川越style「cafe trill」シフォンケーキ ゆっくりと美の空間に浸る 小畔水鳥の郷公園 | 「小江戸川越STYLE」

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「時が人を結ぶまち川越」
川越の人、もの、こと。地元に密着した地元人が地元人に向けて川越物語を伝えるメディア。
川越は暮らしてこそ楽しい街。
川越の様々なまちづくり活動に従事しています。
「小江戸川越STYLE」代表:石川真

川越の霞ヶ関、地域の憩いの場となっている「小畔水鳥の郷公園」は、もともと雨水調節池だった場所を公園として整備し、大きな池を中心に周囲には遊歩道が作られ、市民の散歩コースになっている。

また、池はたくさんの水鳥の休息、営巣地になっていて、一年を通して水鳥を眺めること、さえずりを聴くことができる公園です。




 

小畔水鳥の郷公園を目の前に、ここに引き付けられ、引き寄せられるようにお店を構えたのが、cafe trillさん。

お店があるのは、県道川越日高線から的場のベルクをおいせ橋通りを北に進み、
右手に見える御伊勢塚公園を過ぎ、小畔川を越えると小畔水鳥の郷公園がある。
ちょうど公園の信号のすぐ先のところにあるのが、2015年10月にオープンした、「cafe trill(カフェ トリル)」さんです。




「cafe trill(カフェ トリル)」

川越市吉田新町2-12-14
営業時間 10:30-18:00 ( 喫茶 11:30-17:00 /L.O.16:30 )
TEL 049-232-5588
定休日 火曜・水曜
🅿️あり(3台/近隣2台)
東武東上線鶴ヶ島駅西口より
東武バス03・05系統7分
吉田新町下車徒歩1分
http://www.cafe-trill.com/

 

今までの川越にはなかったような空間で、大げさでなく、川越の街としての段階を一つ進ませたお店と言える。

おいせ橋通りは交通量の多い通りなので、お店が出来る前から「何が出来るのだろう?」と話題となっていて、いざオープンしてみると、その洗練された空間に、地域の人は一気に引き込まれていった。

すでに連日多くの人で賑わって、地域のカフェとして根付き始めています。
また、写真だけでもその斬新さが伝わるようで、お客さんがSNSにアップした投稿で遠方からやって来る人も見られるという。

お店は1階と2階に分かれ、カウンター席にテーブル席、階段を上がると窓席にテラス席があります。




メニューはシフォンケーキがメインで、シフォンケーキだけでいろんな種類を揃えている。

定番のバニラや完熟バナナ、黒ごま&くるみ、河越抹茶&大納言あずき、

カフェモカ&アーモンド、イチジクの紅茶煮&スパイス、木苺&ホワイトチョコ。

色味の豊かさを意識していろんな種類を用意している。

シフォンケーキをうりにし、シフォンケーキだけでこれだけ揃えるお店は川越にはないでしょう。

ドリンクは、

マイルドクラシックブレンド、フレンチクラシックブレンド、

水出し有機アイスコーヒー、カフェオレ、紅茶、

ココア、オレンジジュース、クリームソーダ、コーヒーフロート、ハートランドビール。

 

なぜシフォンケーキをメインに選んだのでしょう??

 

「シフォンケーキは人気があるだけでなく、お菓子として面白いとも思いました。決まった中でもレシピの調整のしがいがあって、いろんな味のバリエーションを作ることができる」
と話すcafe trillのオーナー、高見澤さん。

さらに、季節のフルーツを採り入れて変化していくシフォンケーキも用意し、例えば春の時季なら、桜の葉の塩漬け、桜白餡を使い、クランベリーのブランデー漬けを添えたシフォンケーキを提供しています。

これから暖かくなればバイナップルやオレンジを採り入れていく予定で、夏から秋にかけては美味しい桃も忘れてはならない。

冬にはまた、柚子を使ったシフォンケーキが登場するかもしれません。

まずは定番のバニラシフォンケーキを。珈琲と共に。

このアートを思わせるデコレーションこそ、cafe trillのシフォンケーキ。

 

木苺&ホワイトチョコのシフォンケーキ、華やかな彩りに酸味が美味しい。



 

他にシュークリームやタルトも人気。

柔らかい生地のシフォンケーキとバランスをとるように、歯ごたえのあるタルトも用意していて、

その時の気分に合わせることができる。

本日のタルト。珈琲と共に。

 

土日のみキッシュランチが登場します。

一日限定20食。

 

ゆっくりと珈琲を飲みながら、静かな時間に浸る。

 

時折顔を上げれば絵画が目に入ってきて、さらに時間を深めてくれる。

1階、2階それぞれに展示されている一級品の絵画は、見飽きるということがない、どんなにじっくり見ていても次から次へと情報や発見に溢れ、掘っても尽きない泉のような豊かさがあり、珈琲がいつまでも美味しい。


