木取り・墨付け・手刻み | 伝統構法の家づくり…大阪の街中で!石場建て/木組み/土壁のマイホーム新築

伝統構法の家づくり…大阪の街中で!石場建て/木組み/土壁のマイホーム新築

五十代も後半、自宅を新築…新建材は怖い!
行き着いたのは地元の工務店。
で、棟梁がつぶやいた。
「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」
「石場建てってなんですのん?!」・・・

ようやくのことで建築確認がおりたのが8/22。

時を同じくして、材木の木取り・墨付け・手刻みが始まりました。
 

日伸建設のブログ8/20付​に、

「田中棟梁担当の石場建てのお家の木取り作業が今日から始まりました。

数年間倉庫で天然乾燥させた赤松梁。

どんなお家に仕上がって行くか楽しみです。」と。
 

また、​同日の​日伸建設のフェイスブック​にも、同様に投稿が。
 

「木取り」とは、大辞林によると、

切り倒した木から用材を得るために切る位置などを決めること。

また、それによって採伐すること。

とあります。
 

日伸建設では、梁などの赤松を自分たちで山に伐りに行き、

何年か寝かせて天然乾燥しています。

原木から必要な寸法や品質の木材を自分たちで切り出しているわけです。

 

どんなふうに使うかを思い描きながら木を選んで伐るので、

その木の生育条件(斜面や太陽や風向き等)を直に把握しており、

これから建てる家の用途に合わせて的確な木取りができます。

 

「墨付け」とは、大辞林によると、

墨糸・墨差しを用いて木材などに線を引いたり印をつけたりすること。

とあります。
 

日伸建設ではプレカットの材木は使わず、

無垢天然乾燥の材木に手作業で墨を入れ、手刻みしています。

(といっても実際には鉛筆も使うわけですが・・・。)
 

「プレカット」とは、

現場施工前に工場などで原材料を切断したり加工を施しておくこと。

今ではかなり複雑な加工でも機械で量産でき、大工の技量を問わないため、

ほとんどの新築で採用されています・・・というか、

ハウスメーカーはもとより、

手刻みできない工務店や大工が圧倒的に多いんですよね。

 

無垢天然乾燥の材木を使うということは、

柱材に背割りを自分たちで入れるところから始めないといけません。
 

「背割り」とは、住宅建築専門用語辞典によると、

芯持ち材の乾燥収縮による割れを防ぐために、

あらかじめ見えない背の部分に、樹心に達する割れ目をつくっておくこと。

背割りがあることで、木の中心までしっかり乾燥し、また、

乾燥過程で発生する割れの代わりになり、

別の場所への割れが発生しにくくなる・・・。

とあります。

これについては、ウチの墨付けに先立って、もう1年ほどだったか前に、

柱材に切れ目を入れて楔を打ち込んであるのを

見せてもらったことがあります。
 

一般的にはプレカットの柱材を材木屋から買ってきて、

そのまま組み立てるだけなんですが、

日伸建設では、こうして必要な柱より一回り太い柱材に

背割りをしておいてから、表面に鉋を手作業でかけていって、

例えば5寸角などに削って化粧仕上げしていくのです。
 

柱の上から石膏ボード等を張り付けて柱が見えなくなる大壁だと

柱材の表面はどうでもいいのですが、

伝統構法では真壁なので柱がそのまま見えるので、

表面仕上げも手を抜けません。
 

そうして下ごしらえをしておいて、

建築確認がおりて設計が確定した時点から、

いよいよ墨付けが始まったわけです。

 

石場建てということは、

コンクリート布基礎の上ではなく地面の礎石の上に直接柱を立てるので、

普通の在来工法の柱より一回り長い材木が必要です。

しかも伝統構法は金物を使わず仕口・継手と貫で組むので、

筋交いと金物で固める在来工法より

一回りも二回りも太い材木が必要だし材木の量も何割か増し。
 

さて、一般に普及しているプレカット材、

継ぎ手や仕口の種類は限られ、

部材のホゾは45mm~55mm程度の浅いものようです。

しかもミリ単位の正確な製材と言うと精密なように思われますが、

凸と凹がピッタリと合うということは、スッとはまって施工は楽な一方、

衝撃が加われば抜けるということです。

実際、建て方が始まりプレカット材で組み上げた段階では、

梁や屋根などに載って作業をしていると、グラグラ揺れるそうです。

なので、ボルトや金物を打ち込み締め上げるのが前提となっています。

(金物のデメリットについてもあるのですが、稿を改めます。
 

それに対して、伝統構法の仕口・継手では、

長いものになると360mmを超えるそうです。

これは機械ではとうていできません。

材がずれたり抜けたりしないように柱に差し込まれる部分が複雑で長いので

金物を設置するまでもなく込み栓などで強固に固定されます。

(石場建てでなければ、建築基準法上最低限必要な金物を使用しますが。)

 

手刻みと言うぐらいですから、もちろん手曳き鋸や鑿や鉋などを使います。

大まかな部分では電動工具も使いますが、仕上げは手道具。

これらは、使えればいいというものではなく、

まずは自分で砥げないと話になりません。

日伸建設の棟梁は鉋の薄削り全国大会で賞をとるぐらいの匠ですが、

薄く削れるからどうというより、

それだけの鉋砥ぎができるということでしょう。
 

「そんだけの丁寧な仕上げしてあんねんから、柱に画鋲も刺したらあかんで!」
と、社長さん(親方)に冗談めかして言われるほど(^-^;)!
 

その仕口、プレカットならスッとはまるところですが、

手刻みだとそうはいきません。

というか、微妙に凹より凸のほうが大きく刻んであるのです。

だから、建てるときは、大きな木槌で叩き嵌めていきます。

そして組み上がったら、もうそれだけでグラグラしません。

硬木でできた栓を挿し込めば、

金物なんかで留めなくてももうびくともしない頑強さ。

しかも地震動などの衝撃を、しなやかに受け流します。

 

このように、手作業での墨付けや手刻みは、その木が

どの地方のどんな山の斜面のどっち側で育ったかなどの個性を読み解き、

建てる家のどこにどんな向きで使うかを、

強度や意匠も考え合わせながら行われます。
 

まさに伝統構法と棟梁の技の真価発揮です。
 

それを思えば、墨付け手刻みで数か月みといてほしいというのも納得です。

ウチは予算内で依頼しているだけだし借家でもないので
待てないわけではないのですが、その期間、時間も経費と考えると、

施主側にはいろんな意味でゆとりが必要ですし、

工務店にも技量だけでなく体力もかなり必要ではないかと思います。
 

まさに施主と工務店が一緒に建てる!

その姿勢がお互いに必要だと思います・・・住み家は一生もの、

いや、世代を超えて受け継がれていくべきものですから。

 

家が欲しいと思ったとき、普通はまず住宅展示場に行って

ハウスメーカーの営業さんに相談してみるのではないでしょうか。

それ自体は悪くはないと思いますが、

こだわりの無垢材自然素材の家をと夢を語ってみても、

「今どき、予算内でそんなことのできる大工、いてまへんで!」などと

嘲笑されるのがオチじゃないでしょうか。
 

でも、たまたま日伸建設に出会ってから改めて調べ始めたら、驚いたことに

全国あちこちにけっこうたくさんあるんですよね! それが可能な工務店が。

伝統の匠の技をお持ちの大工さんも、たくさんいらっしゃるんですよ!
 

ぜひ、ハウスメーカーの営業さんの言葉を鵜呑みにしないで、

自分で勉強し、探してみることをお勧めします。

自分の家を、「買う」のではなく、「建てる」のですから。

 

 


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