川越style「赤間川の灯籠流し」2016年8月20日 石原町に甦る古くて新しい伝統行事 | 「小江戸川越STYLE」

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川越の現場で様々なまちづくり活動にも従事しています。
「小江戸川越STYLE」代表:石川真

長年川越のまちづくりに取り組むある人がこんな事を言っていました。

川越で何か新しいことを始める、

それは全く新しいことを始めるのもいいが、

川越の歴史を掘り起こし、今の感覚で新しく再現する。

そうやって街の歴史を連綿と繋げていくことも大事なことじゃないか、と。

 

赤間川を中心にして、川越の石原町の魅力をこの日、ここに集約させようとしていました。

 

そのイベントは、ただ単に昔のものを復活させたという懐古主義ではなく、

かつての石原宿と今の石原町の魅力を、見事に合わせたようなもので、

川越にしっかりと根付きつつの新しいがありました。

川の流れのように歴史は綿々と続いていて、この先も続いていくようにと願いが籠められていた。

 

一番街の札の辻から西へ、高澤通りを進んで行くと、赤間川に架かる高澤橋に辿り着きます。

 

この一帯が今、川越の注目エリア。

橋から赤間川を見下ろし、いつもの川がそこにある。

ただこの日は少しだけいつもと違うものがありました。。。

川に特設の桟橋が造られていたのです。
 


 


 

高澤橋を渡り、川沿いを歩いて行くともっこ館へ。

 

すでに出店が勢揃いし、駐車場は賑やかな雰囲気に包まれていました。

初の試み、これからどんなドラマが生まれるのか、期待感が会場中を流れていた。
 

 

 

 

石原町の魅力が詰まった、石原町の総力を結集させた行事で、

 

半世紀ぶりに甦る歴史的伝統行事が、2016年8月20日開催、第一回「赤間川の灯籠流し」です。

主催は石原町一丁目自治会「赤間川の灯籠流し」実行委員会。

川越で行われる灯籠流しとしては、川を下った新河岸川の旭橋辺りでも毎年行われていますが、

赤間川というのは現代になって初。

赤間川と言えば古くから市民に親しまれてきた川で、川越の歴史に常に寄り添ってきたような川。
この川から紡がれた石原町の数々のストーリーは、近年特にダイナミックで、今の川越の注目エリア。

まさか、灯籠流しまで開催されるまでになるなんて。。。

石原町の最近の動きの、これが一つの到達点になりそうなイベントでした。

灯籠流しスタートは夕方からですが、このイベントを日中から盛り上げようと、

もっこ館の駐車場では、13時からもっこ館の駐車場で飲食や音楽などのイベントが始まり、

17時半から目の前の赤間川で灯籠流しが始まるというタイムスケジュールでした。

赤間川に特設桟橋を設営し、そこから灯籠を流し、200m下った濯紫公園辺りで実行委員が受け取ります。
 



(高澤橋から赤間川下流方面を臨む。この先へ灯篭が流れていきます)
灯籠は事前に手に入れて制作してもらい、当日持参してもらう。

また、当日参加分も50セット用意していました。

みなが想像していた、闇夜に浮かぶ灯篭の明かり、

それはどれほどの景色だったでしょう、、、

晴れていれば30分くらいかけてゆったりと流れていく予定だった。。。

しかし、

迎えた2016年8月20日、天気予報では午後から雨・・・で、夕方には止むか?と

予報を頻繁にチェックしては空を見上げる実行委員たち。

それでも出店者は元気一杯に声を出して呼び込む、この活気こそ今の石原町を表している活気。

もっこ館の駐車場には、飲食出店などがずらりと並んで、まさに今の石原町の魅力が結集。

もちろん、もっこ館にお店を構える「MapleLeaf」さん、「backyard cafe」さん、「マカロン」さんに加え、

同じく石原町にあるパン屋「パン工房Bare Bread」が特別出店。

それぞれが、この日のための特別メニューを考案し、イベントを盛り上げようとしていました。

MapleLeafさんといえば、7月3日の川越Farmer’s Marketに出店し、

1時間足らずで代名詞となっている麻婆豆腐を完売したという伝説を作ったお店。

この日はお祭り仕様で、フランクフルトやケサディーヤなどを用意していました。




 

