川越style「パン工房 クローバー」新河岸の親しみあるパン屋さん | 「小江戸川越STYLE」

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「時が人を結ぶまち川越」
川越のヒト・コト・モノ、川越物語りメディア、小江戸川越STYLE。
川越の現場で様々なまちづくり活動にも従事しています。
「小江戸川越STYLE」代表:石川真

川越パンマルシェに出店するパン屋さんは、

毎回蔵里の広場でどんなパンを提供しようか、悩みに悩んで決めている話しを聞きます。

イベントを意識したパンがいいのか、いや、たくさんの人が来るイベントだからこそ、

普段のお店のテイストを感じてもらえるものの方がいいのか、

そこはどのお店もみなさん最後まで考え、一つの答えを導き出しています。

 

このお店も以前、

 

ある想いを抱いてパンマルシェに臨んでいる話しをしていました。

「パンマルシェ用に新たに開発して試してみようと思うんです」と。
年に一度きりのイベントで、より非日常感を演出するために特別なパンを用意しようとしていた。

そこに今年は、少しの心境の変化があるという。

 

川越パンマルシェというのは、毎年同じことを繰り返しているのではなく、

 

一回一回それぞれのお店は悩み、趣向を変え、展開しています。

毎年出店しているからこその絶えまない変化は、

変革と原点回帰を交互に行きつ戻りつしているかのよう。

 

そしてパンマルシェという場は、パン屋さん自身にとっても刺激的なイベントなのだということ。

 

「パンマルシェには、同業の人がたくさん集まるから凄く刺激受けます。

他のお店がどんなパンを焼いているのか、それを見て新しいものを作るモチベーションになる」

と話していたのが印象的。
今年はどんなスタンスでパンマルシェに臨むのでしょうか。

「パン工房 クローバー」さんです。

 

☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*

 

 

お店があるのは、東武東上線新河岸駅からほど近く。歩いて5分ほどのところにあります。

 

コモティイイダがある通りを新河岸川方面に進んだ左手です。

赤い屋根にクローバーのイラストが目印。




 

 




この時店頭には、

・コロッケパン

・ミートボロネーゼとプチトマト

・ジャーマンポテト

・サルサドック

・豆パン

・つぶあんぱん

・フランスあんぱん

・コーヒーあんぱん

・クロックカマンベール

・長ネギとベーコンフランス

・カプチーノ

・抹茶クリームと小豆のデニッシュ

・パン オ レザン

・パン オ ショコラ

・生チョコのクルミパン

・レーズンコッペ

・メープルフレンチ

・ホワイトチョコとオレンジのフランスパン

・カレンズとクリームチーズのフランスパン

それとクローバーの個性となっているのが、米粉パン。

去年お伝えしましたが、米粉パンは今やお店の定番となっていて、

あえてこちらを選ぶ方も多いのだという。

小麦とは違う独特なもちもち感は、やっぱりお米という風味。
定番の米粉あんパンの他に、季節によってサクラ、よもぎ、コーヒーなどの餡を詰めています。

 

クローバーさんは、新河岸にオープンしてから7年になるお店。

 

川越パンマルシェには毎回出店し、お馴染みの存在となっています。

クローバーだけでなく、パン屋さんというのは、

普段から夜が明けるずっと前から仕込みを始めています。

そして川越パンマルシェともなればさらに朝は早い。
クローバーさんは夜の12時に仕込みを始め、

そこから仕込んでは焼きの果てしない連続で、

たくさんのパンを蔵里に持って来てくれています。

 

2015年5月31日、川越パンマルシェに向けて、クローバーさんに話しを伺います。

 

 

-去年のパンマルシェでは、普段新河岸に馴染みのない方が

 

クローバーのパンを買い求めていた光景が多かったと思います。

今年もいよいよパンマルシェの時期がやって来ようとしています。
「今年は幅広い顔触れが出店するんですね。パン屋さんも多くて、

種類もサンドイッチもあり、去年に引き続きホットドッグもあり、ジャムもあり、ゲスト出店がいくつもあって、

パンにまつわるものは全部あるという感じで楽しそうですね」

ークローバーさんというと、川越パンマルシェに合わせて

新しい発想のパンを出品していた挑戦も印象的でしたが、

今年はどんなラインナップで考えていますか??
「今年は定番のパンを基本として、食パンやフランスパン、クロワッサンを中心に

出品しようかと考えているんです。

それに最近の新しいパン、くるみチョコや味噌あんぱんなども出品しようかと思います」

ーなるほど、定番回帰ですね。パンマルシェも、回によって

それぞれのお店の考え方、取り組み方が変化していくのもまた楽しいですね。
「それにハード系、お店で人気の甘いパンや焼きカレーパン、ジャーマンポテトのパンなどの調理パン、

