「Mot!hai!ba!… DZO!!」
(1、2、3、乾杯!)

大きなプラスチックボトルに入ったビールは、正直おいしいとは言えなかった。
生ぬるくて、アルコールが入っているのか疑うほど薄い。
しかも、そのビールに氷まで入れて飲むのだから、

そりゃあもう、どんどん薄まっていく。
でも、アルコールが得意じゃない僕には、
水みたいにすいすい飲めてしまった。
――これが後になって、あんな大変なことになるなんて、
そのときの僕はまったく想像していなかった。


ここは、タントアンの工場からそう遠くない場所にあるビアホイの店。
ビアホイとは、街の飲み屋で売られている工場直送の生ビールのことだ。
そう、ここは街の飲み屋。
雑居ビルに挟まれて建つ三階建ての、その一室。
僕の歓迎会の会場だ。


寮での歓迎会、王宮料理店での歓迎会に続き、
これで三回目の歓迎会になる。
少し照れくさいけど……やっぱりうれしい。

「Is it good?」
エンジニアのトゥさんが、運ばれてきた料理がおいしいかどうか聞いてきた。
後藤:お、おいしいよ。たしかベトナム語で ngon…… Ngon lắm!
 でも、……カーイ・ナイ・ラー・カーイジー?(なに、これ?)
おいしいのは間違いない。
ただ――自分が今、何を口にしているのかだけが、まったくわからなかった。


トゥさんの隣に座っていたワーカーの子が、
「Đây là chân ếch.”」と教えてくれた。

後藤:ếch…??

「frog 、frog legs …」


後藤:カ、……カエルの足!!


みんなはケンタッキーのチキンでも食べるみたいに、
当たり前の顔でうまそうに食べている。


……言われなきゃ、普通に美味しい。
後藤:ん、……じゃ、これは? カーイジー??
ほんとに、運ばれてくる料理が全部“何これ?”なのだ。


Thảo「Món này ngon!」
(これ、おいしいよ!)
いつも大きな声であいさつしてくるワーカーのタオちゃんが、

僕の目の前に置かれた“何か”を
「おいしいから食べてみて」と、僕のお椀に放り込んだ。


その物体は、どう見ても“何かの形”をしていて、
中央の炭火でワーカーたちがあぶっている。
怖々、トゥさんに聞いてみた。


「a newly hatched duckling…」
……ん?


孵化直後の家鴨(ヒナ)を焼いたものらしい。
「very delicious food!」


ほとんど肉のついていない小さな家鴨(ヒナ)を炭火であぶって、
するめみたいにしゃぶっている。


……ふぅ(^^;)
こればかりは、両手を広げて全力で拒否した。

 

そしてー

また、正体のわからない料理が運ばれてきた。


後藤:…… cái này là cái gì?  

カーイ・ナーイ・ラー・カーイジー?

(なに、これ?)