 

(「カナディアンバー&レストランMaple Leaf(メープルリーフ)」溝井家が織り成す物語

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12155565381.html

 

backyard cafeさんは、2016年3月の彩の国カレーなる闘いや

4月のかわごえ春の農業まつりに出店していました。トマトカレーが定番人気。
この日はコエドビールの鞠花にハンバーガー、トマトカレー、バーニャカウダなどで夏を演出。

ちなみに販売していたお野菜は、

普段から付き合いのある川越Farmer’s Marketの利根川農園さんのものです。

赤間川をさらに上流に行くと、利根川さんの畑が近くにあります。川で繋がれた畑とお店。
 

 

(「backyard cafe」カフェとして、花屋として、赤間川沿いの魅力スポット

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12129203407.html


実行委員長の三澤さんが、石原町のお店としてぜひ出てもらいたいと声をかけていたのが、
パン工房Bare Breadさん。

赤間川沿いから松江自動車整備工場さんのところを入っていき、住宅街の中にあるパン屋です。

この日は様々なパンの他に、期間限定のパンとして夏みかんのデニッシュ、

この日のための特別パン「フランクウィンナーパン」も提供していました。
 

(「パン工房Bare Bread」石原町の住宅街に新しいパン屋さん

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12132582445.html


さらに、宮元町にある小萩堂さんが煎餅と団子で出店。

 

川越いもの子作業所さんの出店もあり、駐車場は賑やかな雰囲気に包まれていました。

 

駐車場特設ステージでは、まず太鼓演奏からスタート。

そのメンバーの一人には、Maple Leaf2階にある「織り工房 英(ひで)」の英貴さんの姿が。

英さんがここで、織りではなく太鼓のパフォーマンスを見せている光景がなんとも不思議で面白いです。

こうして日中駐車場で盛り上がっている間も、赤間川では、

 

灯籠を流すための桟橋の確認が続いていた。

雨で水量が増した川は時間が経つにつれ勢いを増していき、桟橋の調整も難題となっていた。。。



(桟橋を確認するもっこ館カフェテラスの三澤さん)
この行事を今に復活させようと主導して動いていたのが、

実行委員長であるもっこ館カフェテラスの三澤さん。

石原宿のかつての賑わいを今に取り戻し、今の石原町を活気付かせようとしている中心人物です。

(赤間川沿い「もっこ館カフェテラス」石原宿の賑わいをここに

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12182353412.html

赤間川は、三澤さん自身小さい頃から親しんできた川で、

本人の言葉で言えば「川は庭、遊び場だった」。

ここで遊ぶことはもちろん、常に生活の横目、どころか正面に在り続けてきた川、

川が生活の一部でした。

川の流れはおそらく本人の感性や感情など人格すら作ってきたであろう古里、赤間川。

三澤さんの記憶では、定かではないが川で灯籠流しをやったような感覚がある、

それを今復活させ、石原町の新たな夏の風物詩としようとしているのが、赤間川の灯籠流しでした。

(普段の穏やかな赤間川)

石原町を中心にしたイベントですが、石原町という括りを超え、

川越の新たな歴史の1ページになりそうな予感がひしひしとするイベントでした。

さらに、この日天候が良ければ、

川越氷川神社の縁結び風鈴からやって来る人もきっと大勢いたことでしょうし、

風鈴と川・灯籠というのは相性が良さそうで、相乗効果が期待できた。

いろんな角度から見て、

例えば、市街地を流れ市民に親しまれている川であること、

そこで灯籠流しが行われる、

石原宿の歴史、今の石原町の新しい活気、

一番街から近くて観光客も見込める、

縁結び風鈴からの来客、

川越の可能性を広げそうなイベントだったんです。

 

