春から季節が一つ進み、
店頭に並んだお菓子の顔触れも、少し変化していました。
今の時季限定の夏らしい涼しげな水まんじゅう、
彩の水玉(抹茶)、
彩の水玉(赤茄子)、
彩の水玉(ゆず)、
7月14日和菓子店「彩乃菓」で開催されたのが、
「美味しい日本茶の淹れ方講座」。
『いつも飲んでいる日本茶を美味しく頂く方法とは?
日本三大銘茶の1つ「狭山茶」を題材に普段飲み慣れた日本茶を勉強して
皆さんで一緒に煎茶を淹れたり冷茶を淹れたりして楽しみましょう♪
和菓子屋ならではの日本茶と和菓子のマリアージュも楽しんで頂きます!』
講師は、日本茶インストラクターで有り昨年“農林水産大臣賞”を受賞した
狭山茶の老舗茶園「奥富園」の奥富雅浩さん。
お茶を知り尽くしている茶農家自身がお茶の淹れ方を教えてくれるという特別な企画でした。
彩乃菓といえば、2016年3月のオープン以来話題騒然となっているお店で、
川越の和菓子界に新たな風を送り込んで今勢いに乗る気鋭の和菓子店です。
お店があるのは、連雀町にある蓮馨寺の山門から横断歩道を渡ってすぐ、立門前通りにあります。
(「彩乃菓」四季の彩りと菓子の彩り 新しく誕生した川越の和菓子店
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12154132751.html )
二階のカフェスペースに集まった参加者に、
まずは奥富さんからほうじ茶の水出し茶が振る舞われました。
暑い日にさっぱりとしたお茶に、参加者から「美味しい~!」と喜びの声が。
「今日のほうじ茶は750mlのポットに15gのお茶を入れています。冷蔵庫で冷やしながら水出ししました」
今日参加者にまず提供するお茶にこれを選んだのは、
暑い外から冷蔵の効いた室内に入った時に、
「ほうじ茶は体を体を冷やし過ぎない効果があるんです。室内の温度の変化を考えてほうじ茶にしました」。
反対に緑茶などは体を冷やす効果があるのだという。
生産者自ら語る話しに、惹き込まれていく参加者。
奥富園さんといえば狭山市で15代続く茶農家であり、
煎茶はもちろん、手間のかかる抹茶の原料である碾茶も栽培しています。
以前、河越抹茶を使う飲食店の人たちが碾茶の茶摘体験を行っていましたが、
あの時みんなでやって来た茶畑というのが、まさに奥富さんの畑だったのです。
(「河越抹茶の茶摘み体験」河越抹茶の産地を訪ねる 奥富園
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12036393456.html )
摘んだ葉は、奥富園さんから歩いてすぐのところにある狭山碾茶工房「明日香」にて抹茶にされます。
(狭山碾茶工房明日香より)
川越の街の飲食店で、「河越抹茶」と書かれているものは、
もちろん、彩乃菓で使用している抹茶も明日香で作られている河越抹茶で、
彩乃菓の小島さんは「河越抹茶をしっかり味わってもらいたい」と、
お菓子にふんだんに河越抹茶を使用して、その抹茶感は特に飛び抜けていると思います。
そして、彩乃菓で一、二を争う人気のお菓子というのも抹茶を使ったもので、濃茶大福。
川越で和菓子といえば素材としてさつま芋が定番ですが、
今はそれに加えて河越抹茶が急激に伸びていて、今を象徴する二大素材と言えます。
ここで少し河越抹茶について踏み込みますが、
川越の飲食店、それに茶農家である奥富さんなど様々な人が口を揃えて言うのが、
「あの二人は後世に河越抹茶の中興の祖と評価されるはず」、
河越抹茶を復活させた川越Plusの二人のことをそう話す。
歴史が途絶え、街の記憶からも消え失せていた河越のお茶を、
復活させるのみならず、わずか数年でここまで川越に浸透させたのはとんでもない功績。