うちの個性である米粉パンも出品するので、普段のクローバーを感じてもらえると思います。

ジャーマンポテトのパンほ柔らかい生地にするか、フランスパンにするかというところは、

まだこれから決めていきます」

ーどんなパンを出品するかは一番悩むところでしょうが、

クローバーさんは毎年出店しているので会場の様子もよく分かって、

いろいろ計画は立てやすいんじゃないですか??
「そうですね、今まで見ていると、パンマルシェに来られていた方々は、

買ってその場で食べている方が多かったし、お昼時には調理パンを買い求める方が多かったです。

今年はその辺りは多く用意したいですね」

ー親しみある調理パン、いいですね。そしてクローバーさんは、

ベーコンエピも提供しようと考えています。
「川越パンマルシェのポスターのイラストがベーコンエピじゃないですか。

だから出品したら面白いかなと」(笑)」

ークローバーさんにとってパンマルシェというのはどういうものですか?
「自分のブースに付きっきりになるのでゆっくり見て回る余裕はないですが、

他のお店のパンを見て、刺激を受ける部分は大きいです。それで自分も頑張ろうと思える」

ーそれにパンマルシェに出店することで、地域の方にも注目してもらえますよね。
「そうですね、3月くらいになると、お客様に『今年のパンマルシェはいつ?』と聞かれるし、

今までもパンマルシェが終わると、お店でお客さんにいろいろ声をかけてもらって嬉しいです」

 

さらにクローバーさんは、こういう話しもしていました。

 

「パンマルシェの様子を、例えば『こんなパンがあったわよ』など、ぜひ教えて欲しいです。
自分が見てないところを知ると刺激になります。お客さんとしては、パン屋さんに行って他のパン屋さんの話題を出すのは気が引けるかもしれませんが、 うちはぜひ話して欲しいです」と。

今年は新河岸から、
クローバー、クレープ、ブーランジェリュネットという3店が出店します。

パンマルシェには、新河岸から来場される方も多そう。

 

川越の新河岸は、新河岸川舟運の話しを出すまでもなく、歴史のある地域で

 

昔から住まわれている方が多い。
クローバーには、毎日のように来られる近所の方も多く、

地域に解け込んだ日常使いのパン屋さん。

平日の朝は朝食用に地域の方や通勤客が、食パンに惣菜パンなどを次々と買っていく。

「朝7時からエビカツがよく売れていく」

こういう朝の時間帯のお店の様子に、クローバーの親しまれている様子が伝わり、

街に根差している在りようが分かります。

日中はママさんや年配の方、
夕方から夜は、学校帰り会社帰りの方がおやつや夕食にとパンを買っていく。

土日になれば、ゆっくりとハード系を味わう方が多くなる。

肩肘張らずにお店に立ち寄れて、すぐに食べられるのがパンのいいところだとしたら、

まさにそういうお店がクローバー。

 

クローバーの野本さんも「気軽に立ち寄れるようなお店を」と、
それこそおやつ感覚でパンを身近に感じてもらい、

 

駄菓子屋さんのような、ついつい立ち寄ってしまうようなパン屋でありたいと話します。

確かにクローバーのパンを見ていると、

どこかホッとするような、親しみあるパンが並んでいます。

 

店主の野本さんは話しやすく、パンと同じように親近感があって、

 

人柄とパンの相関関係を見るよう。






クローバーのパンは、ルヴァンリキッド(自然発酵液種)を使った風味豊かな生地が特長。
ルヴァンリキッドを使って酸味がプラスされ、食べる時に旨味になる。

また、次の日でも柔らかさや風味が残ります。

ルヴァンリキッドはオープン以来種つぎしているもので、これを何%か混ぜて生地にします。


パンは見ているだけで楽しい。

いろんな形があって、生地の焼き目の表情をじっくり見たり、

食べ物の見た目の表情を楽しむというのはパンならではの行為かもしれない、と思う。

そこは自然の力を借りてでき上がるパンといえど、職人の腕の見せ所。

どんな表情のパンを作りたいか、一つ一つ考えられて出来上がります。

 

パンが持っている、人を楽しませる力。
例えば、雑貨屋さんの棚に雑貨が居並んでいるのをワクワクしながら見ているような、

 

ショーケースに並んだパンには同じような感覚になったりします。
形や色合いがそれぞれに違うパンは、

作家さんが一人で最初から最後まで全部作るところは共通していても、
最後の部分、パンは「食べられる」ということに感動する。

 

昨年、川越パンマルシェ前に伺った時にも、

 

以前からさまざまな試行錯誤をしている話しはしていて、
フランスパン生地にカレー粉を入れたフランスカリーパンを作ったりというのがあった。
中に具材としてカレーを入れるのではなく、
生地自体にカレー粉を入れている珍しいパン。