「春のセーブル川」大城真人

 

cafe trillの絵画のレベルは、ちょっとどころではなく飛び抜けているのだ。

絵に空間に、こんなに質の高い空間は、川越でなかなか出会えないかもしれない。

「緑陰」加倉井和夫

 

その場を例えるなら、まるで美術館で絵画鑑賞しているようで、でも、既存の美術館では実現できないスタイルでもある。

誰もが美術館で思ったであろう、「絵を見ながら珈琲を飲みたい」。

展示スペースとは別にカフェスペースがある美術館はあっても、絵を目の前にしてテーブルを置き、珈琲をいただくというのは難しいだろう。

しかしそれこそ、美術に長年携わってきた高見澤さんが願い、目指したものでありました。

だからメニューをあえて絞っているのもそのためで、美術館にあってもおかしくない作品がまずありきで、それを邪魔しない空間、生かす空間であることが大事でした。

落ち着いた空間、とカフェを形容することがありますが、ここはもう、絵を楽しむために特化して作られた空間だとも言えます。

cafe trillの上質を突き詰めれば、建築としての空間の力ももちろんありますが、やはり、一枚の絵が放つ緊張感から作られていることに行き着く。

それだけ絵の力は大きいのだということと、

それだけの絵が展示されているのだということ。

 

階段から2階席に上がる。開放的なテラス席に、窓席、その壁の作品は時季によって代えられ、この時掲げられていたのは桜にちなんだ作品など3点だった。




「春峯」中村宗弘

「八重桜」中島千波

「雨の後」小谷野直巳

実は、店内に展示されている絵は、高見澤さんのお父さんが長年収集した絵なのだという。

「家の中に置くといってもスペースは限られている。

仕舞いこんだ絵を見てもらう、生かすための場というのがこのお店の発端だったんです」と振り返ります。

作品は絵だけでなく、工芸品や掛軸も含めて大小様々、著名作家の作品が数多くある。

 

cafe trillの高見澤さんは川越出身、多摩美術大学デザイン科立体デザイン専攻、ガラスコース卒業後、ガラス作家として活動をしていました。

今でこそいろんな技巧があるガラスですが、学生の当時は技法としては吹きガラスか電気炉を使って作るものしかなく、あったとしても他に知る手立てがなく、でも自分が作りたいものはその技法ではないということは理解していた。

25歳くらいの時だったろうか、ついにそれから長年用いることになるガラスの技法に辿り着く。
それが、バーナーワーク。

長野県諏訪市、諏訪湖を臨む場所にある国内最大級のガラスミュージアム「SUWAガラスの里」でガラスのデモンストレーションの仕事に就き、2年ほど働いたのち、「自分の作品を作って生きていきたい」と一人の作家として独立。

以降一貫してガラス作家として活動してきました。

都内中心に展示会を開き、2004年、東京国立近代美術館工館での“非情のオブジェ 現代工芸の11人”展で脚光を浴びる。
その他、“アルス・ノーヴァ 現代美術と工芸のはざまに”展(2005年、東京都現代美術館)、

伊勢丹新宿店ディスプレィ (2006年)、

東京ミッドタウン・ガラスコレクション(2007年)、

“現代のガラス展”(2007年、東京国立近代美術館工芸館)、

“工芸の力 21世紀の展望”展(2008年、東京国立近代美術館工芸館)などに足跡を残す。

川越の新河岸にあった自身の工房でガラス教室も主宰し、東京藝術大学や多摩美術大学、武蔵野美術大学など学校でも特別講師で教えていました。

しかし、指の怪我があって、2009年箱根にある箱根ラリック美術館で最後の展示会を開いて引退。

「箱根ラリック美術館 
アンソロジー ラリックと高見澤英子、花のことば
2009年4月29日(水・祝)~7月24日(金)
http://lalique-museum.sakura.ne.jp/museum/event/detail.html?id=4

 

カフェを開こうと考え始めたのが数年前、珈琲やお菓子作りの勉強を重ね、2015年10月にcafe trillを開きました。

お菓子のお店ではなく、「場を作りたかった」と語る高見澤さんですが、この絵に引けをとらないお菓子や珈琲でなくては意味がない、と妥協せず突き詰め、さらにこの絵を生かす空間を創ってくれる人、と建築家を探してイメージ通りの場を創りました。

