事由の愛・ラ ヴィ アン ローズ―薔薇色の人生―9 | 。゜・アボカド・。゜の小説&写真ブログ アボカリン☆ のお団子ケーキティータイム♪

。゜・アボカド・。゜の小説&写真ブログ アボカリン☆ のお団子ケーキティータイム♪

アボカド、お茶、藤井風ちゃん、書き物が好きです。お話(オリジナルの小説)、etc.書かせていただいています☆お団子やクッキー、ケーキ片手にお読みいただければ、幸いです。









「―…そんなんじゃない」

そうじゃないの、と綾がもう一度繰り返し。

「…さっきお風呂に入ってた時、ずっと考えてた。どうして私達が狙われたのか、分からない。
でも―」



一体、誰が何のために、―恋人の推測が正しいなら―エアガンなどを使って自分達を傷つけようとしたのか。



分からない―、全然分からない…。

でも―、一つだけハッキリ分かってる事は―。



「とりあえず、黎くんにケガなんかして欲しくない、って事だけで…。さっきも言ったけど、黎くんが傷つけられると、きっと、黎くんより私の方がダメージ強くて…、聞いたり見たりしてるだけなのに痛くて痛くて、それなら私が身代わりになる方が楽なぐらいで。たまらないだろうなあ、なんて―。
じゃあ、黎くんを守るために私が出来る事って何だろう、って―、そんな事ばっかり、ずっと考えてて。
私なんか大した事も出来ないのに、おこがましいけど…、でも、やっぱり黎くんを守りたいな、って…、黎くんのボディーガードになりたいな、って…。
黎くんは」



私にとって、すごく大切な人だから。誰からも傷つけられないように、静かに、ただ傍にいる事を許してもらって…、見守らせて欲しい―。私の願いはそれだけ―。



数秒間。

それまで鼻先で笑っていた藤木黎が、不意に真顔で黙り込み。そして。

「あっ、私なんかがえらそうな事言ってごめんなさい…。
黎くんは、武道―剣道とかも出来て強いのに。私が余計な気を使って前に出たら、かえって黎くんの足手まといになるだけ―」

と自嘲し始めた綾をフワリと抱き締め。目を閉じて、彼女の髪に顔を埋め。

どれぐらいの時間(とき)が経ったのか。

やがての事に、タメ息をつく。

「…何でなのかなあ」

「…黎くん?」

「いつもいつも驚かされてばっかでさ、マジ学習能力ないよね、って笑われても仕方ねんだけど…。
どーして本田綾さんは、俺の喜ぶツボをそんなに知り尽くしていらっしゃるんですか?
それが計算じゃなくて、天然だってんだから、もう、やってらんねー…」

…計算してるかもよ、と綾がわずかに遅れて小声で囁く。

「黎くんに好きになって欲しくて…、もっと、もっと、私だけを好きになって欲しいって、計算し尽くした行動かも」

いいねえ、それ、すげえいいかも
、大人の女っぽいじゃん、と黎がクスクス笑う。

「考えたらたまんね。俺に好きになって欲しくて、色々頑張ってる綾さん。ちょっぴり利己的で、一生懸命で―、素直。そー言う綾さん、すげえ好きかも」

「―さっき、おばちゃんと襖越しに何話してたの? おばちゃんがおやすみ、って言った後…」

「気になる?」

「ちょっぴり」

「綾さんは、誰に似てるんですか? って訊いてたんだよ」

「おばちゃん、何て?」

「とりあえず、私には似てない、って」

何それ、おばちゃん、答えになってないよ、と見つめ合って笑う中。二人は互いの背中に腕を回し。その―旅行に出て以来初めての甘い雰囲気の―まま、綾を布団に押し倒し、その首筋に唇を這わせ、浴衣の帯に手をつけかけた黎だったが。

ふと、何を考えついたのか、動作を止め。

自身の下で、目をぎゅっと固くつむったまま、浅い息をつく綾を見て。

やがてタメ息をつくと、彼女の鼻を軽くつまみ。黎くん、息が苦しいよ、とうっすらと目を開けて訴える綾に向かって、口角を上げ微笑みかける。

「油断しちゃダメだよ。ちゃんと目ェ開けて俺を見てないと、何されっか分かんねんだから。
―綾さん、俺、これから風呂に行ってくる。お楽しみは、最後に取っとくよ。
伯母さん家族は風邪引きもいるし、もう寝たかな…。
あっ、そうだ。綾さん、これ」

さっき作ったんだけと、麦茶オレ。つっても、綾さんの作ってくれる本格的なのと違って、自販機の麦茶をグラスに注いで、おかみさんからもらった蜂蜜や塩入れて混ぜただけのなんだけどね。

と、黎がグラスを差し出し。起き上がって自身の腕の中で顔を上げ見つめてくる綾を抱き寄せ、肩にもたれさせる。

「綾さんが風呂に入ってる間にしたかった用事って、この事だったんだ。
風呂上がりには、水分やミネラル補給しねえと。今日の長い長~い夜に備えてよ。
飲ませたげる、はい、飲んで」

「―…ねえ、黎くん。何だか、コーちゃん達にご飯あげてる時みたいな顔になってるよ。もしかして、私…」

しつけられてる? と問いかけた綾より先に、黎が答える。

「そお? あのコ達は俺の可愛い家族兼彼女だから。どしても優しい顔になんのかもね。
―そうだ、昔コーちゃんにしてあげてた時みたいに、ストローづたいに飲ませたげようか?」

「―い、いい。大丈夫。自分で飲めるから」

あっ、そ。つまんねーの、と言葉ほど不服気でもない黎を横目に。グラスに口をつけ飲み干しながら、綾は考える。



どうしよう、今夜これからの事―。他の事で頭いっぱいだし、ボンヤリしてたしで、何も考えてなかった…。あっ、そうだ。
…下着。
黎くんがお風呂に入ってる隙に、後から一番のお気に入りを出さなくちゃ。
とりあえず、今飲んでるのを飲み終わったら、旅行バッグの一番下に入れてる、それを引っ張り出して…。
黎くんがお風呂から出てくる前に、よっちゃんから教えてもらったお肌がスベスベするクリーム塗って、…着替えと、かない、と。あれ、何だか…、どしたんだ…ろ。

すごく―、眠い…。



数秒後。

「…黎くん?」

「―何?」

「たたいて―」

「はあ?」

「すごく眠たいの…、このままだと、黎くんがお風呂に入ってる間に寝ちゃいそうだから…、だから、たたいて…。 つねってくれてもいいし。思いっきり腕でもほっぺたでも、たたいて、つねって…」

「…」

「私は、黎くんのボディーガード…、黎くんがお風呂から上がるまで頑張って起きてる…、だから、私が、寝ちゃわないよう、…、たたいて…」

さらに数秒後。

綾は藤木黎の肩にもたれたまま、眠りに落ちた。

「寝ちゃった、ね。綾さん…」

綾を布団にソッと横たわらせ。毛布をかけながら。

藤木黎が、嬉しそうに、フッと笑う。

「たたいて、か…。勇ましいね。唐突なドM宣言、ビックリしたじゃん。
いつも予想外の行動で楽しませてくれてありがとう、綾さん。
でも、今回はボディーガード必要ねえから。綾さんが寝てる間に、用事片付けてくっからさ。よく休んでてよ。
でも、美味しかったでしょ? 俺特製のよく眠れる薬が調合された麦茶は」










to be continued