"目通りの儀"というのが

今も行われている本家の行事です。


仙壽家の先祖に

超能力者ばりに先行きを見透して

郷民に降り掛かる災いに備えさせて

郷の平穏を守った人物がいた。


その血統から

その後も優秀な人がポツンポツンと

出たことで


そういう才知を持って生まれ出てくる子は

仙壽家の血筋に

受け継がれ続けている。


決して途絶えない。


それが郷民の宿願になった。


と、美津子おばさんは

教えてくれました。


天皇家みたいに

男の子供が

無条件に後を継ぐというものじゃなくて


先読む力を持って生まれた子供に

後を継がせるシステム。


これまでの系譜では

一代おきに現れることが

多かったそうです。


なかなか"名継ぎ"が現れないと

郷の人たちは不安になる。

大昔は恐れ慄くほどに。

名継ぎは早くに見出した方がよい。

ということで


せんじゅ様は妻を複数娶ることを

郷民からすすめられた上、


生まれた子供も(なぜか男の子だけ)

自分でものをはっきり言えるようになる

3歳になると


その時のせんじゅ様が改めて面接をして

名継ぎかどうかを判定する習慣が

できたのです。


ところがそれでは

なかなかうまく見出せなかったのか

目通りはいつしか5歳になり、


そしてさらに

遠くに生まれることも多くなった今では

3歳以上ならいつでもよくなったんだとか。


それでもひいひいじいちゃんから

もう4世代目が生まれてるのに

次の名継ぎをじいちゃんは

まだ指名していません。


見落とされたんじゃないかって

いう人もいますが


現代ではそんな不思議な力を持つ子が

そうそう生まれるわけはない、

当代で一番秀でた男が

名を継げばよかろう、と

誰もおおやけには言わないけど

思ってるみたいです。


5歳やそこらで

能力を断定できるわけはなくて

今はただの儀式になってるというわけです。