若様と食事に行っても変わらず学ラン姿のままでありましたので、目立つ事を嫌う若様は一計を案じ、要らなくなったと称してはせっせと團員氏に服をプレゼントしてくれたりしておりました。体型が違っていたにも関わらず、頂く服がジャストフィットしたのですから、きっと見繕って買って下さったのでしょう。
また團員氏が服の裏に付いているタグを見ては「なぬ?ばー…さす?」と首を傾げておりますと「ヴェルサーチって読むねん」と内心「物を知らん奴やなあ…」と思いながらも親切に教えてくれたりしておりました。
ちなみにこの当時、流行りのヴェルサーチ、スーツならば上下で30万円はするという代物で、奇抜なデザインで一世を風靡したのでありますが、いかんせん高価過ぎてなかなか手が出るブランドではなかったのですが、團員氏の自宅のクローゼットには奇抜なデザインの服が並ぶ様になりました。
年が明け後期試験も終わり、後は卒業式まで大学は休みに入ろうとする頃、若様は改まって團員氏を食事に誘います。果たすべき團務もなく、暇を持て余しております團員氏は二つ返事でOKします。「では明日に」との約束になりました。しかも「ちょっと良い物を食べに行くから、それなりの服装をして来て欲しい」と、これまでにはない要望を伝え、その日は別れたのでございます。
若様は特にこの日を狙っていた訳ではありませんが、結果的にこれまで贈ったアイテムを組み合わせればそれなりにフォーマルな恰好が出来るだろうと安堵しておりましたが、実に甘い判断でありまして、翌日の夜、三宮の待ち合わせ場所で若様の目に飛び込んだのは学ランに紫と黄を基調としたヴェルサーチのマフラー、同ブランドの妙にステッチが入りまくった真っ白なコートに身を包んだ珍妙極まりない團員氏の姿であります。
天を仰ぎ溜息をつきながらも、この團員氏らしさに苦笑いしながら予約している店に向かうのでありました。そして次に驚くのは團員氏の番であります。無論、本人は知る由もありません。
甲南大學應援團OB会
八代目甲雄会広報委員会