私達のように身体の片側が痲痺すると、1段ずつ両足を揃える『1段2足』を訓練するようです。
そして、階段を昇るときは、良い方の足(麻痺のない足・非麻痺側の足)を先に上げ、悪い方の足(麻痺のある足)を揃えるようにして昇る。
降りるときは、悪い方の足を先に降ろす。
さて、私は急性期病院入院中に、見守りは必要ですが杖歩行が可能となりました。そして、脳内出血の手術から一ヶ月で回復期リハビリテーション病院に転院した翌日には、杖なし歩行の訓練が始められ、数日後には、理学療法室にある模擬階段で、昇り降りのテストを受けました。
その時「階段を昇ってください」と言われて、手すりをもって『1段1足』で昇りました。
どちらの足を最初に上げたのかは覚えていませんが、手すりを握って体を引き上げることはしませんでした。
降りるときも手すりに手は添え『1段1足』。この時にもどちらの足から下ろしたのか覚えてはいません。
私の動作を見て、「本物の階段で練習しましょう」と言うことになりました。
そこは、手すりのない階段でした。
そして、この階段で毎日、療法士の見守りで練習しました。
入院2ヵ月になる頃には『一段飛ばし上がり』の練習もしました。
これは足に力をつけるためだったようです。
私は平地を歩くときに、発病前と同じように、どちらの足を先に出すか考えたことがありません。
階段の昇り降りの時も、どちらの足を先に出すか考えたことがありませんでした。
入院した病院には10人ほどが入れる浴場がありますが、浴槽の内外には数段の階段があります。
この時にナースが、『階段を昇るときには「良い方の足」からですよ。降るときには「悪い方の足」からですよ。』と言っていましたが、意味が分からなかったのを覚えています。
階段を昇り降りするためのアプローチはそれほど難しいことなのか、私には理解できません。
もちろん痲痺足の状態によりますが、『1段2足』と『1段1足』では足の使い方が違うかもしれません。
しかし、私のように『良い方の足』から降りる方法を指導することは悪いことでしょうか。
私の、階段の昇り降りが成功したのは偶然だとは思えません。
試した療法士はいないのでしょうか。
なお『悪い方の足』から下ろさないと危険だ。とする説明は理解できます。
理解できますが『良い方の足』から下ろすことを何例ぐらい試した結論なのでしょうか。
天体が動くのか地球が動くのか、それは難しい問題なのです。
でも地球から見れば天体が動くのだし、天体から見れば地球が動いているのです。さらに別の天体から見ると地球も天体も動いているのです。
だからどれも正しいのです。
これが相対論の始まりです。
基本と言われる方法を別の視点で捉えてみることは新しい発見や発明に繋がります。ここに科学の進歩・発展があるのです。
一つの説に捕らわれ過ぎないことが大切ではないでしょうか。
ここに、痲痺になられた療法士さんの意見を添えて、締めくくります。
【私は病気になる前は基本のやり方(良い方の足から昇る、悪いほうの足から降りる)で患者さんや利用者の方に指導していました。教科書にもそう書いてあります。
でも、いざ自分が障害を持ってみて、逆のほうがやりやすいと思いました。
つまり悪いほうの足から昇って良い方の足で降りるのです。
担当のPTもそのようなことを言っていました。
なぜこちらのほうがやりやすいかと言うと、患足を後ろにすると引っかかりやすいからだと思います。
ただそれも、その人の足の状態によるので、一概にどっちが正しいというのはないのでは、と思っています。】