二人が動いていなかったら河越抹茶はなかったし、
もちろん今の川越のお茶のムーブメントも起こっていなかった。
中院の「あの石碑」も、地域の人にとってはきっと今でも
「どういうこと?」という認識のままだったでしょう。。。
(「河越茶Rebornプロジェクト」復活させた男たちのストーリー 川越で極上の河越抹茶
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11780014390.html )
(中院にある石碑、「狭山茶発祥之地」)
「狭山茶の前にあった河越茶はもともと、
仏教の儀式で使うために中院の周りに植えられていたのは始まりと伝えられます」と話す奥富さん。
ここから河越茶は広まり、河越の地ではお茶は途絶えましたが狭山で生き残り、劇的な発展を遂げました。
ちなみに埼玉にお茶が入ってきたのは、平安時代の河越ともう一つ、
ときがわ町の慈光寺にも同じ時期に同じお茶が入っていたことが、DNA鑑定で判明しています。
話しを戻すと、彩乃菓では二階のカフェで提供しているお茶も奥富さんのお茶を使用していて、
小島さんがどれだけ奥富さんのお茶を信頼しているか伝わってくるよう。
また、奥富さんのお茶の販売も彩乃菓で行っています。
という、普段の両者の繋がりからお茶の淹れ方講座は企画されました。
オープン直後から「カフェスペースでいろんなイベントをやりたい」と話していた小島さんですが、
お茶のイベントは念願だったもので、オープンからわずかの期間で実現させました。
小島さんと奥富さんの繫がりは、実はお店をオープンする前に遡り、
2015年11月に蓮馨寺で行われた第一回小江戸川越お菓子マルシェ、
和洋を問わず川越のお菓子店が集い、多くの人で賑わったイベントでしたが、
あのイベントにお茶の出店で来ていたのが奥富さん。
そのお茶に惚れ込んでいた小島さんが出店オファーを出していたのでした。
(第一回「小江戸川越お菓子マルシェ」2015年11月3日(祝)蓮馨寺で開催
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12080821308.html )
この時はまだ彩乃菓オープン前で、
イベントの中で小島さんは、ふじ乃の販売を手伝いつつ、
お菓子にまつわるクイズを出す役を担当していた。
(小江戸お菓子マルシェ奥富さんの出店)
さらに、彩乃菓さんは、2016年7月3日の川越Farmer’s Market出店。
お店で人気の赤茄子(トマト)大福一本で勝負、そのトマトの生産者である榎本さんとコラボ出店しました。
また、彩乃菓の二階カフェスペースでは
「みんなでワイワイ和菓子作り教室」を開講し、
彩乃菓のお菓子を作る「四季彩菓ふじ乃」の川上さんが講師として来ました。
(「川越Farmer’s Market2016夏 後編」2016年7月3日蓮馨寺
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12178471293.html )
お菓子の新提案を続ける彩乃菓さん、
お菓子やお茶にまつわるイベントも積極的に開催し、今話題の中心にします。
カフェスペースでは、奥富さんがこの日用意したお茶を参加者に見せる。
お茶の淹れ方教室として用意したのは、「深蒸し茶」でした。
「お茶にはいろんな種類があって、蒸し時間によって浅蒸し茶や深蒸し茶があります。
浅蒸し茶の蒸し時間が30秒ほどで、この深蒸し茶が120秒ほどの蒸し時間です。
そして、お茶はそれぞれ淹れ方が違います。お茶を飲む時に気に掛けて欲しいのは、
浅蒸し茶なのか、深蒸し茶なのか、それを分かった上で淹れてもらいたいと思います。
浅蒸し茶を深蒸し茶の淹れ方で淹れたり、
