第17話 黄河
酷暑が続く中、應援團OBとしてはやはり夏合宿の嫌な思い出が脳裏を過ります。よくもまあ、あれだけ過酷な一週間を過ごしたものだと思うのでありますが、一週間も寝食を共にしておりますと、様々な出来事が起こります。
黄河と題しましたが、中華人民共和国で合宿を行った訳ではございません。ある夏合宿、午後の練習も終わり入浴の時間になります。相撲部屋の如く上級生から入れるシステムなのでありますが、幹部の背中を流すべく1回生が一緒に入ったりも致します。
さて、幹部が1人しかいない團長氏、察しの良い読者の方は「ああ、あの人か」と思い当たる節があるやもしれませんが、肯定も否定も致しません。この團長氏、自らが苦労してきた事もあり、当時としては開かれたファミリー感覚の應援團を志向しており、入浴時もタオルを肩にかけ、下級生の部屋を開けては「おい、風呂に行くぞ」と誘ったりするのであります。世が世なら4回生と1回生、言葉を交わす事さえない関係でありますが、團長氏は実に気さくでありました。
ところが2、3回生は妙に遠慮しており、浴室の広さの問題もあって團長氏と1回生諸氏が一緒に入浴する羽目になるのでありますが、2、3回生の反応が芳しくない理由をやがて知る事になります。
洗髪したり体を洗う團長氏の傍らで合宿の感想等を話しながら、体を清める1回生。ふと視線を下に遣りますと、黄色い液体が黄河の如く排水溝に向かって流れて行くではありませんか。「??」事態を呑み込めない1回生は黄河の上流を目で追いますと、あろう事か團長氏が源泉であります。何と余程、風呂が気持ち良かったのか、團長氏、洗体しながら放尿していたのであります。
1回生達が「ギャー!」とか「うわぁー!」とか叫んだのかは定かではありませんが、團長氏は泰然自若の構えでありまして、「何を騒いどるんや。どうせ流れるから一緒や」と平然と湯船に身を沈めるのでありました。
1回生より團生活が長い上級生は團長氏の行動パターンを熟知しており、遠慮していた訳であります。
八代目甲南大學應援團OB会広報委員会