「試しに入れてみたら、美味しかったんですよ」
それからグリーンカレーのパンもあって、常にチャレンジを続けていた。

 

あれから一年。

 

お店は変化していくのが常だとしたら、
クローバーの去年からの変化として、店頭で野々山養蜂園の蜂蜜を取り扱うようになりました。

(野々山さんは7月12日蓮馨寺の川越Farmer'sMarketに出店予定。今年一番話題の蜂蜜です)

 

さらに一番の変化として、最近食パンの生地を見直したことが挙げられます。
小麦粉を変え、配合を変えて、

 

ただパンの柔らかさは以前と同じものにしているので違いに気付く方は多くないと思いますが、

微妙ながらもリニューアルしている。
今までは修行時代から慣れた小麦粉を使っていたので、
それを変えるのは大きな変化でもあります。


さらにクロワッサンも、よりバリバリ感を出すために折り方を変え、
今まで三つ折りを三回だったのを、四つ折り一回と三つ折り一回という二回の折り数に減らしている。
そのことで以前のパリパリ感からバリバリ感の食感に変えたところ、これが大好評。

「お店を始めて7年目で初めて変更しました」

変化に柔軟なスタンスは、おそらく、

川越パンマルシェに出店していることも影響しているのだと思います。

パンマルシェに出店することは、
他のお店がどんなパンを焼いているか見ることができるし、勉強にもなり、

「いろんなことをやってるんだな」と、パン職人として刺激を受けるものが多いのだと話す。
そのまま熱をお店に持ち帰り、「自分ももっと頑張らなくては」と前に進む原動力にしているのだそう。

パン屋さんはある意味孤独です。
クローバーのように一人で切り盛りしているお店や夫婦二人でやっているお店も多く、

そしてパンを焼くのはたった一人というお店は多い。
一人で焼くというのは、全てを自分でコントロールできる良さもありますが、
自分だけの世界にいると広がりがなくなってしまう部分もある。

 

川越は美味しいパン屋さんが多く、しかもみんなレベルが高いと実感する方は多いと思います。
それは、川越パンマルシェというイベントを通じて、

 

お店同士が交流を深め、切磋琢磨し合う関係があるからここまで来たという側面もあるように思います。
変わることを恐れず、パンを見直す判断をしたクローバーさんは、
どこかでパンマルシェからの影響はあったかもしれないと認める。
どの街のどのパン屋さんも日々進化している。
その中でも川越は、

パンマルシェがあることで、他の街よりほんのちょっぴり進化のスピードは早いのかもしれません。
また、挑戦的なパンを受け入れられるような土壌が街に醸成されていっているようにも思います。

 

お客さんから見た川越パンマルシェは、

 

美味しいパン屋さんが一堂に会する夢のような祭典。

パン屋さんにとってのパンマルシェは、出店者同士刺激を受け合って、

それはライバル意識というより、このイベントを共に作り上げる戦友のような意識を持っているよう。

 

実はそういうお店同士の交流と切磋琢磨に、

 

このイベントを開催する意義もあるのではないでしょうか。

さらに美味しいパンを焼こうと気持ちを新たにし、また明日から頑張る。

その先に川越のパン文化の発展がある。

・・・と、見ている間にも、次々と生地が窯の中に入れられ、

しばらくしたのち香ばしい香りを放って焼き上がっていきます。

まさに戦場のような忙しさの中で、野本さんはてきぱきと動き回っては

ショーケースに焼き立てパンを並べていく。

メープルラウンドが焼きあがりました。



たくさんの種類のパンを用意するのは本当に大変なこと。
それでも、選ぶ楽しさを提供したいと、多くの種類を作ります。


クローバーの野本さんは、小さい頃からパンが好きだったと振り返ります。
偏食気味だった幼少時代も、
「パンだけは好きで食べられたんです」。
中学・高校になると、家に帰って来て食べるおやつはきまってパン、
部活帰りに買い食いして食べるのも、パン、
野本さんにとってパン屋さんは駄菓子屋さんのようなワクワクする場所で、
パンは身近な食べものであり続けた。

仕事も当然のようにパンの世界を選び、
成城、世田谷などのいくつかのパン屋で修行したのち、

生まれ育った川越の新河岸に戻って来て、自分のお店を構えました。

 

野本さんが都内のパン屋さんで働いていた時の話しで、

 

