第22話 ワガママな男達
「歴代でワシほど後輩に優しい團員はいなかったに違いない」ととんでもない勘違いをしていた幹部は多数、おりました。またそう自負している者こそが下級生にすれば極めて厄介な存在であったりする訳であります。
以前もご紹介した腹筋王子、真夜中に突如の呼び出しに、大事件の勃発か?と慌てて駆けつけたところ「腹筋するから、足を持ってくれ」と平然と頼んだ御仁などはまさにこの範疇に入る人物でありましょう。
この手の話は日常の何気ない瞬間に散りばめられております。ある幹部を後部座席に乗せて緊張の面持ちで運転する下級生。交差点に差し掛かった所で黄色信号と相成りまして無難に停車したのは妥当な判断と言えます。ところが「おい、行けたんとちゃうか?」とのお言葉。そう仰るのであれば仕方ありません。「押忍」と答え学習する下級生。程なく同じ様な状況を迎え、学習したところをアピールすべく交差点を突っ切ります。ところがあろう事か「危ないやないか」との意外な反応でありまして、内心「どないせーちゅーねん!」と思いながらも「押忍、失礼しました」と下級生の悲哀を噛みしめる事になります。
妙な食のこだわりがあったりする御仁に振り回される事は文字通り日常茶飯事であります。三宮に人気の餃子専門店がかつてございまして、メニューは餃子とビールしかないのでありますが、これが滅法美味いのであります。ところが中華料理=餃子+炒飯+おかず(その日の気分で内容に変動あり)を信条とする某幹部。その人気店の餃子は好きでありますが、他のメニューがない事にかねがね不満を抱き、長年の研究の末、近くのお気に入りの中華料理店に、人気店の餃子のお持ち帰りをお持ち込みするという荒技であります。
下級生を引き連れ中華料理店の一角に陣取り、あれやこれやと餃子以外の品々をオーダー、すると懐からお金を取り出し「すぐそこの餃子屋に行って餃子10人前を買って来い」とのご無体な命令。しかしその指揮命令系統に組み込まれている下級生としては任務は遂行せねばなりません。
程なくお使いを終えニンニクの匂いを放つ袋を片手にお店に戻りますが、案の定、店員さんより「あの、お客様、持ち込みはお断りさせて頂いているのですが」と注意を頂く羽目になります。「そこを何とか」と正攻法でお願いする下級生のところに対処に慣れた上級生がやって参り「すいません、以後、気をつけますので、今日のところは目をつぶって頂けませんか」と学ランの前をはだけビール片手に「ガッハッハッ」と上機嫌な幹部の方を指差します。持ち込み常習犯である上に1発撃ち込めば10発撃ち返してくると言われた顎から繰り出される巧みな弁舌はネオン街でも有名でありまして、店員さんも目をつぶらざるを得ない羽目に陥るのであります。
この手の話は掃いて捨てる程ありますので、いずれネタに困った時にシリーズ化致しましょう。
八代目甲南大學應援團OB会広報委員会