石場建ての床下は動物か妖怪の住処?!・・・ ネットを張りました ~ いろいろな工夫と意匠 | 伝統構法の家づくり…大阪の街中で!石場建て/木組み/土壁のマイホーム新築

伝統構法の家づくり…大阪の街中で!石場建て/木組み/土壁のマイホーム新築

五十代も後半、自宅を新築…新建材は怖い!
行き着いたのは地元の工務店。
で、棟梁がつぶやいた。
「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」
「石場建てってなんですのん?!」・・・

昨日5/16には、もう梅雨入りしたんだってぇ?!

近畿地方では平年より3週間ほど早く、1951年以来統計史上最も早いんだとか。

 

今日も一日中結構よく降っていました。

屋外の気温は19℃台~25℃台、湿度は80%ほど。
 

無垢材土壁の我が家の室内は、このところずっと24~26℃台。
今日は窓を一日中すかしておいて湿度は65%台。
(我が家は雨でも、閉め切って気密を保つなんてことはしないんです。)


​で、不快指数計算サイト​によると、不快指数75弱。

ギリギリ「暑くない」範疇。


家から一歩外に出ると、モワァ~ッと汗ばむ不快感。

コンクリート造の職場はエアコンなしでは耐えられず、塗装床は結露でベットリ滑りそう。

わが家は4月以降ずっと、晴れても降っても今日も、全くエアコン要らず快適です。


ここではできるだけ数値を挙げていこうとは思っていますが、

数値に表れない「心地よさ」もあって、文章に表現するのはすごく難しい・・・

暮らしてみないと分からないであろう実感です。



ところで・・・。


これぞ石場建てたる所以(ゆえん)!

柱がただ礎石の上に立っているだけ。

当たり前といえば当たり前ですが、地面とはつながっていません。


​(ちょうど1年前2020.5.22 床が張られる前の我が家)​


いや、現在では当たり前ではなくなってしまいました。

日本では千年以上こうして建ててきたのに。

建築基準法で、基礎(地面)に緊結しないといけないことになっているからです。


地震の少ない欧米の建築哲学では地震に耐えられる強固な構造を求め、

その考え方を現行の建築基準法も受け継いでいます。

けれど揺れが限界を超えると、構造体が破断して崩れ落ちます。


一方、地震にたびたび襲われる日本では、

もちろん地震に耐えられるよう強固に木を組んで構造体にするのですが、

限界を超えると地面の揺れが家本体に直に伝わらず、エネルギーをいなして倒壊を防ぎます。


この伝統的な日本の建築哲学は現行の建築基準法に活かされていない

(石場建ては法に規定されていない)こともあり、

限界耐力計算​というビル建築で使われる複雑な構造計算をしないと建てられません。


一般の基礎に緊結されている家は、「​4号特例​」により構造計算しなくてもいいので、

大抵の家は構造計算なんか1棟1棟していないんですよね。

・・・それって、どうなんでしょう?



さて、先の写真。

まだ床も壁も窓もなかったときは、雨が降ると床下に水が入り込んでいたので心配でした。

我が棟梁は「足場などからの跳ね返りもあるから心配ない」と言ってくれていたのですが。


そこで、似たような写真の石場建ての新築を検索して、

そこを手掛けている水野設計室の水野友洋先生に質問してみると、

やっぱり「でき上ったらそんな心配はいりませんよ!」とのこと。


(愛知の石場建て:水野設計室)


確かに今は、かなりの雨が降っても、床下が濡れることはありません。

仮に濡れたとしても、家が浸水しても(地形上ここは浸水しませんが)、

床下がコンクリート基礎に囲まれていないので、水が溜まることはありません。




それだけでなく、床下が何にも遮られていないので、吹き曝し。

濡れてもすぐに乾くし、

柱の元が傷んでいたら丸見えなので、すぐに気づいて補修できます。



でも、動物には心地いい空間じゃないかな?!

ウチの町内には野良猫がいるし、タヌキもイタチ(ハクビシン?)もいます。

流れ者のアライグマにメダカを食われたこともあるんです。


そこで・・・


この家の場合、日伸建設​の棟梁が選んだのは、

ネットを張るという手法でした。

しかもそれと一見わからないように、外側から2列目の柱や束の線で囲む!


と、この稿を書こうと思っていたのは2カ月も前!

竣工から3か月ほどたった3月20日のことでした。

平日の施工で作業を見られず、それっきりになっていたのでした。



​​​(before:向こう側が通々で見えています)​​​


3/19(金)朝。

棟梁に「お願いします」と出勤して、日暮れに帰宅してみると、

「想定以上に手間だった!」と完成まであと一歩というところ。


そりゃぁそうです。

普通の家より床は高いものの、床下に寝転んでの作業です。


翌3/20(土)朝、続きに取り掛かって、昼前には完了。

お疲れさまでした!



(after:2列目に黒いネットが見えます。)​


棟梁は、外周で塞く手法はとりたくなかったんだそうです。

私にしてみたら、これでここにDIYや車や園芸の道具を置いておけるので、ありがたいです。

しかもここは、石場建てとしての見せ場でもありますし。



(今はここに、道具箱と園芸用具が置いてあります。ちょっと物を仮置きするにも便利!)


この動物除け(?)は、いろんな手法があります。​


私たち夫婦は石場建ての家を建てる決断をするにあたり、

石場建ての家の建築現場を2軒見学しに行きました。


その1軒目。

尾上組「大きな吹き抜けのある土壁の家」


その2軒目。

​梓工務店(廃業)「平成の京町家」​


他にも石場建ての新築事例を検索してみました。


上内設計工務 HPより

 

美吉野木材(株)/一級建築士事務所木守 HPより

 

各社いろいろ意匠を凝らしているのが見て取れます。

また、古民家で実際に私たちが見た事例を2~3挙げてみましょう。


わが宿場町枚方は​「鍵屋」資料館

東海道五十七次
(江戸日本橋~(京三条大橋)54伏見宿+55淀宿+56枚方宿+57守口宿~大坂高麗橋)


喜連(きれ)環濠集落の古民家

(大阪市平野区喜連)


そして、​桂離宮松琴亭

さすがにさすがです!


昔の建物は、動物除けだけでなく、忍の者除けの意味もあったのかな?

妖怪除け?・・・いや、塞いでも無駄か?!



こうして見てくると、いろいろあって面白いものです。

石場建ての新築に興味を持ったら、

足元の工夫にも目を向けてみてはいかがでしょう。


古民家カフェや伝建地区や古民家園などを訪れる際、

つい梁組みなど上を見上げてしまいますが、

足元の意匠にも目を向けてみてはいかがでしょう。