"it's true.” と本の選び方「もうひとつの空の飛び方」 | 風信子 

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 いらっしゃいませ。こちらは読書日記中心のサイトになります。本を好きな方が一時楽しんでくだされば嬉しいです。

 こちらの作品を読みながら、常に頭にあったのが゛it's true.” という言葉。

 「指輪物語」や「ホビットの冒険」の作者トールキンが書いた「妖精物語の国へ」に幾度も出てくる言葉。

 そして、ゲド戦記を描いたル=グウィンがファンタジーやSFの著作に関して描いた「夜の言葉」(彼女がファンタジーは夜の言葉を語るものであるということを述べています)

 単なるブックガイドとは言えない一冊でした。

 

 「もうひとつの空の飛び方」 萩原規子著

 

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 萩原規子さんといえば、私が思い浮かぶ作品は「空色勾玉」から始まるシリーズや「RDG レッドデーターガール」シリーズになります。私は「空色勾玉」から彼女の作品を読み始めましたしニコニコ

 

 そして個人としての私が初めて読んだファンタジーを彼女のこの作品に出てくる論に合わせるのであれば、小学生用にアレンジされた原文と翻訳を合わせた「八犬伝」、同じシリーズの「竹取物語」になるでしょう。本は本当にたくさん与えられていましたから、ありがたやラブラブ

 

 純粋に児童書としてのファンタジーとすれば、神沢利子さんの「銀のほのおの国」となります。これは異世界もので、家にあるトナカの首のはく製には魔法がかかっている、そう妹に言われた兄がそのトナカイの魔法を解いたために、兄妹は彼らの国である「銀のほのおの国」へ迷い込み、自分の家に帰るための旅をするというものです。(五年生の時に読みましたが、とてもシビアな生死の問題の提起もあり、今読んでも考えさせられる作品です)

 

 コロボックルシリーズ(横浜市の戸塚区にモデルになった場所があります)やナルニア国物語、指環物語もよみましたし、ゲド戦記だけは遅い読者になりますかねぇあせる

 児童文学部にいましたので、それなりに児童書も読んでいましたし、そのころは明確にファンタジーと小説という明確な区別はしていませんでした。(SFもコミックも相当読んでいましたので、すべてまとめてという意識しかなかったです💦

 

 意識をするようになったのは、やはり自分が異世界ものの作品を書きたいと思ったときです。道端の石でも存在感がなければファンタジーは成立しないという久美沙織さんの「新人賞の獲り方おしえます」「もう一度新人賞の獲り方おしえます」に書かれていた言葉です。(参考として栗本薫さんのグイン・サーガを出されていました)

 

 そんな私の思い出を道連れにして、こちらの作品には作者、ご自分の経験に合わせて、読んできた本、アニメーションとの関係、フィクション等の紹介があり、とても興味深く読むことができました。

 

 ただ、私はファンタジーを描く作家の方にはトールキンの‟it's true.‟ 本当に、という子供たちが問いかける言葉を忘れてほしくはないなぁと思ってもいたのです。否定ではなく、あくまで希望。

 

 そして、ル=グウィンが「人間は昼の光のなかで生きていると思いがちなものですが、世界の半分は常に闇のなかにあり、そしてファンタジーは詩と同様、夜の言葉を語るものなのです」という言葉も忘れないでいてほしいなぁと感じたのです。

 

 もちろん、トールキンの時代もル=グウィンの時代も過去のものになりつつあります。ナルニア物語も私の大好きな瀬田訳から新しい翻訳の物へと移り変わろうとしていることも事実です。でも、私はいつまでも、ほんとうに? と問いかけながらファンタジーを楽しみたいと思ったのです。

 

 実は私は「ハリー・ポッター」シリーズが苦手です。因みに全巻友人に貸してもらい読んでいますし、映画も子供たちとみています。ですが、どこか私の求めるファンタジーとは明確に違うと感じています。(お好きな方はすみません、これは個人の感じ方なので(-"-;A ...アセアセ)

 

 困難を切り開く力、誰かに頼ることなく世界に向かっていく力、これを読み取ることができるからファンタジーが好きなのだと思います。これをはっきりと示している作品をあげてくださいと言われたら「十二国物語」を今はあげますね。

 

 コロボックルシリーズですら、世界が誰かにとって善なるものばかりではなく、それを変えていくのは読み手なのだということが描かれているのですから。

 

 私はナルニア物語の「最後の戦い」を読んだときに、なんてかわいそうなのだろうとある登場人物に対して思いを寄せました。でも、それは私たちの姿でもあることを忘れてはならないとも感じたのです。

 

 ファンタジーの在り方はまだまだ変わっていくでしょう。そのこともこの作品から強く感じることになりました。

 

 できれば、よい方向に向かって行ってほしいと願いながら、この本を閉じたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 びっくりしたんですが、久美沙織さんの「新人賞の獲り方おしえます」って文庫化してるんですね。私が持ってるのは単行本、もう平成の初めに手に入れた本ですしねぇ。因みに「夜の言葉」も同時代ライブラリーというのが当時の岩波書店にありまして、それで持ってます。

 

 うーむ、年を取るわけだ(;^ω^)