深蒸し茶を浅蒸し茶の淹れ方で淹れると本来の味が出ないことがあります」
深蒸し茶の特徴としては、蒸し時間を長めに取っていることで味が出やすくなっている。
淹れる前に、奥富さんから急須のレクチャーも。
急須の内側に網がぐるりと張ってある、帯網(おびあみ)の急須がお勧めだそう。
「急須の質によってお茶の味が全く変わるんです」と話し、
さらに急須についてのワンポイントアドバイスが、
急須を湯通しした後に、完全に水滴を拭き取らないでおくのもポイントなのだという。
「急須の中を見てください。水が少し残っていますね。
お茶はお湯の温度が低い方が旨味が出やすいです。
この状態でお茶を入れると、お茶の旨味が出てくるんですね。
いきなり急須にお湯を入れる前に、こうしておくと味が引き立ちます」
お茶はティースプーンで擦りきりいっぱいの2gが一人分。
さらに、お湯も一旦湯飲みに入れて、
今日の深蒸し茶なら温度を65℃~70℃くらいに冷まします。
冷ましたお湯を急須に入れてから30秒、
時計を見ながらきっかり30秒経った後、湯飲みにお茶を注ぎました。
始めに奥富さんが見本を見せてくれ、その後
教えてくれた同じ手順通りに淹れ、そのお茶を飲んでみると・・・
参加者一堂、「美味しい~!!」と感動の声を上げていました。
温度と時間、
ちょっとした一手間で淹れ方を変えるとこんなに美味しくなるなんて。
一煎目の旨味充分の味から二煎目の深み、渋み、そして三煎目・・・と止まりませんでした。。。
お茶に合わせた彩乃菓さんのお菓子が、
河越抹茶の大福にカステラ、水まんじゅうの3種類も用意されて、
お茶とお菓子のマリアージュを参加者一堂楽しんでいました。
お茶ってこんなに美味しいものなんだ、
改めて堪能した「美味しい日本茶の淹れ方講座」でした。
今後も彩乃菓では、お菓子はもちろんのこと「様々な展開をしていきたい」と話す小島さんは、
2016年8月6日にはなんと、音楽イベントも企画している。
豊かな倍音と浮遊感あふれる癒し系ウィスパーボイスが注目を集め、
「TOKYOの ため息」と称されるジャズシンガーのリュウ ミホさんが、
待望のニューアルバム『Call me』のリリースを記念してライブツアーを実施。
その第1弾が「彩乃菓」に決定。
今回は、アルバムメンバーで有り巧みな音を弾くスペシャルなギタリストの
鈴木直人さんとのデュオで演奏するそう。
川越Farmer’s Marketとしても、蓮馨寺で開催する際には
お茶の淹れ方教室はぜひ開催したいところ。
お茶の淹れ方教室に、和菓子作り教室に、楽しみが広がっていきます。
彩乃菓は、地元川越の食材を優先して使い
「四季の彩り」と「菓子の彩り」を表現している和菓子店。
冒頭にあるように、菓子の彩りは店頭を見れば一目瞭然、水まんじゅうが夏を知らせてくれる。
そして。
四季の彩りとして、小島さんがまた渡してくれたお店のショップカードにも、それは表われていた。。。
確かに以前、「四季のよってショップカードの色も変えていくつもりです」と話していた。
目の前の蓮馨寺の桜が満開を迎えたちょうどその時に開店した彩乃菓。
あの時のショップカードは桜のような薄ピンク色。
これからしばらくして蓮馨寺の木々の葉が深く青くなってくれば、
ショップカードは緑色に変わっていき、
秋になればショップカードは紅葉の黄色に色づき、冬になれば青色に変わっていく。
そうやって変えていくつもりなのだ、そう確かに小島さんは語っていた。
改めて今の季節のショップカードを見て、ここにも季節が巡っていることドラマチックだった。
(4月のショップカード)
四季を感じる、四季を楽しむ、
移ろう季節と共に、楽しみが広がっていきます。
「彩乃菓(あやのか)」
川越市連雀町10-1
10::00~17:30
049-298-4430
水休