映画「シモーヌ」に見るいま | 絵画的世界の窓

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オリビイエ・ダァン監督「シモーヌ」を観る。

サブに「フランスにもっとも愛された政治家」とある彼女はユダヤ人一家に生まれ、ナチのホロコーストの時代を奇跡的に生き残り、生き残ったが故に戦後国を越えたEU共同体理念を身をもって体現する人生を生きる。


このことをいま痛切に思い至る時代を生きているんだなあ、という現実だな

ユダヤ人という一民族ををこの世から一掃する狂気が現実に罷り通ってしまった時代は、わたしの父親が19歳で召集され中国東北部に派遣された日中戦争と同じ時代に行われた地続きの身近な歴史の中に生きる体温がある。


また彼女の人権意識に根差した刑務所改革への熱はアウシュビッツ収容所の体験と重なる自分史そのままなのだが、それは翻って入館施設に収容されている者たちが被る非人間的な扱いのいまに通じる現実の問題として日本に返ってくる切実な問いだろう。


恐ろしい時代はいまもつづいている。国家として。兵器の残忍さにおいて。民族の存亡は?

生と死は隣り合わせ。破壊と創造とをつなぐ途方もない亀裂を思わざるを得ない。