10の祝いはまだひと月も先である
なれど妙に周りが騒がしい
まずは絵戸のおじいさまが早くも祝いと一頭の若駒をおよこしくだされた
艶々しい栗毛が美しく黒々と輝く瞳が可愛らしい子馬だ
屋敷飼いの馬には乗ったことがあるが自分の馬というのは初めてで叫ばんばかりに喜ばしくおじいさまに抱きついてお礼申し上げた
手練れの馬番に吾が自ら世話をし慣らし乗れるように育てる助けをせよと依頼をしてくださった
イオエもキフネ様はお忙しくなられるから私もお世話申し上げますと言ってくれた
厩舎いちの獣医師の役もこなすその馬番はイオエのことばに喜んでお前は覚えがいいそうじゃないか馬係に専門に就くなら仕込んでやろうと言って
するとイオエも喜んでキフネ様の助けになることは一通り身につける所存ですと答えていた
「イオエを下僕になさるの?」
突然うしろから声をかけてきたのは絵戸のおじいさまと共に来ていたらしい絵戸家のお嬢様のおひとり 従兄妹のスズシだった
馬に気を取られていらしていたことに気づかなかった吾はおいでになる時はよく一緒にいる姉様もいるのかと振り向き見たが 姉様のミヨウは来ていなくて安気となった
イオエは吾の友でそも吾に下僕はいらないと答えるとスズシは「よかった」と笑った
スズシは幼いころより吾やイオエらおのこの遊びに混ざりたがり取り澄ますミヨウとは違い 特に優しきイオエにいつも懐いていた
この時も同い年の妹とはいくらも話すことなく 馬のことを馬番にしきりに訊ねるイオエのそばに立ち共に聞いていた
吾はおじいさまと何度か出ていた勤めのことなど話していると
馬のことを聞きつけた異母弟たちがやってきた
馬番がそれそれと
馬はなれぬ場所で急に大勢に囲まれては気が高ぶってよくない 今日は放っておいてあげるがよろしいと子供らは追い払われて吾の馬は厩へと連れて行かれてしまった
おじいさまはせんじゅ様にお会いしてくると行ってしまい子供らだけがそこに残された