業務があって、小江戸カントリーファームキッチンの営業があるのです。日々多忙を極める。。。
配達は、人気ラーメン店「チャーシュー力」さんや人気洋菓子店「天使の林檎」さんも櫻井さんが請け負っていて、食材を見る目を信頼され、お店で使う食材を届けています。
霞ヶ関繋がりで、「たまり場 博多屋」さんの野菜もカントリーファームが担当している。
(「たまりば 博多屋」もつ鍋が人気の博多料理店 人が人を呼ぶたまりば 川越の霞ケ関
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12235294445.html)
他にも、市内外、県外までも範囲にして、様々な飲食店、保育園、老人ホームなどに農産物を届けています。
カントリーファームキッチンは夜の営業はないの?と訊かれることが多いそうですが、現在営業が19時までなのは、
次の日朝早く市場に行かなくてはならない事情があるからなのです。
一家を中心に少ない人数でいろんなことをやっているので、今以上に手を広げることが難しい。。。
それでも、八百屋として、飲食店として、持ち帰り弁当店として、それぞれの使い方があり地域になくてはならない場所になりつつある。
一番街にほど近いという場所で、観光客の姿もありますが、なにより最も多いのが地域の人の利用。オープンから中休みがなく、最後まで営業しているので、どの時間も引っ切り無しに人が訪れています。
時間帯によってお客さんの用途ががらりと変わるのがこのお店の特色で面白さ。
ふらりと御昼ご飯を食べに、昼時にお弁当を持ち帰る、夕飯の食材の買い出しにやって来る、お惣菜を買って帰る、毎日にようにやって来る常連も増えて、確かな手応えを感じている。
今日も定番人気のカレーを丁寧に仕込み、お客さんを迎える櫻井さん。
小江戸カントリーファームキッチンさんがあるのが、昭和の街。
川越の「昭和の街」、昭和の風情が残り、個性的なお店が軒を連ねる町並みは、話題に事欠かず、今川越で注目を集めていることはご存知の通りです。
連雀町交差点~仲町交差点の中央通りが注目を集めますが、そこから左右に抜ける通りも昭和の街の範囲となっていて、蓮馨寺山門から伸びる「立門前通り」もまた、最近になって新しいお店が増えて活気付いています。
蓮馨寺山門から真っすぐ入って来ると、和菓子店の「彩乃菓」さんがあり、右手にはかつて芝居小屋だった旧鶴川座、大正浪漫夢通りを越えて進むと、うどん店「小江戸っ子うどん」さんが出来て、新しく、しかも早速人気店に数えられるようなお店が続々と出来ている。
(「彩乃菓」四季の彩りと菓子の彩り 新しく誕生した川越の和菓子店
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12154132751.html )
(川越立門前通り「小江戸っ子うどん」武蔵野&讃岐のハイブリッド 自家製熟成うどん
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12182612732.html)
また、この界隈の最近の動きとしては、「きものや沙羅」さんで着物レンタルする人が外国人観光客を中心に多く、一番街でよく見られる着物姿が立門前通りで見られるようになってきたのは、沙羅さんがあるから。ここで着物に着替えて蓮馨寺を参拝し、一番街方面へ出かけていく、というのが昭和の街の新たな散策コースになってきたよう。
立門前通りはここから川越街道に突き当たるまでの通りですが、途中もう一つ重要なスポットとして、「旧川越織物市場」があります。
(「アートクラフト手づくり市in織物市場2015」11月14日15日旧川越織物市場)
現在は、改修工事中で立入禁止となっていますが、再オープンしたらこの場所が大きな発信拠点として機能することは間違いありません。そうなった時の立門前りは、さらなる賑わいが生まれていることはもう目に浮かぶよう。
立門前通りに小江戸カントリーファームキッチンさんが新たに仲間入りし、さらに期待が高まります。
カントリーファームキッチンさんは、今後は川越のイベントとコラボすることも考えている。それが、農産物と言えばあの一大イベント、川越Farmer’s Marketです。
(「川越Farmer’s Market2016夏 前編」2016年7月3日蓮馨寺
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12177493828.html)
実は2016年の川越Farmer’s Marketの会場に足を運んでくれた櫻井さん。農産物のイベントということで、ずっと興味を持っていました。
2017年7月2日に蓮馨寺で開催する川越Farmer’s Marketにおいて、初コラボが実現。
お店で川越産農産物を使った料理を増やし、イベントを盛り上げます。
コラボが実現するのは、場所の近さも大きい。奇しくも、カントリーファームキッチンさんと蓮馨寺は立門前通りで結ばれた目と鼻の先。
歩いてすぐの距離だからこそ、連携の話しもスムーズに進みました。
この場所で川越Farmer’s Marketがある、この場所にカントリーファームキッチンがある、偶然とはいえなんとも運命的です。
今後は、川越Farmer’s Marketの農家さんの農産物を小江戸カントリーファームキッチンさんで扱うという連携も生まれていくと思います。
そしてまた、時季が移って旬の農産物が変わっていけば、店先に並ぶ野菜も店内に並ぶ料理も、少しずつ変化していく。
(2017年3月)
あっちもいいな、こっちもいいなと悩みながら、自分の好みだけが詰まったプレートをまた作る。
ここには、季節がありました。
季節の共に農産物が変化し、それに合わせて料理も変わっていく。
当然のようにいつも一番良いものを揃えようとする。
季節の共に歩む。
野菜って楽しい。
八百屋って楽しい。
「小江戸カントリーファームキッチン」
川越市松江町1-22-11
11:00~19:00
049-298-5735
不定休