「それでもやる? 軒ゼロ住宅」② | 伝統構法の家づくり…大阪の街中で!石場建て/木組み/土壁のマイホーム新築

伝統構法の家づくり…大阪の街中で!石場建て/木組み/土壁のマイホーム新築

五十代も後半、自宅を新築…新建材は怖い!
行き着いたのは地元の工務店。
で、棟梁がつぶやいた。
「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」
「石場建てってなんですのん?!」・・・

「それでもやる? 軒ゼロ住宅」①​ からの続き・・・


【軒ゼロのリスク】


次に、軒の無い家のリスクを少し見ていきましょう。


第1に、

日本は雨が多いということに伴うリスクです。

平たい陸屋根は雨が流れにくくて日本に向かないのは誰でも分かりますが、

軒の有無も大きな問題だということに無頓着の場合が多いようです。
 

住宅品確法では10年の瑕疵担保保険が義務付けられていますが、

保険支払いの9割以上が、雨水侵入関係ということだそうです。

こんなトラブルも、軒がしっかりあれば、多くの場合防げます。
 

国交省が主催して、数年がかりで産学官による住宅に関する同研究が、

国土技術政策総合研究所(国総研)​としてまとめられています。
 

その成果の一部が、

「​長持ち住宅の選び方​」として、分かりやすく公開されています。
 

その「​木造住宅の耐久性を向上させる家造りガイドライン​」を見ると、

軒やケラバの出をとることは、

雨漏りリスクを減らすのに著しい効果があることが明記されています。

 

けれど、こんなことは、わざわざ資料を当たらなくても、

街を歩いていれば普通に目につくことでもあります。


伝統的な家屋では、土壁の外壁を、

雨の当たる部分だけ板張りで覆っています。つまり、サイディングです。

ケラバの影にならない雨に曝されている部分は、

著しく変色しているのが分かります。


 

無垢板なので、見た目はともかく、

百年は防水性能や断熱性を保つでしょう。

これが窯業系サイディングだと、十年でダメになります。

そもそも防水性が無い素材に塗料で雨や紫外線を防いでいるので、

それが劣化して性能を保てなくなり、再塗装のコストがかかり続けます。
 

戦後のモルタル外壁の家を見ても分かります。

恐らく築五十年ほど。これも、ちょうどケラバの影に沿って変色しています。

モルタルも防水性能はそもそもないので、

再塗装しないと雨に曝される部分はこうなります。
 

壁面のリスクは、たかがこの程度?

確かに壁面自体はこまめに塗装し直せばいいのかもしれませんが、

問題は大きく3点。
 

1つは、軒やケラバが無いと、窓に100%雨が当るということ。そのため、

壁面と窓サッシとの境目から壁体への雨水の侵入のリスクが跳ね上がります。
 

2つ目に更に大きいのは、屋根と外壁とのつなぎ目(取り合い部)からの

水の侵入のリスクが跳ね上がるということです。

箱に蓋をするのに、蓋が箱より大きい方が、

上からかかった水が中に入らないなんてことは、自明の理です。
 

軒やケラバの無い家も、

それなりの防水、雨仕舞い・水切りのの工夫はしてあります。でも、

そんな仕組みも無理があって、台風の多い日本では限界があるということは、

雨漏りトラブルの実件数が証明しています。
 

3つ目は、小屋裏(天井裏)換気が難しいということです。

屋根と外壁とのつなぎ目を浸水から守るために塞ごうとすると、

空気も通れなくなるということ。
 

天井裏の空間は断熱に重要な意味を持つだけでなく、

空気が通ることで木材を長持ちさせています。なので、

小屋裏換気口の設置には、品確法における「劣化軽減措置」の一つとして、

仕様の評価基準の規定があります。

 

ところが軒やケラバが無いと換気口を小屋裏に開けられないので、

天井を張らず小屋裏が無い(室内だ)から換気口は不要ということにして、

屋根断熱にするしかありません。
 

そうすると夏の赤外線の直射に断熱材だけで耐えることになり、

室内の上の方に熱気が溜まって、通気できないので

それをエアコンで冷やすしかなくなります。
 

ウチの場合は、小屋裏の木組みを見せたいという理由から

天井を張っていないので、天井裏空間がなく屋根断熱に頼っていますが、

ケラバをしっかり出してあるので妻面のてっぺん(棟木直下)に

換気口を開けて外気を通り抜けさせることができるように設計しました。



(③に続く)



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