壁土づくり | 伝統構法の家づくり…大阪の街中で!石場建て/木組み/土壁のマイホーム新築

伝統構法の家づくり…大阪の街中で!石場建て/木組み/土壁のマイホーム新築

五十代も後半、自宅を新築…新建材は怖い!
行き着いたのは地元の工務店。
で、棟梁がつぶやいた。
「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」
「石場建てってなんですのん?!」・・・

6月25日のこと。

あとしばらくは適判も建築確認もまだ・・・という時期ですが、

今秋の着工を目指して、壁土づくりが始まりました。

土壁の土の仕込みは、梅雨から夏を越すといいんだとか。
 

土壁・・・? 柱を現す真壁。

柱間に竹小舞で壁を編んで、そこに土を塗り込めていく壁。

表面は、漆喰や珪藻土やそとん壁などを鏝で仕上げます。



その土は、棟梁の手配で奈良県香芝市の業者さんが運んできてくれました。

交野山の麓のミカン畑の一角に仮設された大きなプールにたっぷり・・・

これでも全量ではないそうです。
 

近づくと、独特の匂いがします。この匂いは、感じ方が分かれるところ。

なぜか?・・・発酵臭だからです。チーズや納豆は、臭い? 美味しそう?

私には、岡山の親戚の家で子どもの頃に嗅いだことがあるような懐かしさ。


この土は業者さんが秘伝のソースのように継ぎ足し継ぎ足し熟成させてきたもの。

土に刻んだ藁を混ぜ込むと、藁に付いている納豆菌のような菌で発酵していきます。

こうして土に粘りが生じ、藁がスサとなって強い壁土になります。
 

運んできたときには既にかなり発酵が進んでいるので、

かき混ぜてよく見ると、ごく一部未発酵の土色の部分以外は、

ほとんどが青っぽくなっています。


 

このままでは硬くて塗れない(左官さん曰く「抵抗で手が骨折してまう!」)ので、

水を大量に入れ、刻んだ藁を継ぎ足して、混ぜ込んでいきます。


 

カミさんと手伝わせてもらいましたが、これは文字どおり骨の折れる作業!

長靴を履いてプールに入っている左官さんと棟梁は、泥土から足が抜けないほど。

私たちは長靴がないので、プールの外から鍬などで掻き混ぜますが、重い!!


 

左官さんが言うには、「土が服に付いたらナンボ洗ろても取れんで!」と。

なるほど、泥染めの原理ですね。大島紬もですからね。そういえば、そんな色です。
 

夏前に仕込んで寝かすと良い壁土になるとはいえ、

木陰もない空き地で夏至頃の強烈な陽射しのなか、小一時間でヘトヘトに。

このあと乾燥を防ぐために藁を一面に被せ、ブルーシートを掛けて、

数日に一度掻き混ぜる作業を繰り返していくそうです。
 

数か月後?、竹小舞を編んで下塗りをするときには、

ぜひ自分でもやってみたいと思います!

中塗り上塗りは熟練の技が必要ですが、下塗りなら何とかなるでしょう。
 

セキスイハイムは論外としても、大手メーカーの合板の壁や2×4の壁では、

施主自身が建築工事に携わる余地はありません。

こういったことも、地元の工務店と一緒に建てる

伝統構法の醍醐味と言えるでしょう。
 

さて、昨今の新築はほとんど、

柱を覆って柱間に合板か石膏ボードなどを貼る大壁。

壁の中は空洞なので、そこに断熱材を詰め、

表面はビニールクロスを貼って終わりというのが主流。
 

柱は隠すのでどんな材木を使っていても分からないし、

通気層を敢えて設けないと湿気が溜まって結露の危険性があるし、

壁の表面がビニールということで、吸保湿性はないし、

集成材や合板や塩化ビニルや接着剤などから化学物質が蒸散するし。

でも工期は数日、材料費も人件費も安価で、ハイリスク/ローコスト。


 

それに対して、伝統的な土壁は、真壁。

柱がむき出しなので、柱材は低品質のものは使えません。
 

素材は、田んぼの土に刻んだ藁と水を混ぜて捏ね、

長期間発酵させて粘りと強さを醸し出します。

風土と文化に根差した、これぞ日本!
 

数か月後に熟成された壁土を、何日もかけて手作業で編んだ竹小舞に、

塗っては乾かし塗っては乾かし下塗り中塗り上塗りと何度か繰り返し、

さらに漆喰などで仕上げる、手間も時間もかかる方法です。

高度な熟練の技能が必要なので、できる職人も限られます。
 

一方で、断熱性能は高いとは言えないまでも蓄熱性能(熱容量)が高いので、

夏は涼しく冬は温かく温度変化が穏やか。

また、現しの無垢材の柱と併せて吸放湿性能が抜群なので、

結露の心配がなく爽やかな空気を保ちます。
 

何よりも、健康を害する恐れのある化学物質の蒸散がない安全性や、

解体したときに処分できないゴミにならず自然に還るのが魅力です。

まさに、国連のSDGs(持続可能な開発目標)にかなった工法。
 

家を建てたいと思ったとき、まず大手ハウスメーカーに飛び込むと、

営業の人に「今どき土壁のできる職人なっていませんよ。」と言われるでしょう。

でも、利益誘導のための全くのウソ!です。
 

ぜひ信頼できる地元の工務店に、まず相談してみましょう。

そして、左官に活躍の機会を!

・・・伝統技能と古来の文化と、何より自分の生活を守り豊かにするために。

 

 


土壁・左官の仕事と技術 [ 佐藤嘉一郎 ]

 

 

壁土づくり☜click(元記事へ)