8.洋食「赤ちゃん」
三宮と申しますか神戸市内に「赤ちゃん」という名の洋食屋が多く見られます。最近は三宮も余り出歩いておりませんので、正確な数に自信はありませんが、現在でも少なくとも三宮だけで2軒はございます。
以前も気になって調べた事がありますが、昭和24年に元町で創業され、昭和27年に三宮の東門街に移ってから「赤ちゃん」として次々と暖簾を分けて増えて行ったそうであります。チェーンでもフランチャイズでもなく、元々のお店で修行した方々が自然な暖簾分けで広がっておられるので、同じ「赤ちゃん」とは言えお店によって特徴があり、メニューも味も異なるのであります。
私共が贔屓にしておりましたのは住所で申し上げれば中央区下山手通1-1、生田新道と生田筋と東門街筋に囲まれた狭いエリアの中の生田新道に面していたビルの1Fで営業されておられました。店内は10名も座れないであろうという狭さで、メニューは少なかった様に記憶しておりますが、ハンバーグとハヤシライスが人気でございました。
ハンバーグは昔の洋食屋のクラシックなタイプでありまして、デフォルトで目玉焼きが乗っております。ハヤシライスはルーが極めて少なく牛肉と野菜をデミグラスソースで炒めた野菜炒め状の具がご飯の上にかけられた様な状態で出て来るのでありますが、これが抜群に美味いのであります。
ただ欠点がありまして、どのメニューもボリューム感がございません。團員2人で店に入り「何にしまひょ?」と尋ねられ「えーと、ハンバーグとライスとハヤシライスとオムライスとビール」と答え「あいよ」と立ち去ろうとする店員さんに「それはワシが食うヤツだけやから、こいつの注文も聞いたって」と慌てて呼び止める事も再三ございました。そういう状態ですからコストパフォーマンスは良いと言えず、少々、懐が温かい時にしかお邪魔出来ませんでしたが、飲みに行く店を1軒、減らしてでも食べに行きたい衝動を抑えかねる時もありました。
阪神大震災で入居しておられたビルが全壊し、取り壊れたのを機にこのお店は姿を消しました。市内にある「赤ちゃん」を食べ歩きましたが、どれもこの「赤ちゃん」とは違いました。
東門街の入口という抜群のロケーションで、美味なる洋食を食べながら、同期達と今宵の行動プランを話し合っている時間は極上の時間でありました。もうあの楽しい時間は戻って来ません。
八代目甲南大學應援團OB会
広報委員会