8月20日に向けての段取りは、今回は一回目だから緩めに?いえいえ、

三澤さんは「一回目が大事、とにかく成功させないと次に繋がらない」とずっと気合が籠もっていました。

(見本で作られた灯籠)

事前に自治会を中心にした実行委員が川に灯籠を流してリハーサルを重ねていました。

なにしろ第一回となるイベントなので、念には念を入れ準備を進めてきたこれまで。
三澤さんの呼びかけにもっこ館のお店たちも趣旨に賛同し、

イベントを盛り上げようと参加していきました。
  
(三澤さんとMaple Leafの溝井家が打ち合わせをしていた)

さらに石原町一丁目の実行委員がイベントがスムーズに進むよう役割分担し、

もっこ館と赤間川の間の道路の交通整理、人の誘導、

川に特設桟橋の設営、川で灯籠を受け取る、灯籠の蝋燭に火を灯す、

川に灯籠を流す、下流で流れてきた灯篭を受け取る、など

イベントに関わる全ての運営を担っていました。

石原町は、石原のささらの獅子舞といった伝統行事が今に続いていますが、

この町内なら赤間川の灯籠流しも継続させていくのではないか、その熱気を見ていると期待が高まります。

さらに駐車場ステージでは、

小江戸トリビュートバンドの演奏でみんながノリノリになり、と続いていきました。
 

 

 

こうして日中は、賑やかなお祭りを楽しみ、夕方からの塘路流しを迎える。

一日を通して盛り沢山のイベント内容になっていて、

一日石原町で楽しんでもらいたいという願いがありました。

灯籠は事前に販売され、たくさんの人が自分だけの灯籠を作り、

この日持参することが予定されていました。

また、当日参加する人のためにも用意され、

雨の中でも、「灯籠を流したい」という参加者がテントに次々とやって来ていました。

灯籠は、台座の上に円柱の灯籠を立て、中で蝋燭を灯す仕組み。

まず広げた紙に好きなように絵や文字を書いてもらう。

ペンを握り締めて何を書こうか思案する表情の参加者、

意を決したように、やっぱりこれだ、とお願い事を、

あるいは普段言えないような誰かに対する感謝の言葉を記して、心を灯籠に籠める。

書いた紙を円柱に丸めて台座に留める。これで自分だけの灯籠が完成です。



 


子どもから大人まで、それぞれ趣向を凝らして灯籠を制作。

見ると、やはり誰かに対する感謝の言葉が多いようでした。

完成した灯籠を抱え、テントの中から空を恨めしそうに見上げる参加者。

一体いつ止んでくれるのだろう。。。
赤間川の流れは、普段の穏やかさは消え、雨で流れは急になっていった。

イベントは、最終的に、天候に左右されてしまう。。。

この天候なら、普通のイベントなら中止にしていたかもしれない。

あるいは明日に延期?・・・と言っても、延期もそう簡単にはできないものなんです。

この日と決めて準備、段取りを詰めてきた中で、

たった1日でもずらすというのは本当に大変なこと。

各種届出の関係もあるし、周知の難しさ、手伝ってくれる人たちも明日来れない人もたくさんいる、

その穴は誰が埋めるのか。

その日に開催するのがベストで、開催できない状況なら中止、という二者択一を目の前にした時に、

実行委員長の三澤さんは、石原町一丁目の実行委員たちは、開催の道を選んだ。

もうやるしかない。

(石原町一丁目自治会「赤間川の灯籠流し」実行委員会による全体ミーティング)

途中の豪雨で、「これで本当にできるのかな」と不安がみなの胸に去来していましたが、

そんな表情を横目に、三澤さんは頑として「開催する」と意に介さなかった。

今日やると決めたらちょっとの雨くらいでもやる、

それは始めから決めていたことで、当日の雨を見ても揺るぎないものでした。

実行委員長がこのくらいの強さで動いていると、周りにはもう弱気な声はなくなっていった。




「今日やるんだ」。

実行委員がスマホを頻繁にチェックしては、

「雨雲はあと10分で通り過ぎるだろう」などこまめは情報を三澤さんに伝え、

プログラムが中止になったり、変更にしたりしながらも、

当初の予定通りのタイムスケジュールでほぼ進んでいるという豪腕ぶり。

 

