何とか制限時間までに、30キロ地点の第一関門にたどり着けた。
ここは大きな休憩所という感じで、車に積まれた大きな水タンクがあり、水を補充できた。バナナも好きなだけ食べていいという。
ブルーシートが敷かれ、そこで何人も休んでいた。毛布にくるまって横になっている人もいる。恐らくここで棄権するのだろう。
僕はどうしようか考えた。
バナナをたくさん食べて、少し元気も出た。
もう少し走ろう。そう思った。
何よりここは蚊が多い。何匹もまとわりつく。ここで車が来るまで、待っているのは嫌だった。それなら苦しくても走っている方がいいように思えた。
第一エイドステーションを出発して走りだした。
まだ朝6時過ぎ。
気持ちのいい時間。
「暑くなる前までにどれだけ距離を稼ぐかが大事。」
体育館でのお姉さんのアドバイスを思い出した。
涼しいうちにできるだけ走ろう。そう思い、力を節約することなく走った。
幸いなことに、道は比較的平坦だった。下り坂も多い。走りやすかった。
僕はスタート前に、ある程度のペース配分を考えていた。
40キロまでを6時間、
60キロまでを10時間、
そして残りの40キロを10時間かけて走る。
そうすれば完走できると考えていた。
第一関門からの走りが調子良く、遅れも取り戻し、自分が考えていたペース配分になりつつあった。
登り坂や、小エイドステーションでは休みつつも走り続け、僕は60キロ地点を約10時間で着くことができた。
もしかしたら、完走できるかもしれない。
一時はあきらめかけていた完走が再び目標に入ってきた。
すれ違った参加者からも話しかけられた。
「ここまできたら完走したいですね。」
御嶽山を背景に記念写真を撮り、第二関門に向けて走りだした。
急な下り坂が続く。
もらった地図ではこれを抜けたら、第二関門と書いてあった。
一気に行こう。
そう思い、下り坂を一気に走った。
何人も抜いた。
疲れても第二関門で休めばいい。
そのつもりだった。
しかし違った。
下りきったところに、第二関門がない。
しかも急な登り坂が再び始まる。
がっくりきた。
とても進める気持ちになれず、日陰がない道に座り込んで休んだ。
追い抜いた人たちが、再び自分を追い抜いていく。後をついていく元気がなかなかでなかった。
遠くから声が聞こえた。
「第二エイドはもうすぐだぞー!」
登り坂を見れば、それほど遠くない木立の隙間からテントが見える。
あそこまで行けばいいんだ。
そう思い、僕は歩きだした。
11時、僕は第二関門に到着した。
制限時間の1時間前。
疲れはあったが、完走という希望を持って休むことができた。