大手ハウスメーカーと無垢材 | 伝統構法の家づくり…大阪の街中で!石場建て/木組み/土壁のマイホーム新築

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五十代も後半、自宅を新築…新建材は怖い!
行き着いたのは地元の工務店。
で、棟梁がつぶやいた。
「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」
「石場建てってなんですのん?!」・・・

先日(1/13)、梅田の大手ハウスメーカーのサテライトルームで、

無垢材の名栗仕上げのフローリングを見たような・・・と妻が言うので、

そういえば・・・と、グランフロント北館の​​住ムフムラボ​へ。

積水ハウスが運営する体験型施設で、

住まいに全般に関する様々な展示を体験することができます。

関係する雑誌や書籍も3,000冊以上開架されていて、

ブックカフェでリラックスしながら情報収集も楽しめます。
 

その一角に、「いごこちのカタチ」の体験コーナーがあり、

そこは名栗の無垢材フローリングに上がりこむ形になっています。

聞けば、北米産のブラックチェリーに機械名栗加工したものだとか。

広葉樹なので杉などと違って固く冷たい肌触りの材なのに、

名栗の浅い凹凸が温かみのある軟らかい感触を演出しています。

 

昨年末(12/24)の記事「​名栗@原田銘木店訪問​」で

匠の手技による名栗をご紹介しましたが、

この機械名栗はパターンが画一的過ぎるかなと思う程度で、

正直言って素人には一見見分けはつきません。
 

機械加工とはいえ、大手ハウスメーカーに

このようなオプション設定があるのは、一定評価できるでしょう。

見る人が見れば機械加工とすぐ判別できても、

普通の人にしたら、それっぽかったらいいというのが懐の本音。
 

ただ大手ハウスメーカーでは、注文住宅といっても

標準仕様を持つ企画住宅で、それを「商品」と捉えています。

当然可変性には限界があって、

もし名栗の無垢フローリングにしたいと思っても、

別料金が設定されたオプション枠の中でしか選べません。
 

企業組織としては建築にかかるコストを圧縮して利益を出すために、

なるべく工期を短くする必要があるわけですが、

施主の自由な希望にいちいち対応していると、

仕入れ的にも人手的にも大きく影響するからです。
 

それと、大手ハウスメーカーが基本的に無垢材を扱わないのは、

無垢材に特有の狂いによるクレームを恐れるからです。
 

そもそも木材は長い時間をかけて、収まるところに納まるよう

製材されたときの形を微妙に変えていくものです。

​無垢材を扱うには、そのクセを読みながら施工する必要があります。

                                             (国産無垢杉材フローリング)
しかし、大手ハウスメーカーには、それができません。

なので顧客が無垢材を志向しないよう営業職の人がセールスするのは、

会社としては当然の要請と言えるでしょう。

実際、無垢材にしないように誘導するマニュアルの話しも聞きます。
 

それでも近年の「消費者」の自然嗜好を受けて、

大手ハウスメーカーも無垢材を扱わざるを得なくなってきています。

けれど、私の知っている大手ハウスメーカーも無垢材は、

木組みの家を手掛ける本物の工務店の物とは違うようです。
 

大手ハウスメーカーの住宅展示場でも聞いてみましたが、

無垢材と言っても確かに合板ではないものの、

狂いが出ないよう高温乾燥や特殊な塗装で

形状安定化処理した硬く冷たいもののようです。

これでは肌ざわりはもとより、

呼吸という無垢材の特長も制限されてしまうのではないでしょうか。

狂いが出ないことを謳えば謳うほど、

それは即ち木の本来持つ良さを殺すということ。
 

であればこそ、名栗加工は、規格型の機械加工とはいえ、

大手ハウスメーカーの無垢材の短所を一定補おうとするものでしょう。

いいところに目を付けたなと思いました。
 

とはいえ、このような取り組みも、

国産材の有効利用にはあまり貢献しそうにありませんが。
 

それを受けて、拙宅を手掛けている棟梁に話題をふってみました。

(「​工房に新年のご挨拶​」2010.1.14記事)

 

すると、中途半端に自然素材を謳っている地域の工務店には、

大きな打撃になるやろうな・・・とのこと。
 

大手ハウスメーカーが使うような類の無垢フローリング材などは、

地域の工務店でも永大の既製品などを仕入れれば、

無垢の材木を持っていなくても、特段ノウハウが無くても、

自然派住宅とか銘打って容易に建てることができます。
 

しかしそれでは、大手ハウスメーカーの不自然な無垢材と同じこと。

これまで自然素材で大手ハウスメーカーと差別化を図ってきたつもりが、

その分野で競合するようになると、資金力や企画力や宣伝力などで

太刀打ちできないケースがでてくるからです。
 

こうして独立経営が成り立たなくなり、

大手ハウスメーカーの下請け孫請けと軍門に下るか、

逆にこれを機にさらに独自の道で差別化を図り事業を発展させるか。
 

家が欲しいと思ったらまず住宅展示場で

大手ハウスメーカーの営業が窓口になる今、

消費税が10%に上がり住宅建築への意欲が萎えてしまった庶民が

ローコスト住宅に流れようという今。


​​                               (国産無垢うづくり杉材フローリング)

そんな時勢の中で、地域の工務店がどう「本物」の家を届けるか。​

施主は素人とはいえ、本物を実際に知る機会があれば、

紛い物との違いは分かるようになるものです。

そんな「本物」への理解をどう広げるか。

その奮闘に期待したいと思った住ムフムラボの機械名栗無垢床でした。

 

 


いい家は無垢の木と漆喰で建てる [ 神崎隆洋 ]


いい家は無垢の木と漆喰で建てる(続) [ 神崎隆洋 ]

 

 

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