イトナ様はこの家を出るのだと直感した


今代の名継ぎは僕だから

僕が嫁御を4人迎える時には

四方の離れは空いていなくてはならない


もちろん僕はほんの10歳なんだから

今すぐあけ渡す必要などないのだけど


名継ぎでない千壽家の男子は


母親の実家や再婚先についてゆくか

裕福な親族の家の養子にもらわれることが多い


もらわれると言っても

迎え入れる家からすれば

郷随一の血筋で 資質に恵まれていることが

大いに期待されるせんじゅの子孫を養子にできることは大変な名誉と受け取られ大事にされる慣い


決して養子に入った先で爪弾きに遭うなど聞いたことがない


だからといって

たった7つの子供が父親から、そして母親からも

離されて縁戚の家へ貰われて行くというのは

なんの抵抗も感じずに受け入れられることではないだろうと

僕には想像ができた


僕自身には確かに起こり得ない。


名継の僕は父センジュさまと

名継の生母である母に守られて

この千壽家に生涯を埋めることが決まっている


僕の父はキクチにとっても同じく父なのに

おそらく彼にとっては

全く違った存在なのだ


全ては僕が名継となったために

彼らの家族としてのありようを

歪めねばならなくなった結果なのだ


父センジュが我が母ミアレよりも

イトナ様に夫婦としての情愛を深くお持ちなことをいつからか知った僕にとっては


僕の存在が間違った位置に居座っていることは

僕本人には如何ともし難いわけだが


タケリとキクチに辛い影響が現れないよう

これからは特に気をつけなくてはならない


実際いま、しゃくりあげて泣いているキクチを

ただ宥めるのではなく、救い上げる方法を示さなくてはならないのだ