ノットヘブンジャム? Ⅷ | 。゜・アボカド・。゜の小説&写真ブログ アボカリン☆ のお団子ケーキティータイム♪

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アボカド、お茶、藤井風ちゃん、書き物が好きです。お話(オリジナルの小説)、etc.書かせていただいています☆お団子やクッキー、ケーキ片手にお読みいただければ、幸いです。








圭樹春海は。

「小指をくれたら信じてあげる…」

と、したたかに男の愛をねだった吉乃夏美を、冷たくも美しい蛇だ、と仮定してみると。その―奪い奪われる共食い的な―関係上から見ても、広峰蒼の揶揄は、満更外れてはいないのだろう、と感心させられたのである。




…神話とかで。神様の使いになる事もある高貴でキレイな蛇が吉乃さんだ、とすると―。俺はその吉乃さんに巻き付かれる大木―、いや大樹になりたい…。生きていく上で。蛇には巻き付く対象が絶対、必要なハズだから。
彼女が俺と言う樹を選んで、その枝に。安心して巻き付いて―寄りかかったり、ぶら下がったり、力一杯尻尾でペチペチ叩いたり、トグロ巻いたりして遊んだり休んでくれたら。考えただけでワクワクする。何て幸せで理想的な光景なんだろ。どんだけ楽しいんだよ…。
でも、巻き付かれたり、ペチペチ叩かれたい願望があるなんて―、俺ってやっぱり、ドMだな。我ながら、ドMの体現―真髄だわ。
そう言えば。
広峰のヤツ、サラッとかわしてたけど、さっき何気に吉乃さんの裸見てたよね。まさか、吉乃さんが、俺と広峰が話してる短時間の間に、かけてたシーツはねのけて、裸で寝てるなんて思ってなかった俺も悪いんだけど。

『他人(ひと)の女がベッドで全裸になって寝てる姿見ても、つまらんだけだ』

どうしてアイツは、あんないいモノ見て、あれだけ冷静でいられんのかね? 俺の彼女の、俺だけの裸を―。まあ、喜ばれても腹立つし、どっちにしてもムカつくんだけどね…。アイツとは相性が悪いのかな? やっぱり殺してえ。
まあ、これから、いろんな事で口裏を合わせてもらう事もあるかもしんねえから、今回だけは見逃してやるとするか―…。




などと、思いつつ。

圭樹春海は、抱擁している時と何か飲んだり食べたりしている時以外は、眠ってばかりいる吉乃夏美の髪を撫でながら。ポツリとつぶやいた。

「熱も下がったみたいだし…。良かったよね。やっぱり運動がいいんだな、汗流して体を動かす運動が。
…いや、違ったね」

原因が分かったから。解決されたから。熱が下がったんだ。吉乃さんを悩ませていた悩みが消えたから―。

それと。金曜日の夜。




「俺、今日事務処理してたんだけど、…って、こんな内容の表作るんなら、この論理式であってんのかな?
イフ…」

「…、それだったら、オアじゃなくて別の使った方が―」




 って。

イフ関数を吉乃さんに訊いてる途中で、愛憎渦巻く修羅場になっちゃったから、答、教えてもらい損ねちゃったなあ。=IF(OR…)か、=IF(AND…)か、また目ェ覚ましたら、教えてもらおっ。