今後は、この場を使ってワークショップを開催したり、いろんな展開がありそう。


こういうお店が川越に誕生したこと、さらにそれが霞ヶ関の吉田新町というギャップ。。。

いや、cafe trillは、この場所だからこそ生きるのだ、と珈琲をまた一口含んで考え直す。

高見澤さんも、はじめは川越の街中でお店を開くことも考えたという。

しかし、街中でこの空間があったらどうだろう。

この静謐な時間は、

むしろ一人で行きたいという場は、守れただろうか。

川越の街中で続々と新しいお店が生まれている近年、一方で、市街地から離れた自然が残る場をあえて選び、お店を始めようとする人も出始めているのが今の川越で、また、そういう場所に人が引き寄せられるという新しい感性が芽吹きつつあるのも川越。

例えば南大塚の栗原造園。

(栗原造園「森のおうちのマーケット あきからふゆのもり2015」

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12099432692.html

 

例えば下松原のシボネボルケ。

(「かいとりぼん」渚出版第一弾作品集 シボネボルケ左桂もも

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12100929034.html

川越の南西部と南部に残る自然を生かして、その土地に寄り添うようにして在る二つの場所は、

年を追うごとに人を惹き付ける力が大きくなっているよう。

そしてここに、太古から流れる小畔川がそばにあり、御伊勢塚公園や小畔水鳥の郷公園に抱かれて、川越西部の自然にcafe trillが生まれた。

「この場所に決めた一番の決め手は、目の前に小畔水鳥の郷公園があったからなんです」

と高見澤さんは遠くの公園に目を遣った。

鳥が好きなんです、と話す高見澤さんは、

小畔水鳥の郷公園の水に浮かぶ島にシラサギがねぐらにしている木があることも気に入っているそう。

 

外からの川越の魅力は一番街と見られますが、こういうお店の貴重さは、地元の人こそ分かってくれるはず。

川越の人が欲しているものがここにある。


cafe trillさんの入口にはテイクアウトコーナーが設けられていて、店内で提供しているシフォンケーキにタルト、シュークリームだけでなく、焼き菓子にジャム、ホイップクリーム、大葉のジェノベーゼや茄子のオリーブオイル漬けといったものもあります。






 

そして、川越Farmer’s Marketの野々山養蜂園さんの蜂蜜コーナーもあります。



今並んでいるものに加え、今年の採蜜が始まった蜂蜜は、これから季節折々の瓶が並んでいくことになるでしょう。
野々山さんの蜂蜜は、ブーランジェリュネットさんやルアンジュさんといった川越の人気店から引き合いが強く、店内で販売もされていて、他にもいろんなお店でお菓子やパンなどに使用されています。

(「野々山養蜂園」川越の絶品蜂蜜の現場へ

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12065261924.html
そして、また新たに川越のお店cafe trillさんで扱われるようになっている。
しかし、cafe trillさんは、一体どこで野々山さんの蜂蜜が知ったのでしょう??
そこには実は、こんな裏話がある。。。
cafe trillさんは2015年7月蓮馨寺の川越Farmer’s Marketに来場者として来ていて、
そこで野々山さんの蜂蜜を知り、お店でぜひ扱わせて欲しいと繋がっていったのだそう。

(②「川越Farmer'sMarket 」2015年7月12日蓮馨寺

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12050268991.html

お店に作られた蜂蜜コーナー、そしてそれができる経緯、
話しとしてはこれで十分だと思いますが、

実は・・・ここからの話しに引き込まれていく。

野々山さんの蜂蜜は、いよいよ2016年の採蜜が始まっています。
今通ってきたcafe trillさんの目の前の小畔水鳥の郷公園は、あるいは御伊勢塚公園は、
川越の中でも桜の名所として親しまれていますが、これだけの桜があれば・・・??
ここまでの話しでピンと来るでしょうか。。。
そうです、桜が咲けば、あそこに蜜があるぞとミツバチたちがそれを目掛けてやって来るんです。
野々山さんのミツバチたちは、この公園まで飛んで来て蜜を持ち帰っていきます。

そして溜まった蜜を絞って瓶に詰められて、
春の花というようなラベルが貼られ、その瓶は当然cafe trillさんにも並ぶことになるでしょう。
綺麗だと見上げていたあの桜の蜂蜜が、そうして地域のお店に並んでいくという

長編小説のような壮大な話しは、なんとも素敵だと思いませんか。
お店の前の桜も含んだ蜂蜜が、お店に並ぶ、巡り巡って一本の瓶に集約される、

これが実現できたら川越初の出来事になるでしょうね。

 

そして、この時からまた時間が流れ、小畦水鳥の郷公園の桜がちょうど見頃を迎えた時。
cafe trillさんでは、桜を楽しんだ小休止に立ち寄る人がひっきりなしに訪れていた。
シフォンケーキを食べながら、絵に、時間に浸る。