興味深い話しがありました。
あちこちにパン屋が点在しているような地域は、

一見すると激戦区に見える。
でもパン屋さん自身からすると、「実はそうでもないんですよ」と話す。
お客さんからしたら、このパンならここのお店、

あのパンはあそこで買う、と使い分けている方が多く、
さらにお店ごとに強みのパンはそれぞれあるので、
「近所同士にお店が並んでいても、

競合しないで自然と棲み分けされるものなんですよ。

世田谷はそういう感じでしたね」と。


その話しを聞いて、改めて川越を思いました。

川越パンマルシェに出店するお店は、
広い川越の中であちこちに点在しているとはいえ、同じ川越で同じパン屋を開いている関係です。
ライバル意識はないんだろうか、って。

川越のパン屋さんは、共闘意識を持っているように感じます。
だから川越パンマルシェというイベントにもみなさん積極的だし、
一緒になってパン食文化を根付かせたいと、毎回開催できているのです。

パンのお祭りというと、全国各地からパンが集まって開催されたりしていますが、

一つの街の中のお店を中心としたパンのお祭りはなかなかない。

これは川越の街ならではと言えます。

同じフランスパンでも、それぞれのお店に個性があって、
そもそも同じ人が作るフランスパンでも毎日違うものが出来たりするのだから、
お店ごとの差はとても大きい。共存し、補完し合っている関係があるのだと思います。

クローバーの戦場はまだまだ続く。


 

 

 

「上手くタイミング合って焼けると嬉しいんです」

 

 

窯に入れては、次に焼き上がったパンを出し、ショーケースに並べ、と

 

窯とショーケースの間を何度も行ったり来たりするお昼前の時間でした。

 


クローバーさんは朝は大体、フランスパン、食パンから仕込みを始め、
前日から仕込んで冷蔵発酵させたものを成形、

 

仕込んでは発酵、仕込んでは発酵と進めていきます。
それぞれのパンによって発酵の時間差があるので、段取りは分単位で計算する。

発酵も、夏と冬で1時間以上の差が出るので調整に気をつかいます。


パン屋さんは待つ仕事。
発酵を待つ間に別の仕込みに取り掛かり、

それが済んだら発酵が終わった生地に取り掛かる。


 

 

また、焼き上がったパンが並べられていきました。

そして焼き立てを求めて、常連の方がお店にやって来る、

ずっと続いているクローバーの日常が今日も始まります。


あんパンを買っていかれる方に、
小さいお子さんを連れたお母さんがメロンパンを買っていった。
ふらっと日常的に利用されているのが分かります。

 

どんなに凝ってもパンはパン、
気軽さがあるからこれだけ人に愛されているのだと思うし、
いろんな食べ方ができる楽しさがパンの持つ魅力でもある。

 

買ってそのまま食べてもいいし、

軽くトーストしたり、バターやジャムを塗ったり。
中には、クローバーのフランスパンに、

自分で炊いた餡子を乗せて食べるのが好き、というお客さんもいるそうで、
自分なりのカスタマイズを楽しんでいる方は多い。

 

野本さんのお勧めとして、
「シンプルに、トマトを切った断面をフランスパンにこすりつけ、

 

おろす感じで潰して食べると美味しいですよ」と教えてくれました。
さらには、そこにオリーブオイルかけてもいいし、
余ったパンはフレンチトーストにしても美味しい。

 

「今日は天気いいから、お出かけしてあそこのパン屋さんに行こう、

 

そんな風に川越のいろんなパン屋さんを利用してもらうと嬉しいですね」

 

青空の下、新河岸川の土手や公園のベンチでパンを食べる。
新河岸はパンの街、
クローバー、クレープ、ブーランジェリュネットがあり、買い回ることができるので、

 

この地域らしいパンの楽しみ方はあるはず。

 

そうそう、

 

お店の店名にもなり、SHOPカードにもイラストが描かれている、

「クローバー」。

凝った名前ではなく、身近過ぎるくらいの、クローバー。

この店名には、どんな由来があるのでしょうか。。。?

「修行時代に働いていたお店のオーナーが、自分の故郷を店名にしていたんです。

自分が生まれ育った土地を店名にするのって、カッコイイなって」

 

振り返れば生まれ育った新河岸は、

 

小さい頃から新河岸川に九十川、近くの川で遊んでいた。

野本さんにとって、九十川は生活の一部のような川。

旭橋周辺の風景、その川辺には、派手さはないけれどクローバーが咲いていたのを思い出した。

そうだ、これだ。店名が決まりました。

描かれたクローバーのイラストを見ると・・・

あ、四つ葉じゃない。。。普通なら四つ葉のイラストにしそうなところだけど、

「いやあ、自分には身近な三つ葉の方が似合いますよ(笑)」

と、遠慮がちに話していたのが印象的でした。

三つ葉のクローバーのクローバーさん。

地域に溶け 込んで、新河岸のパン食文化を支えています。。。♪

 

「パン工房 クローバー」

 

川越市大字砂967-2

7:00 ~ 19:00火曜定休

 

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