つかさあ、その修羅場をどうにかくぐり抜けた後なんだけど。




「―圭樹くん。こんな深刻な場面で、そんなふざけた発言。バカにしてますね? それに…、"血の結婚指輪"なんてヘンタイにもほどがありますよ?」

「本領発揮、と言って欲しいね。言葉責めなんて、最高~。興奮するじゃん~」

「…真面目に悩んでたのが、バカみたい…、私」

「ねえ、ねえ? 愛してるよ~、夏美~。…?、…。
…って。いいの? 本当に」




「ねえ、ねえ? 愛してるよ~、夏美~。…?、…」

「…って。いいの? 本当に」




この間にあった、会話―やり取り。あれ、ここ最近の中じゃ、ダントツ俺的ナンバーワンヒットだったんだけど―。

と。圭樹春海は振り返る。




『二人で気持ちいい天国、行こ? じゃなけりゃ―』

「…イフ…、=IF (NOT(IT=”天国”)…、,”ベッド”)」




圭樹くんとの初めては…、…がいい。

…"天国"でなければ、"ベッド"がいい。




包丁フィンガーカット未遂騒動の後。

修羅場の恐怖と興奮冷めやらぬ中、「ドMの真骨頂~」とかバカ話してたけど。本当はふざけてる場合じゃなかった―つか、そんな余裕もなくていっぱいいっぱいだった―俺の英語での問いかけに。ちゃんと聞き取って理解した上で、あんなNOT(ノット)関数もどきをアレンジして、たどたどしく、でも、頑張って返してくるなんて。




"ドヤ顔の横文字で誘われてたって、とっさに返事出来るワケないじゃない。私、横文字苦手なんだから~"



なんて、泣きながら叫んでた吉乃さん。泣いた顔、可愛かったなあ。また泣いてくんねえかなあ。…理由つけて、泣かせようか。泣き出す一歩手前の目がウルウルして、そこに映ってる、オロオロの俺が絶妙に歪んでて、それでも俺を見つめ続けてる吉乃さん。ワンコやニャンコみたいで可愛いんだよなあ。楽しいなあ…。

↑(あくまでも、TheドS・圭樹春海独自の解釈。怒りによる睨み付けの表情までもを好意的にとらえてしまう、ポジティブかつ、偏った日常目線)

つか、横文字苦手のせいで、返事が関数か? って思ったけど。…いや、それだけじゃねえな。




"吉乃さんと俺の関係は? 関数で表す事、出来る?"




―って以前。小難しく訊ねた、俺からの問い掛けを覚えてて。ちゃんと答まで用意してくれてたんだ。

でなけりゃ、いくら冷静沈着な吉乃さんでも、あんなロマンティックな論理式、とっさに出ない。

律儀で粋で、…可愛い女だね、全く。

何となくだけど、英語も分り始めてきてるみたいだし。これって僕ちゃんの力かな?

ねえ、吉乃さん? 大好き、かつ(アンド)、愛してるよ、あんたと一緒なら天国―…、それか地獄でも楽しいだろうな、あれ? これオア関数もどきかな? …=IF(OR(IT=”大好き一緒”,IT=”愛してる一緒”),”天国地獄楽しい”,”天国地獄楽しくない”) んっ? メチャクチャか…、つか、ふざけてるけど、まあいっか、なんて思っちゃってるほど。
料理が出来なくたって、ノープロブレム。レトルト食品って親友がいるし。俺ら、安定のナイスカップルだから、って、やっぱり甘々になるほど。それとも。
欧米じゃ蛇は、人間を堕落させた生き物って事になってるみたいだから、天国よりは地獄の方が、俺らには合ってるのかな? とか納得しちゃうほど。

なんて、オールクレイジー…、全て狂って、イカれて、笑えちゃうほど。それを天国、と呼ばねえなんて。

あり得ないでしょ?―。




と。

圭樹春海は。実際ニコニコ笑って楽し気に。次の一戦を始めようと、裸の上半身に羽織っていただけのシャツを床に放り投げ。

ベッドを軋ませながら。最初は遠慮気味に、しかし、徐々に強い力で吉乃夏美を揺り起こす。

「吉乃さん…、じゃねーや、夏美?」

「…っ」

「起きて。もう一回、ヤろーよ? 
―起きて、…だから、起きろ、ってば。いつまで寝てんだよ~。本気で寝過ぎだって~。夏美ィ~!?」

圭樹春海の声が、だんだん焦って切迫する一方。吉乃夏美は、覚めかけた夢の中で。









to be continued