満開を迎えた水鳥の郷公園の桜には、歩道沿いを歩く人に小畔川沿いでBBQを楽しむ人に、と

霞ヶ関の春の光景が今年も広がっていました。



野々山さんのミツバチたちは、あそこに蜜源があるぞと間違いなくこの桜に飛んできている。

蜜を持ち帰り、しばらくしたのち、蜂蜜として瓶詰めだれ、cafe trillに届けられる。

しかし、こんなに素敵な話しはそうそうないのではないでしょうか。

地産地消という言葉を振りかざさなくとも、目の前には淡々と確固とした事実がある。

その蜂蜜の存在そのものが、地域の農にまつわる大事なこと全てを物語ってくれている。

・・・と、ここで、この話しをさらに続けるなら面白い。

4月、川越Farmer’s Marketの会場となる蓮馨寺は桜が満開でした。

蓮馨寺の桜ももちろん川越の桜の名所の一つで、満開期の週末も大勢の人が見に来ていた。


野々山さんがミツバチの巣箱を置いている場所と、ミツバチたちが移動する距離、範囲を考えると・・・

少し遠いかな・・・いや、中にはここまで飛んでくるミツバチがいる・・・
蓮馨寺の桜にも頑張ってミツバチたちは飛んで来ているかもしれません。
小畦水鳥の郷公園や御伊勢塚公園あたりは間違いなく飛んでいっている、

川越水上公園もいくでしょう。
今年の春もたくさんの人で賑わった川越の桜、

その桜には小さなミツバチたちが蜜を求めて飛びまわっています。
川越の農の視点から見ると、あの桜もまた違って見えるではないでしょうか。
これからしばらくして春の蜂蜜を手にする時、

今年の満開の桜の風景を思い出してもらえると嬉しいです。

 

一本の蜂蜜から始まって、いつの間にかいろんな思索が頭をよぎり、
ふと我に返ってまた、壁に掲げられた絵が目に飛び込んでくる。

 

さっきじっくり見たはずなのに、全然まだ見終わった感がない深さある絵は、

いつまでも意識を引き込もうとする力があって、

その場にずっと在り続け、永い時間に耐えられる美というのは、まさにこういうものなのだ。

そして、手元のテーブルに目を落とすと・・・

あ、そういうことか、そこにも美術があったんだ。。。

河越抹茶。珈琲と共に。

 

まるで共鳴するかのように、シフォンケーキと絵は響き合っていた。

顔を上げれば、顔を落とせば、そこにアートがある。

美術館を思わせる空間は、美に彩られているのだ。

しかしアートのようなcafe trillのシフォンケーキの盛り付けは、

ただ堅苦しいものではなく、

一目見て「わあ!綺麗!」と思わず声が出そうになるわくわくがあった。

高見澤さんが思い出すのは、小さい頃のクリームソーダの記憶、

胸をときめかせた記憶が今でも鮮明にあるという。

ソーダの緑とさくらんぼの赤のコントラストは特別なものを感じさせ、

盛り付け一つで気持ちが華やぐこと、

綺麗なものを綺麗だなと眺めることの大切さが心の根底にあって、

きっとそこからガラスが生まれたのだろうし、

このシフォンケーキを生み出しているのだと思う。

 

ある時、女子中学生のグループがcafe trillにやって来てシフォンケーキを頼んだのだそう。

 

中学生くらいのお小遣いではきっと一大決心だったかも、でも、

華やかなシフォンケーキを目の前にして喜んでいる光景は、

まさにそこにかつての高見澤さんを見るよう。

ここに来てここでシフォンケーキを食べたことをいつまでも憶えて、時折、

素敵なものを昔食べたな、という思し出してくれるかもしれない。

 

ふっと一息ついて、テラス席から先に小畔水鳥の郷公園の木々が見えた。

 

一年中見られる鳥たちは今日もせわしく飛び立っている。

これから夏になればオオヨシキリがやって来るだろう。

そしてまた冬が来れば、ジョウビタキやモズたちが帰ってくるかもしれない。

鳥たちが公園の季節を知らせてくれ、

また春が来て木が芽吹けば、また桜を見上げることができる。

変わらずそこにお店が在ること、変わっていく絵に、変わり続ける公園の季節、

いろんな時間が交じり合って、ここにしかない空間がずっとある。

 

またふっと、お店に足を運ぶと、

 

あの壁の絵が桜から違う絵にかけ替えられていた。

 

そう、そんな風にcafe trillは変化しながら、変化せずここに在るのだ。

 

「cafe trill(カフェ トリル)」

川越市吉田新町2-12-14
営業時間 10:30-18:00 ( 喫茶 11:30-17:00 /L.O.16:30 )
TEL 049-232-5588
定休日 火曜・水曜
🅿️あり(3台/近隣2台)
東武東上線鶴ヶ島駅西口より
東武バス03・05系統7分
吉田新町下車徒歩1分
http://www.cafe-trill.com/




 

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