中には、現場に集合し機材まで運び込んで空模様を睨んでいたグループ、

 

川越いもの子作業所のIMO楽団の演奏が中止になったり、残念な面もありましたが、

川越で活躍中の彼らの雄姿は、他の場所でまた期待したいです。

(「IMO(アイエムオー)楽団」川越いもの子作業所から生まれたロックバンド

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12141853759.html

他には、雨が止んだ瞬間を狙って猿回しが披露されたり、

おとまち小江戸のミュージシャンたち、みのるさん、ほそみゆたかさん、

なんでも表現者ダイキさん、高田虎太郎さんなどは雨と格闘しながら熱唱を繰り広げました。

 

17時半、開会式は雨のため場所をテント内に移しての開催。

 

来賓挨拶として、埼玉大学名誉教授山野清二郎さんはじめ、川合川越市長、

小江戸川越観光協会粂原恒久さんなどがマイクを持ちました。


 

その後、いよいよ場所を赤間川に移す。

 

赤間川の対岸には持参した灯籠を手にしている人の列が出来ていました。

この雨でも、これだけの人が集まっていることが信じられない光景。

思い思いの灯籠たちが今か今かとその時を待っていました。

例えるならテープカットの儀式のように、

来賓の灯籠を流して、歴史的快挙、赤間川の灯籠流しがスタートしました。

その後は一般参加者に持参してもらった灯籠を受け取り、一つ一つの蝋燭に火を灯していく実行委員。

見ると、それぞれの灯籠に個性が光り、それぞれの思いが籠められているのが伝わってきます。

夏らしいイラストに、願い事に、普段言えないことをここに、

あるいはもう伝えることのできない人に向けて、感謝の言葉が書き込まれていました。







灯籠は火が灯ることで、

木の台座と紙の灯籠というシンプルだった造りに途端に風情が生まれ、

人の心に優しく訴えかけるような姿になっていく。

小さな蝋燭の炎のゆらぎに合わせて、

照らされた灯籠の言葉が揺れる、

籠められた人の言葉、思い、感情それ自体が生き生きと揺れ動いているようでした。

炎が揺らす人の感情、

灯籠一つ一つがまるで魂のよう、と言ったら言い過ぎでしょうか。。。





 

 

 



自分の灯籠が流されると、行方を見守ろうと、川に沿って追いかけていく人の姿がありました。

あ、自分の灯籠が流れていった、

灯籠を見つめながら、灯籠の流れに合わせて、赤間川を歩いていく。

時に岸にぶつかりそうになりながら、また流れに乗って下流を目指していく、

灯籠が高澤橋を無事にくぐるのを確認し、遠く離れていく灯篭をじっと見つめていた。

灯籠の一点の明かりを見つめているだけで、願いも感謝もどこかに届いてくれそうな気がして、

橋の上から灯籠が小さく揺れ流れていく姿をいつまでもいつまでも見つめていた。

数々の灯籠流しの一つ一つに、そんな人のドラマがありました。

 

日が暮れてくると、いよいよ灯篭の明かりが夜に浮かび上がっていく。

 

時折雨に降られながらも、持参してくれた灯籠を受け取ると、

実行委員たちは灯籠に炎の灯し、川に流し続けていきました。

雨をかいくぐるように灯り続ける蝋燭の火、どこまでも、どこまでも、灯籠は流れていくようだった。
 

 

 










こうして、今に甦った第一回「赤間川の灯籠流し」が終了しました。
これから川越の夏の古くて新しい風物詩となっていくことでしょう。

来年は晴天になることを祈るばかり。。。それを灯籠に願いを籠めようか。

石原町のストーリーは一つの到達点から、さらに次の展開へ。

これからも目が離せない地域です。